常に他人の視線を避ける男チョイン(カン・ドンウォン)は、願えばいつでも目で人々を意のままに操ることができる超能力者だ。しかし、彼はその力で世界を救おうとも、支配しようともしない。決して力に気付かれぬよう孤独で静かな生活を送ってきた。ある日、操ることのできない男イム・ギュナム(コ・ス)の出現ですべてが崩れ始める・・・。
カン・ドンウォン、久しぶりです。私は彼の作品「オオカミの誘惑」で、(確か義理だったとは思うけど、好きになってしまった姉に)「姉さんは、どうして姉さんなんだ・・・」と涙を流しながらつぶやく姿に、一発ノックアウトされたのでした。もちろん、このセリフは姉さんにはきちんと聞こえてなかったと思いますけど。
さて、この作品です。冒頭は子供の頃のカン。特殊な能力を持ってしまったゆえ目隠しをされて、母と一緒に逃げる、逃げる。しかし、父親に追いつかれ罵られます。そして母に暴力を振るい始めた父に対し、目隠しを取ってしまうのです。
もちろん、その場は救われます。しかし、先を儚んだ母親に心中されそうになったところを逃げ出します。「親さえ、俺を殺そうとした・・・」というナレーションとともに。
そして大人になったカン。時々その能力で必要なお金を奪ったりしますが(こら!)、基本的には目立たぬよう、静かに暮らしています。心に傷を負いながら。
そして、いつものように高利貸し店に押し入ったところ、ただ一人、超能力が通じない男がいたのです。カンは取り乱します。
コ・スになぜ通じないのかは、一切説明されません。彼にも同じ能力があるのかな、とも思ったのですが、そうでもなさそうです。しかし、そういえば最初に、交通事故で瀕死の重傷を負ったにもかかわらず、驚異的な回復力だった、というシーンが入ります。
そして、心優しい社長を殺されたり、豹変した友人に襲われたりしたコは、カンが許せなくて、追うようになります。
ここからが長い。「チェイサー」のようです。いったい、落ちどころはどこなんだろうと心配するほど、進歩しない状況が続きます。こういう展開は韓国映画の特徴なのかな。
ともかく、この辺はもうちょっとシャープにできるだろうと思いました。
ただ、今回のカン・ドンウォンは悪役っぽいですが、普通に生きることができなかった心の痛みも伝わってきました。大きくなってから、年老いた母親を訪ねるシーンは(このシーンは幻想かも)胸打たれました。息子もつらかっただろうけれど、ただ何も言えず涙する母親に、涙をこらえることができませんでした。
でも、まだまだふたりのチェイスは続きます。
最後は・・・これはハッピーエンドなのかな。これでよかったのかな。そうかもしれない、違うかもしれない。
こんなこと、現実にはないだろうと思うけど、こんな能力いらないな。