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最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

第58号の特集記事は、人工乳房(インプラント)による「乳房再建」に高まる患者の期待

2016年05月24日 11時27分59秒 | メディカルはこだて
第58号の特集は「人工乳房(インプラント)による「乳房再建」に高まる患者の期待 根治性と整容性の乳房治療で乳腺外科医と形成外科医が連携」。

乳がんの治療法は、手術や放射線治療、薬物療法(化学療法やホルモン療法)を組み合わせて行うが、最も基本となるのが手術である。手術は乳房をすべて切除する全摘手術(乳房切除術)と乳房を残す乳房温存手術がある。乳房切除の場合、自己組織を用いた乳房再建は保険診療で認められていたが、身体への負担が大きいため、ためらう患者は少なくなかった。保険適用前にもインプラントを用いた再建手術は首都圏などの一部の医療機関が行っていたが、患者は自費診療だった。こうした状況の中、2013年7月にインプラントによる乳房再建が保険適用となった。乳房再建は乳房切除で失った乳房の形を、手術でもう一度取り戻す治療(手術)だ。全国の医療機関の中には根治性と整容性の両方の達成を目指し、乳腺外科と形成外科の連携を進めているところがある。道南地区でも北美原クリニック乳腺外科の早川善郎医師と函館五稜郭病院形成外科医長の石崎力久医師の2人の医師は、2年前から乳房再建の連携を行っていることで、早期乳がん手術後の乳房再建を希望する患者からの期待が高まっている。


◎皮膚と乳輪・乳頭を残す乳輪乳頭温存乳腺全摘術を実施

早期乳がんの手術では、がん切除による根治率の向上が重視されるが、「患者が術後の乳房の整容性(姿や形を整えること)を要望する声もあることから、切除の範囲を出来る限り小さくする乳房温存術が現在の主流になっています」と北美原クリニック乳腺外科の早川善郎医師は指摘する。「以前は乳房温存率の高い医療機関が評価されるような傾向にありましたが、無理な温存手術による整容性や根治性の低下が問題になっています。人工乳房(インプラント)を使った再建手術が保険適用になって以降、無理な温存よりも全摘を選択する人が増えていますが、それは全摘後でも乳房再建のハードルが下がったことで安全性も同時に担保できることが大きな要因です。乳がんの治療法は、患者さんの価値観や要望が大きく関係しています」。


早川善郎医師(北美原クリニック乳腺外科)


◎乳房再建はシリコン製人工乳房のインプラントを用いて実施

乳房再建の方法は手術を行うタイミングや術式によって大きく分けられる。函館五稜郭病院形成外科医長の石崎力久医師は「タイミングには乳がんの手術と同時に行う方法と乳がんの手術後に一定の期間をおいて行う方法があります。術式では、患者さん自身の腹部や背中の組織を用いた自家組織による乳房再建、それとティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)とブレスト・インプラント(シリコン製人工乳房)を使うインプラントによる乳房再建があります」と話す。早川医師と石崎医師が協力して取り組んでいるのは、乳がんの手術後に一定の期間をおいて行うインプラントによる乳房再建だ。
「乳がんの手術後に一定の期間をおいて再建術を行う方法を二次再建と呼んでいますが、同時に行う方法に比べて、乳房を失ったことに関する喪失感はありますが、乳がん治療に専念できることや乳房の形などについて、患者さんの希望などを時間をかけて検討できる利点があります。また、自家組織による乳房再建との比較では、手術時間や入院期間が短く、手術による体への負担も小さいことが特徴です」。「乳房再建は乳腺外科医が乳がんの手術を行った後で、形成外科医によって行われます。再建の方法は患者さんそれぞれで違ってきますので、乳がんの手術の前に担当する乳腺外科医と形成外科医の両方によく相談をして、乳がん治療と乳房再建の方針を決めることが必要です。乳房再建によって明るく積極的な人生を過ごす時が訪れているのです」。


石崎 力久医師(函館五稜郭病院形成外科医長)

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