とうとう予約してしまった。
林田明大の「新説伝習録入門」でお茶を濁そうとしたのが拙かった。何に頼ったものかは知らないが、その「伝習録」の口語訳が意外に解りやすい。そこで、つい買ってしまったところまではよかったのであるが、じっくり読んでみようとしたら、どうしようもなく解説が悪い。サラリーマンに受けそうな処世訓で満ちているのである。これじゃ著者は、まるで陽明の権威を借りた悪しき意味での評論家みたいなものだ。無理がある。
「論語」の中で、孔子が禄についてふれた2節について知っていれば、林田のような浅い解釈は成り立ちにくい。
「子曰く、多くを聞きて疑わしきを欠き、慎みてその余りを言えば、即ち咎め少なし。多く見て危うきを欠き、慎みてその余りを行えば、即ち悔い少なし。言に咎め少なく、行に悔い少なければ、録その内にあり。」為政第二の18
「子曰く、君子は道を謀りて食を謀らず。耕すや飢えその中にあり。学ぶや禄その中にあり。君子は道を憂いて貧を憂へず。」衛霊公第十五の31
残念なことに、孔子さまはビジネスに興味がない。従って、「王陽明然り」なのである。