野鳥・旅行・観光・テニスなど趣味の写真ブログ
ROSSさんの大阪ハクナマタタ



先日立ち寄った岡山後楽園の紅葉と、小説1Q84の中で村上春樹さんが駆使した人物描写の手法をちょっと紹介しましょう。

そこには、村上春樹氏特有のきめ細やかな描写が延々と続き、そこまで書くかと感心させられます。

宗教団体「さきがけ」から女主人公「青豆」の行方を探すように指示された牛河弁護士が青豆の小学校時代の恩師と面会する場面の一部です。<・・・・>がその引用

<大田という女性教師とは放課後の教室で話をした。おそらく五十代半ばだろう。その見かけは、市川の洗練された副校長とはみごとなまでに対照的だった>

<短身でずんぐりとして、後ろから見ると甲殻類のような不思議な歩き方をした。金属縁の小さな眼鏡をかけていたが眉と眉の間が広く平らで、細かい産毛がそこに生えているのが見えた>・・歩き方が甲殻類という表現がまったく独創的ではありませんか。

<いつ作られたのかは見当もつかないが、いずれにせよそれが作られたときから既に流行遅れだったのではないかとおぼしきウールのスーツには、防虫剤の匂いが微かに漂っていた>・・防虫剤の匂いと書くだけでリアリティがぐっと高くなりまりますね。

<色はピンクだが、どこかで間違った色を混ぜ込まれたような、不思議なピンクだった。恐らくは品の良い落ち着いた色調が求められるのだろうが、意図が果たせぬまま、そのピンクは気後れと韜晦とあきらめの中に重く沈み込んでいた>・・・最後のセンテンスが実に小説的な表現となっていますね。

<おかげで,襟元からのぞいている真新しい白いブラウスは、まるで通夜に紛れ込んだ不謹慎な客のように見えた。白いものの混じった乾いた髪は、いかにも間に合わせと言う感じでプラスチックのピンでとめられていた>・・・不謹慎な通夜の客を比喩に使う、村上さんならではの発想でしょう。

<手足は肉付きがよく、短い指には指輪はひとつもはめられていない。首筋には三本の細い皺が、人生の刻み目のようにくっきりとついている。あるいは三つの願いが叶えられたしるしかもしれない。しかし、たぶんそうではないだろうと牛河は推測した>・・・首筋の皺だけでここまで話を膨らませるとは・・。

 参考文献:1Q84 村上春樹著



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )