万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アベノミクスの第2幕-新自由主義の独断場は勘弁

2014年12月15日 15時44分54秒 | 日本経済
衆院選2014 アベノミクス第2幕へ 次は再増税環境作り(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、投開票された衆議院選挙において与党が圧勝したことから、アベノミクスの第二幕が開くこととなりました。第一幕では、超円高の是正などによる企業収益の改善が見られるなど一定の効果を上げたのですが、果たして第二幕では、どのようなシナリオが展開されるのでしょうか。

 実のところ注目されますのは、三番目の矢とされる成長戦略です。何故ならば、この分野では、パソナ会長の竹中氏に代表される新自由主義派の影響力が強く、第二幕では、この方針で規制緩和や民営化等が追求される可能性があるからです。総選挙によって廃案とはなったものの、労働者派遣法の改正なども、派遣労働を固定化させることによる人材派遣業者への利益誘導ではないか、との疑惑を生んでしました。規制=悪・民営化=善とみなす新自由主義派のスタンスでは、当然の方針なのでしょうが、規制緩和と民営化が結びついた結果、パソナといった民間派遣業者に官公庁の仕事が委託され、中間マージンの発生による財政負担が生じることとなりました。新自由主義者とは、市場の活力を引き出すために自由化を訴えるのではなく、結局のところ、政府の利権を漁り、中間搾取を目指す利権団体なのではないかと疑ってしまいます。また、国家戦略特区などの案も、外国人優遇策では、日本企業にとりましては、競争条件においてハンディーを課せられるようなものです。

 規制とは一般的なルールのことですので、本来は、ルールなき状況をカオスと表現するように、必要な規制も当然にあります。多種多様な規制の中から阻害要因に過ぎない不要なものを見つけ出して撤廃することこそ規制緩和の基本であり、規制=悪の構図は極端ですし、民営化も、公的権力の私物化や利益誘導となれば、国民を害することになります。アベノミクスの第2幕では、新自由主義の独断場になることだけは、ご勘弁いただきたいと思うのです。

