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旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

大系

2008年03月07日 22時53分17秒 | Weblog

入荷した古書の目録をメールで送ってくれる古本屋がある。歴史・思想関係の専門店らしい。入荷したての古書200点余りの保存の程度と内容にコメントを加えたメールが先日届いた。岩波の「日本思想大系」全67巻が43000円也、白水社の「ショーペンハウアー全集」15巻の新装復刊が52500円也、「新岩波講座哲学」全16冊が9000円である。

定評があるこの種の全集の暴落に心が痛む。新本ならば再販価格が定価であるが、古書の場合はあくまで定価は市場価格である。値段は需給の関係で決まる。一般に古書というものは年を追ってその希少性が増してくるものだ。それでも値が下がるということは著しく需要が落ちていることの証なのであろう。

それにしても、日本思想大系はその一冊一冊がケース入りの風格がある装丁であり、その内容と同様の重量感がある書籍である。その大系が古書とはいえ、月刊文芸春秋並の一冊600円余りで買えるとは泣けてくる。断じて嬉し涙ではない。

「道元」上下「親鸞」「法然一遍」「中世神道論」「世阿弥 禅竹」「近世神道論 前期国学」「本居宣長」「国学運動の思想」「水戸学」「伊藤仁斎 伊藤東崖」「吉田松陰」「民衆運動の思想」ほかに厳選した十数冊を蔵書している。

「読んだか?」と問われると返答に躊躇せざるを得ない。殆どの大系は巻頭から巻末まで読み切れていない。しかし、日本仏教に失望したときには必ずといってよいほど上記の鎌倉仏教に関わる三冊が手元にあった。

また、茶番化されがちな武士道について真摯に考える時には水戸学や伊藤親子の著作に当たった。世阿弥の能論はビジネスマンとしてのわたしに、競争社会で生きてゆくための指針を提供してくれた。ナショナリズムについて考える機会を提供してくれたのは宣長、松陰である。

大系を紐解く際には、長い解説をまず読んで本文に当たることにしている。本文が原文に補注という難解さである。とはいっても、こちらには中央公論「日本の名著」の口語訳がある。鬼ならぬ、初心者に金棒である。一歩間違うと金棒に潰されてしまいそうなお粗末ぶりである。