万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

プリゴジンの乱を推理する

2023年06月29日 11時07分03秒 | 国際政治
 今月6月24日に発生したプリゴジンの反乱については、情報が錯綜していることに加え、識者の立場により千差万別です。ウクライナ寄りの報道では、ロシア連邦の崩壊に向けた‘終わりの始まり’とする主張が目立つ一方で、ロシア寄りの立場からは、むしろプーチン大統領が国内での足場を固めたとする見方も少なくありません。謎に包まれた事件となったのですが、事実の見極めには、時間的な近さよりも情報の正確さが重要であることを思い知らされる事件ともなりました。今この時にこの世界で起きている出来事でも、正確な情報が欠けていれば、人々は事実を知ることはできないからです。

 そこで、謎解きには、公開されている情報の断片から全体像を描き、発言者が偽情報を提供している可能性をも考慮しながら、慎重に推理するしかなくなるのですが、今般のプリゴジンの乱を観察しておりますと、ロシアによる‘茶番劇’、アメリカによる対ロ内部工、並びに、プリゴジン単独蜂起説もそれを支持するなりの根拠も説得力があるのですが、世界権力による黒幕説も捨てがたいように思えます。アメリカ、ウクライナのゼレンスキー大統領、並びにワグネルの創設者であるプリゴジン氏の三者には、ユダヤ人脈という共通点があります。また、血脈は別としても、ロシアのプーチン大統領も、世界経済フォーラムによってグローバル・ヤング・リーダーズの一人に選ばれたことがあります。ラドルフ外相がヒトラー・ユダヤ人説を唱えたときにも、真っ先にイスラエルに対して謝罪したのはプーチン大統領でした。表には見えにくいものの、プーチン大統領にも世界権力の息がかかっていると推測されるのです。

 因みに、ウィキペディア(英語版)の記事に依りますと、ベラルーシのルカシャンコ大統領につきましても、その父系の血脈は不明なそうです。母方の祖父の家で育っており、諸説があるもの、父親に関する最も有力な説は、移動民であるロマであったのではないか、というものです(ユダヤ人説もあるのかもしれない・・・)。ルカシェンコ氏につきましても、ベラルーシに対する愛国心には疑問がないわけではありません。プーチン大統領につきましても出自に関する疑惑があるのですが、世界権力には、出自不明者を取り立てるという特徴があるようにも思えます。

 それでは、プリゴジンの乱には、どのような目的があったのでしょうか。先ずもって推測されるのは、戦争と混乱の長期化です。5月より、NATOによる戦車の提供等を含む支援を背景にウクライナはロシアに対して大規模な反転攻勢を計画していたとされます。しかしながら、これまでのところ、ウクライナ軍が占領地の奪回に成功したといった華々しい成果は報じられておりません。戦闘の映像も殆ど報じられることなく、戦地の様子も不明なのです(今日では高度な映像技術があるのです、現実に戦闘が行なわれているかさえ怪しくなる・・・)。仮に、紛争地に目立った動きがないとしますと、加盟各国の政府やEUはウクライナ支援に前のめりであるものの、紛争のこれ以上の拡大を望まない加盟諸国の国民世論や良心的政治家による慎重論が抑止力として働いているのかもしれません。

 そこで、世界権力は、自らの‘駒’であった傭兵部隊のワグネルを動かすことで、戦闘地を内戦の形でロシア国内に拡大させるようとしたのかもしれません。ウクライナとロシアとの戦いであれ、ロシア国内の内戦であれ、戦地が拡大し、戦闘も長期化すれば、戦争利権を握る世界権力に採りましては、利益を得るチャンスとなるのです。ロシア軍内部にもプリゴジン側と通じていたとされる人物として、ウクライナにおけるロシアの軍事作戦副司令官のセルゲイ・スロビキン司令官の名も上がっています(ロシアの宇宙軍の司令官でもある?)。戦略のプロを称するプリゴジン氏が勝利を確信するほどの広範な反乱計画があったとしますと、同氏の個人的な人脈のみでは説明できないようにも思えます。

 もっとも、実際にはプリゴジン氏は道半ばで反旗を降ろしていますので、同撤退もシナリオに織り込み済みであれば、突発的な事件の発生による混乱の長期化を狙っていたとも考えられます。プリゴジン蜂起の報を受けて、市場ではエネルギー資源の価格上昇も報じられており、混乱の長期化は、エネルギー利権を有する勢力に採りましては、願ってもない展開なのです。

 以上にプリゴジンの反乱について推理を試みてみましたが、同反乱につきましては、主要人物達の誰もが真剣味に欠けており、どこかコントロールされているか、踊らされている感があります。とは申しましても、噴出する疑問を前につじつま合わせに苦心しているように見えるところからしますと、作者あるいは演出者の思惑通りにはシナリオは進展していないのかもしれません。余りにも出来過ぎてしまったために、むしろ、その作為性が自ずと現れ出でてしまっているように思えるのです。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベラルーシの動きに注目を | トップ | 人種優遇政策の問題点とは-... »
最新の画像もっと見る

国際政治」カテゴリの最新記事