読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ひとり日和 青山七恵 <第136回芥川賞受賞作> 文芸春秋3月特別号

2007-02-12 16:43:34 | 読んだ
週刊朝日の書評欄で斉藤美奈子が、石原慎太郎と村上龍にほめられてもなあ、見たいな事を書いていたので、読むのに積極的でなかったというか<わけの分からない><読みづらい>小説なんだろうなあ、という先入観があった。

わけが分からない、ということは置いておいて、読みづらい、ことはなかった。
なかなか面白いといえば面白い小説であった・・・ただ感想としては「ふーん」とか「そういうものなのかあ」というのが先にたってしまうけど・・・

物語は主人公の私・三田知寿が、母と別れて東京の遠縁のおばあさん・萩野吟子の家に居候していた1年間の出来事を、淡々と綴る、というものである。
勿論、芥川賞候補になるくらいであるので彼女の心境、それも重い心境なども描かれている。

選評から印象的部分を書き出してみる。

石原慎太郎
・都会で過ごす若い女性の一種の虚無感に裏打ちされたソリテュードを決して深刻ではなしに、あくまで都会的な軽味で描いている。
・優れて絵画的な描写

村上龍
・主人公に感情移入してしまったのだ。
・作者の観察力というか視線の正確さに心地よい驚きを覚えるようになった。

池澤夏樹
・とても上手に書けた小説である。読者はこの主人公にやすやすと感情移入できるだろうし、彼女に寄り添って季節の一巡を歩めるだろう。
・しかし何かが足りない。
・無謀な意図がない。

高樹のぶこ
・若い女性のもったりとした孤独感が描かれていて、切ない。
・要点が押さえられているのに作意は隠されている。

黒井千次 ()内は嘉壽家堂補足
・むしろそれ(本当の生活)への予感が作品を強く支えているいる。予感の陰影が鮮やかに浮かび上がるところに力が感じられる。

山田詠美
・日常に疲れた殿方にお勧め。私には、いささか退屈。

宮本輝
・抑えた感情が終始一貫していて、それがこの小説に静かな哀しみの調べを奏でさせている。
・小説が長すぎるのが欠点だが、読み終えると、それさえも、青春のけだるい生命力を表現するリズムと化していた。

河野多恵子
・この作者は見るべきところをしっかりと見ている。無駄がない。

とまあ、概ね好意的である。
私も、好意的である。たぶん「日常に疲れた殿方」だからではないかと思うのだが・・・

私が掲げた選評は概ね私もそうだと思う。
ここにかかれていないことで私が感じたことといえば・・・

20歳の主人公があるときは大人であったりあるときはマダ子どものようであったりして、大人と子どもの境をうろうろしているさま、が描かれているようだ。(黒井千次の予感の陰影というのはそのことをいうのかとも思う)

小説には、主人公とその母と吟子さんという三世代の女性が登場するが、この女性たちの考え方や生き方というのは、もう特殊ではなくて普通なのかなあ、と思わされた。つまり「恋」というものは若い頃だけのものといった今までの考え方はもう古いということをあらためて知らされたような気がするのである。

ただし、この小説を読んで何かを深く感がさせられるということはなく、冒頭にのべたように「ふーん」という思いのほうが強いのである。
まあ、読んでガッカリするということことはないので、迷っている方には背中を押したい。

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