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4 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-12-15 20:56:31
こんばんは。アベノミクスの第三の矢、成長戦略・・・
新自由主義に流されると・・・
但し、現時点で非正規雇用が増え、正規雇用は増えていないというロジックこそが間違いのもとなのです。
景気は回復傾向にあっても、先行きがはっきりと見えて来るまでは非正規雇用を増やし、経済復活の明るい兆しがはっきりしますと正規雇用に切り替えられてゆくのです。
維新などの掲げる新自由主義の誤謬は、消費税増税で税収増が見込めるとしているところにあります。
人件費や公共事業・地方交付税を減らし、増税で増えた税は財政再建と国債の償還にあて、1000兆に上る国債を減らさなくてはと考えているのです。
はっきり申しまして、此のような考えは誤りです。
消費税を増税しても消費が伸びなければ税収は増えません。
円高を容認し輸入品を安くしても税収は増えるどころか減ります。
消費税を支えるのは、使い捨て文化なのです。
機械でも家電製品でも故障したから修理して大切に使おうとしても税収はのびません。
故障したり、古くなったりしたら新しい物に買い換える事で消費税は支えられていると言っても過言ではありません。
それも、なるべく高価な物のほうがいい。
同じ税率なら、より高額商品の方が収入は大きくなります。
消費税の効果が大きいのは、国民に十分な収入があり可処分所得が増え消費が伸びている時です。
つまり、インフレ状態なのです。
インフレの時は消費税に限らず、所得も増えますので所得税の税収も増えます。
国民を豊かにして可処分所得を増やす事で財政の問題は解決します。
国民を豊かにするためには、国民総生産を増やさなくてはなりません。
新自由主義の誤りは、政府支出を小さくし民間に任せようとするところです。
民間企業は出資した者に対する責任がありますので、利益が上がらないところは切り捨て、賃金も下げて利益を確保しようとします。
バブル時のような場合は増税とセットで、バブルを抑制する効果があるのですが、デフレを脱却していない状態では逆効果になります。
現在の状況で、低所得者や母子家庭だけに焦点をあてて経済政策を行いますと、ある程度の円高・デフレ容認になってしまいデフレ脱却が出来なくなります。
民主党が総選挙前に増税しろと言っていたのは、デフレがどういう状態なのか理解していなかったと言わざるを得ません。
デフレの状況下で公共事業を削り、社会保障や福祉に予算をさき、不足分を増税で賄おうとする、税収は増えませんので、相次ぐ増税・・・
結果は、日韓併合前の朝鮮と同じ状態になります。
あえて、其のような状況を作り出そうとしているのが受験という科挙にパスした連中なのです。
デフレ時の増税も、格差を拡大させる事になります。
何でもかんでも自由という考え方は、これもフランス革命の立憲主義に基づくものです。
政府の役割はごく小さく、市民を自由にする事で全てがうまくいく・・・つまりは無政府主義に極めて近い考え方から発生しているのです。
フランス革命の市民革命や人権・自由・平等・博愛などの綺麗な言葉を無条件に鵜呑みにするのではなく、ベルばらなどの創作物だけで知ったつもりになるのではなく、当時の記録や文献をまとめた書籍などを繙き、その後の歴史がどのように変わったのか知り、自分の頭で考えれば判るはずです。
新自由主義や立憲主義という完全なる自由こそ素晴らしいとする思想の裏に隠されている地獄への近道に気がつかなくてはなりません。
二年後に参院選がありますので、新自由主義と言えども出鱈目な事はできないでしょう。
あまりに出鱈目すぎると大幅に議席を失う可能性がありますので。
今度の選挙で大笑いしたのが習近平の「低い投票率で現政権が信認されたとは言いがたい」という発言でした。
朝日新聞や毎日新聞などの論調そのまま。
「わかっているなら香港で自由選挙を実施させなさいよ」と言いつつも、香港の若者が夢見る自由な選挙が行われているというのに低い投票率・・・もう少し、民主主義とは国家・国民に対する責任である事を自覚すべきではないでしょうか。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-12-16 06:53:46
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 自民党の選挙公約を読みますと、それ程には新自由主義の傾向は強くはありませんので、今後、どのような方向に向かうのかは、判然とはしません。しかしながら、安定多数を背景に、国民の反対を押し切ってまで竹中氏の路線を進めるとしますと、日本企業や日本国民が不当に不利な状況に置かれ、生活レベルも低下する可能性があります。インフレも、賃金が上がらなければ国民の生活を圧迫し、景気低迷下でのスタグフレーション状態ともなります。欧米で既に問題が顕在化している政策ですので、後追いする必要はないのではないかと思うのです。
 なお、立憲主義そのものは、自由主義というよりも、政治権力の行使に際しては、憲法や法律の枠組みを超えてはならないとする原則であり、それ自体においては、為政者の自由を抑制する働きを持ちます。政府との関係で懸念すべきは、規制撤廃=民営化によって、権力や利権が、パソナの事例のように私物化さえることではないでしょうか。
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地雷だな (通りすがりのおじ様)
2014-12-16 12:16:34
李明博前韓国大統領の知恵袋としてご活躍された竹中氏だが、韓国の現状はいかがな状態なのか・・・・・

経済はすぐには答えが出ないので、間違えた方策をとると地雷地帯を歩く羽目になってしまう。

慎重に願いたいものですね。
返信する
通りすがりのおじ様さま (kuranishi masako)
2014-12-16 15:25:50
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 新自由主義の本家本元であるアメリカでさえ、製造業の回帰に努めるなど、見直しが進んでおります。新自由主義が伝播する様は、まるで”焼畑”のようです。今度ばかりは、外国に倣うならば、その失敗の経験に学ぶべきと思うのです。
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