尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

より良い教員研修をデザインする①ー「ポイント制」

2021年06月01日 23時02分17秒 |  〃 (教師論)
 「教員免許更新制」は廃止すべきだと書いた。ではそれに代わる、教員の研修はどのようなものが良いのか。長い教員生活の中で、「キャリアデザイン」をどう考えるか、教員自身にとっても、社会にとっても考えるべき問題だ。まあ僕にはもう関係ないし、何の影響力もないから「余計なお節介」に過ぎない。しかし、アイディアだけはあるので、一応書いてみたい。

 世の中は大きく変わって行く。いつの時代もそうである。もちろん教育のあり方も、子どもたちの世界もどんどん変わって行く。自動車も変われば、銀行も変わる。新聞も変わるし、音楽も変わる。当然教師も新しい世界に適応すべく学び続けなければならない。教師だけでなく、現代ではすべての人に「生涯教育」が求められている。

 教師は「教育公務員特例法」で「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」とされている。この「研究と修養」を指して「研修」と呼ぶのである。ここで大切なのは、「研究」だけでなく「修養」が求められていることだ。研究は判るけど、修養とは何だろうか。辞書を調べると「知識を高め、品性を磨き、自己の人格形成につとめること」と出ている。教師なんだから、生徒より「知識」はあるだろう。でも「品性」とか「人格」と言われると、困ってしまう。しかし「修養」の意味を広く考えることで、今後に望まれる研修のヒントになる。

 まず今までの「教員免許更新制」や「10年研修」には負担感が大きかった。当たり前である。何故なら「ある年に集中的に学ぶ」という仕組みだから。しかし、その年にも普通の仕事がある。授業もあれば、部活もある。また、その年が産休、育休、病休、介護休暇などに当たることもある。本人の体調が優れないこともある。だから、その年が大変にならないように、中三、高三の担任を外れるように担任になる時期を調整したりする。妊娠・出産の時期も外すようにする。人生設計という観点から本末転倒というしかない。

 じゃあ、どうすればいいのだろうか。僕が今回思いついたのは「ポイント制」である。研修を受けて報告を提出することで、決められたポイントを付与する。そして、「10年間で○○ポイント」必要と決めるのである。更新にはいくつかの領域に渡る講習が必要だが、その中に「教育の最新事情」が必修項目として入っている。しかし、それが一番評判が悪い。大体「最新事情」を10年に一度学ぶという発想がおかしい。最新事情に関しては、校内や教育委員会でも研修が行われる。内容が重複するという声が高い。だから、校内研修をポイント化すれば良いのである。
(校内研修のようす)
 つまり、「最新事情」を10年に一度まとめて学ぶのではなく、毎年やってる校内研修や教育委員会の研修を10年分積み立てることで良しとするのである。その場合、ただ出席してればいいということにはならないだろう。簡単でもいいから「研修報告」がいる。長期休業中にまとめることで「ポイント化」するわけである。こうすれば、毎年きちんと研修していけば、「最新事情」分野は終わる。そして、最新事情なんだから、その方がいいだろう。最近だったら、「オンライン授業の工夫」は多くの教員が悩んでいるだろう。それをウェブ上で講習して、授業に生かしたことを報告書にまとめる。そういう報告書を10年間で20ポイントぐらい貯める。

 この研修は当然「指導的教員」も受けなければならない。今の更新講習は管理職や主幹教諭は免除される。それは本来おかしいだろう。指導的教員ほど最新事情や専門的知識が必要なはずである。だから、新しい制度では、むしろ指導的教員ほど高い研修ポイントが必要にしなければおかしい。それじゃ、誰も管理職にならないと思うかもしれない。しかし、指導的教員はもともと「教務」「生活指導」「進路指導」などの主任をしていて、そのための研修や連絡会が多い。校長や副校長も同じである。その内容をまとめて職員会議で報告する機会もあるだろう。それをもって研修ポイントに出来るようにすれば問題ない。

 いくつかの分野を決めて、10年間に必要なポイントを獲得するようにする。多少はヒマな年に、負担が大きな(ポイントが高い)研修を受講する。10年程度(産育休や病休期間等を除き)で獲得ポイントが少なければ、2年程度の猶予が与えられる。だけど、その猶予期間にも次の10年分の研修をしなければならないから、「積み残し」は避けたい。そのことが研修を受ける動機になる。また「余った研修ポイント」が出た場合、直近2年間のポイントは繰り越せる。まあ有給休暇と同じ発想である。そんな感じのことを考えて、本当は「研修内容をどうするか」を書きたかったんだけど、長くなってしまったから2回に分ける。2回書くような問題でもないんだが。
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