第68号では、水深1万メートルの深海でも電子回路を安定動作させる耐圧防水に優れた樹脂(ジェラフィン)を取り上げた。
ソフトウエア設計・開発のエスイーシー(本社・函館市末広町、永井英夫社長)は、地元企業・団体向けのSIサービスや携帯電話交換機など情報通信系インフラの受託設計を行う道内大手のIT企業として成長を続けてきた。
新分野への事業展開に力を入れている同社は、2008年10月に自主研究開発チームである「水産海洋プロジェクト」を発足させ、海洋データ通信や海洋IoT(モノのインターネット)機器の開発を行っている。開発製品の中で最も注目を集めているのが、水深1万メートルの深海でも電子回路を安定動作させる耐圧防水に優れた合成樹脂「ジェラフィン」だ。
開発者で研究員の鉄村光太郎さんに話を聞いた。
愛知県出身の鉄村さんは北海道大学水産学部で漁業機械学を専攻。芝浦工業大学で電子工学を学んだ毛内也之さんと共に樹脂の研究・開発に携わってきた。
同プロジェクトでは海洋ブイやリアルタイム式水温計などを開発してきたが、ジェラフィン開発に至った経緯は「水温計などを海中で保護する防水素材を独自で作ろうとしたことがきっかけでした」と鉄村さんは語る。
精密機械を海で使うことは難しい。「海中では、水圧や波浪・衝撃、外力による電子部品の動作不良。信号・光・電波の導通における水圧影響など様々な阻害要因があります」。
従来の耐圧防水技術は億単位のコストをかけた耐圧容器に入れるのが一般的だった。「過重な装置大型化と高コスト化を回避する方法は無いかと考えたのが出発点です。既存のケース剛性で水圧を排除する方式ではなく、圧力バランスによる破壊を防止する油浸技術が該当するのではないかと判断しました」。保護剤としては液体オイルが適しているが、高コストな油密機構が必要だ。「世の中にある様々なシール剤、防止素材を調査して、液体オイルの替わりにゲル素材を候補にしました」。
昨年6月には特許を取得し、翌7月から販売を始めた。ジェラフィンの主な用途は海洋分野では、海中ロボットの防水や衝撃保護。海中カメラや海中LED照明、海底地震計、海洋観測センサーの防水処理。社会インフラ系分野では下水処理施設など腐食ガス環境での電子部品や金属部品保護、屋外LED照明の防水・防湿・防塵対策、特に硫化物イオン対策があげられる。
この他にも航空機LED翼灯や大型ドローンの防水対策などの航空・宇宙分野。そして、医療分野では再生医療素材や医療計測装置の防水・防湿・防塵処理に高い効果が期待される。
実際、医療分野に関しては関連企業などからの問い合わせもある。
11月28日から3日間東京ビッグサイトで開催された航空宇宙関連最新技術と製品を展示する「国際航空宇宙展2018東京」では、東北・北海道経済産業局の合同ブースに出展し大きな注目を集めた。
「今後は素材によるビジネスから応用製品へと需要はさらに広がっていくはず」と、鉄村さんは新素材の発展に手応えを感じている。
エスイーシー水産海洋プロジェクト研究員の鉄村光太郎さん。
電子基板を包んだ「ジェラフィン」。
この状態で1万mの深海でも水圧から防護することができる。
ソフトウエア設計・開発のエスイーシー(本社・函館市末広町、永井英夫社長)は、地元企業・団体向けのSIサービスや携帯電話交換機など情報通信系インフラの受託設計を行う道内大手のIT企業として成長を続けてきた。
新分野への事業展開に力を入れている同社は、2008年10月に自主研究開発チームである「水産海洋プロジェクト」を発足させ、海洋データ通信や海洋IoT(モノのインターネット)機器の開発を行っている。開発製品の中で最も注目を集めているのが、水深1万メートルの深海でも電子回路を安定動作させる耐圧防水に優れた合成樹脂「ジェラフィン」だ。
開発者で研究員の鉄村光太郎さんに話を聞いた。
愛知県出身の鉄村さんは北海道大学水産学部で漁業機械学を専攻。芝浦工業大学で電子工学を学んだ毛内也之さんと共に樹脂の研究・開発に携わってきた。
同プロジェクトでは海洋ブイやリアルタイム式水温計などを開発してきたが、ジェラフィン開発に至った経緯は「水温計などを海中で保護する防水素材を独自で作ろうとしたことがきっかけでした」と鉄村さんは語る。
精密機械を海で使うことは難しい。「海中では、水圧や波浪・衝撃、外力による電子部品の動作不良。信号・光・電波の導通における水圧影響など様々な阻害要因があります」。
従来の耐圧防水技術は億単位のコストをかけた耐圧容器に入れるのが一般的だった。「過重な装置大型化と高コスト化を回避する方法は無いかと考えたのが出発点です。既存のケース剛性で水圧を排除する方式ではなく、圧力バランスによる破壊を防止する油浸技術が該当するのではないかと判断しました」。保護剤としては液体オイルが適しているが、高コストな油密機構が必要だ。「世の中にある様々なシール剤、防止素材を調査して、液体オイルの替わりにゲル素材を候補にしました」。
昨年6月には特許を取得し、翌7月から販売を始めた。ジェラフィンの主な用途は海洋分野では、海中ロボットの防水や衝撃保護。海中カメラや海中LED照明、海底地震計、海洋観測センサーの防水処理。社会インフラ系分野では下水処理施設など腐食ガス環境での電子部品や金属部品保護、屋外LED照明の防水・防湿・防塵対策、特に硫化物イオン対策があげられる。
この他にも航空機LED翼灯や大型ドローンの防水対策などの航空・宇宙分野。そして、医療分野では再生医療素材や医療計測装置の防水・防湿・防塵処理に高い効果が期待される。
実際、医療分野に関しては関連企業などからの問い合わせもある。
11月28日から3日間東京ビッグサイトで開催された航空宇宙関連最新技術と製品を展示する「国際航空宇宙展2018東京」では、東北・北海道経済産業局の合同ブースに出展し大きな注目を集めた。
「今後は素材によるビジネスから応用製品へと需要はさらに広がっていくはず」と、鉄村さんは新素材の発展に手応えを感じている。
エスイーシー水産海洋プロジェクト研究員の鉄村光太郎さん。
電子基板を包んだ「ジェラフィン」。
この状態で1万mの深海でも水圧から防護することができる。