はじまりとおわりを区切られた
ひとりの生の時間の向こう側へ
心を走らせるものがいる
明治41年、姉と弟──
西暦1908年、一枚のスナップショット
はてしない時間の海に浮かぶ
たしかに生きられていたなごり
心は時間をカウントし、世界をマップする
マップした上におのれをマップする
消えていく時間 重なり 溶けあう時間
かつて いま これから
そして最後に訪れるものへのおそれ
心は記述することばを探している
これが世界 これがほんとう この意味
そうして差し出せるものを探している
だれかに、そしてみずからに
わからない
言葉に手をかけ つづり 言葉を運び
そうするように促され、告げたい心がいる
なつかしさ おそろしさ せつなさ もの狂おしさ
どれもこれもほんとうは触れることができない
手に負えない、名づけようのないものに
しかたなく情動が告げる
なんてかなしいのだろう
そうして気づく
どこかに応答の声を聴きたい心がいる
マップする心に修正を求めるように
「いまここ」の意味が少しだけ変化する