村松友視「力道山がいた」(朝日文庫)、夏目漱石「吾輩は猫である」上・下(集英社文庫)、渡辺淳一「孤舟」、同「鈍感力」を買った。渡辺諄一は好みではない。執筆当時の年齢が現在の私の年齢に近いからつい買ってしまった。新本同様のハードカバーで各84円だ。
「吾輩は猫である」の書き出し部を数10ページ読んだ。軽妙な語り口と間の置き方に感心した。身長があと10センチあったら、かなりの確率でわたしはプロレスラーになっていたことだろう。「力道山がいた」は力道山というスーパーヒーローの登場がもたらした熱狂を、時代背景を探りながら描いている。
フタバ図書の古書部で面白い光景を目にした。ひとりの女性が携帯を片手に105円の特価本を漁っている。フタバの買い物かごを70から80冊の特価本でいっぱいにして、なお本を一冊づつ点検している。本の扱い方からみて趣味が読書とは思えない。彼女が移動したあとで、新書の特価本コーナーを覗いた。売れそうな本ばかりが見事に抜かれている。携帯を片手にというのはブックオフでも数度目撃した光景だ。あの時は男性だった。本を値踏みするような眼は昨日の女性に似ている。ふたりの職業をしばし想像してみた。