読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ローマ人の物語25・26<賢帝の世紀 中・下> 塩野七生 新潮文庫

2007-02-20 23:21:43 | 読んだ
賢帝の世紀と題されたこの時代の皇帝は、トライアヌス-ハドリアヌス-アントニヌス、の3人である。

中巻と下巻のほとんどは「ハドリアヌス」についてである。
この3人は生まれながらの「皇帝」ではない。

そして
「ローマでは、公式の主権者は市民であって皇帝ではない。皇帝は、市民から権力を委託された身分にすぎない」
とされているので、皇帝になっても大きな努力が必要である。
その努力が大きかったのがこの3人なのであろう。

努力する皇帝、というのは驚きである。
これが民主主義なのか、と思う。

ローマの民主主義が至上のもの、とはいわないがある種の理想ではないかとさえ、今の日本を見ていると思わざるを得ないのである。

「ローマ市民」というのが選ばれた人たちであって「市民権」を持たない人たちもいたのである。そのローマ市民の中に元老院議員がいて、元老院が皇帝を認定する、というような形である。

市民は市民の権利と義務を果たす。
ということがローマの根本である。これが皇帝にも当てはまるのである。

著者は言う
「しつこく思われようとも、私は何度でもくり返す。人間にとっての最重要事は安全と食の保証だが、「食」の保証は「安全」が保証されてこそ実現するものであるということを。ゆえに「平和(パクス)」が最上の価値であることを」

いかに国民の安全を守るかが、皇帝に課されたものである。
そのウラには国民(ローマ市民)が自らの権利と義務を果たすことがなければならない。

主権者である市民も、市民から権力を委託された皇帝も同じ責任あるということではないだろうか。

今の日本、自分の周りを見回しても、このような考えがないことにがっかりしてしまうのである。
ローマ人の物語を読むと、いつも唸ってしまうのである。

次は27・28巻「すべての道はローマに通ず」である。

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