即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

スポーツと将棋

2008年02月17日 12時13分51秒 | 将棋
歩を「と金」に変える人材活用術―盤上の組織論
羽生 善治,二宮 清純
日本経済新聞出版社

このアイテムの詳細を見る


ついにこの本に関する第7弾です。

もういい?

まあ、そんなこと言わんと、聞いておくれやす。(笑)

この本を読んで、羽生の見識のすごさ、素晴らしさをずっと書いていたのですが、最近、梅田望夫さんがMy Life Between Silicon Valley and Japanで、将棋関連記事を連発していて、その中の現代将棋が表現する思想も必見ですし、遠山四段記事片上五段記事でも触れられています。

さて、渡辺竜王が、頭脳勝負―将棋の世界で、「将棋をスポーツと同じように楽しんでほしい」、と言っているわけですが、この本の醍醐味はやはりこのあたりです。

二宮さんと羽生二冠が、いろんなスポーツの特性や戦略と、将棋、というものを比較してこんな例を出して語っています。

サッカーと将棋はよく似ている。
サイド攻撃は端攻め。
金銀の守りはスリーバック。
飛車角はツートップ。
駒をどう配置するか、どう連動させて動かすかの戦略、フォーメーション。
ラインの押し上げ。スペースで守って、スペースで攻める。
引いてゴール前を固める穴熊。
横歩取りのように、全体に前に出て、ラインを上げる。
将棋もサッカーも現代はスピードと精度の勝負。ちょっとしたミスがそのまま勝敗に直結してしまう。

将棋は400年ルールは変わってないけど、競技の質が変化している。
ゴールまでの距離が短くなっている。
水泳のバサロスタートのようにスタートからかなりの地点までは潜水のまま進み、水面に出ると同時に激しく競り合ってあっという間に勝負が決まる展開。
水面に出たときにいかに主導権を取るか。

昔の将棋はボクシングに例えると、3ラウンドまでは様子見。今は1ラウンドから壮絶な打ち合い。
前半から勝負をつけに行くので、手数が少なくても精神的にきつい勝負。

昔のマラソンは、42.195km、皆一緒にどろどろになって走っていた。
勝負が決まるのは、本当のラストだった。
それが今は早い段階からスパートをかけ、勝負をつけに行く。
レースを作り、仕掛けていく。
将棋もまるで同じ。

詰め、寄せが難しいのは、ゴルフのパットに似ている。
簡単に入りそうなのが入らないとか、遠くからでも入っちゃうこともある。初心者は、スリーパット、フォーパットが当たり前でなかなか入らない。

飛び道具でなく、金銀で地道にやっていくのが好き。
ラグビーで言えば、スクラムで地道に1mずつでも前進していく。味方にちゃんとパスを回すことを重視して、あまりボールは蹴らないで。

こういう会話は、二人でほぼ同じくらいの意見が積み重なって成立している。
将棋のことは羽生が答え、スポーツのことは二宮さんが言っている、というわけではない。

バサロスタートみたい、というのは羽生の言葉。
二宮さんは
「バサロという表現は面白いなあ。序盤からある程度の距離までは波風立てないでスーッといってしまう感じですかね?」
と、羽生の例えに感心している。

高速道路と渋滞、というのもそうだけど、
将棋のことをいつも考えていると、
こういう例え、とか、こういう深くて重い言葉が出てくるものか、と感心する。

この本を読んで思ったこと。

渡辺竜王が言った、
「将棋をスポーツと同じように楽しんでほしい」という名言。
この言葉には多くの共感、賛同が集まっています。

将棋って、どうも小難しい、暗い、のようなイメージがまだまだあり、普及の妨げになっている。
そこから脱するためにも、また新しい時代の将棋のイメージを作るためにも、
この本に出てきたような各種スポーツの比喩を使って、将棋の戦術や楽しさ、奥深さを伝えたら、僕らにとってはよりわかりやすいと思う。

ほんと、そんな気軽な感じで、将棋が広まっていったら・・・。

将棋はともかく、スポーツが好きな人って、かなりたくさんいるはずだから、
そういう人たちに少しでも将棋の魅力を伝え、将棋に興味を持ってもらったらいいのに。

そこで提案。
解説とか、観戦記に、スポーツの例えを入れていただくと、もっと臨場感が増すし、わかりやすくなってくる気がします。(今まででもあったかとは思いますが)

棋士でも、記者やライターでも、スポーツ好きな方、いっぱいいらっしゃいますよね?

例えばですが・・・、

2、3筋で攻撃を仕掛けていて、ここを制圧するのが肝心と思っていたら、
急にサイドチェンジして、9筋からの突破を目指す構想。
4六の角(遠藤)が、右サイドでオーバーラップする内田に合わせるのではないかと思ったら、駒野が左サイドで敵の裏を狙っていた。

ここはいったん手を戻して、ボランチへのバックパスから、再度組み立て直す必要が。中盤でワンタッチで細かいパスをつなぎ、1対1の戦いから、よりパスを出しやすくしていき、局面を打開していく。

ある局面での対局者の心理。
ここはもう終盤だし、1点もやれない場面。
ランナーは溜まっている中で、どういう球を投げるのか?
強気で自信のストレートで押すのか、ここはまだ出したことの無い、秘密のナックルで行くのか。

二宮さんとか、古田、井川、内藤などに、観戦記を頼んだり、聞き手をつとめてもらったりという手もある。

逆に、子供サッカー教室で、サッカーと将棋ってこんな風に似ているよ、って話をしつつ、(ついでに)将棋も教えてしまう、とか。

将棋と言うものを、狭い業界の中で考えず、他の(メジャーな)世界の人や考え方とリンクさせていく。
そこで新しい発見があったり、スパークしたり、コラボできたりもする。

それを各種スポーツだけでなく、例えば、船戸女流二段がソムリエであれば、ワインと将棋について考え、ワインの好きな(特に)女性たちに将棋に対する興味を持ってもらえるような仕掛けをしていく。

こんなことを考えつつ、NHK杯を見たり、今夜のサッカーを見たりすると、より楽しいことがありそうな気がしてきます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする