読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

風は山河よりー菅沼三代- 宮城谷昌光 小説新潮3月号

2007-02-24 15:45:35 | 読んだ
3月号で最終回、全部で59回の連載であった、5年間である。
そんな長い連載だったのかと、改めて思うのである。

舞台は著者の故郷、奥三河である。
奥三河の豪族「菅沼氏」が三代に渡って戦国時代の混乱期をどう過ごしたのか。
徳川期には大名となれたのは何故なのか。
そんなことが主題である。

そして私は、徳川の家臣団がどのように形成されたのか、そして徳川の家臣団の中でもわりと有名なのによく知られていない人たちを知りたい、ということがあったわけで、読み続けてきたのである。

「決して一代の天才が
 時代を変えるわけではない―
 安寧の世を信じ、戦国の闇に散っていった
 男たちを描く」

という惹句が単行本の広告欄に載っていたが、まさにそのとおり。

奥三河の豪族菅沼氏が、今川家、徳川家、そして武田家によって翻弄されていく中で、生き残れたのは権謀術数ではなく「清々しさ」と「一途さ」であった。
この世の「得」を求めるのではなく、終生変わらぬそして次代にも続く「徳」を第一としたことが、菅沼氏が戦国を生き残れた要因である。

このような豪族たちは日本全国に数多くいたのであろうが、結局は徳川期になって淘汰された。
そして生き残ったのは徳川になんらかの力を添えた人々であった。

わが地方などは、古来より滅ぼされ続けてきた。
何故滅びてきたのか?
そんなことを考えていると、今まさに、市町村合併という生き残りの中で、またもや沈んでいくのではないか、なんて考えたりもしたのである。

ということであれば、将来を見据えた「徳」を備え、覚悟と諦念を心に「しゃん」としなければならない、なんて思い、それはなんだかとっても難しいなあ、と少し暗くなったりしたのである。

連載が終了し、単行本が3月に完了とのこと。
文庫化されたとき、あらためて読みかえしてみようと思うのである。
そのとき、私の心はどう変わっているのか、それも楽しみなのである。

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