万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自衛隊機レーダー照射事件-韓国は罠を仕掛ける?

2019年01月05日 12時06分05秒 | 日本政治
河野外相 韓国外相と電話会談「早期解決」
 昨年末、日本海上で発生した韓国海軍艦艇「広開土大王」による海上自衛隊機照射事件は、韓国側の事実否認により、年が明けても未だ決着を見ていません。業を煮やした防衛省が公開した証拠動画に対しても韓国側は頑としてこれを認めず、反論動画を公開する始末です。しかもこの反論動画、その大半が防衛省公開の証拠動画の映像を加工して‘再利用’しているというのですから唖然とさせられます。

 当初、韓国側は、レーダー照射の事実を認めた上で、悪天候、並びに、北朝鮮漁船の救難活動を理由として自らの行為の正当化を試みていました。しかしながら、事件当時、現場の天候が好天であったことが判明し、‘悪天候説’の嘘はばれてしまいます。そこで、‘悪天候説’に替って登場したのが‘自衛隊機威嚇飛行説’であり、この説によって、韓国側は加害側から被害側へと自らの立場をすり変えてしまうのです。この頃迄はレーダー照射の事実を認めていたのですが、その後、韓国政府は、レーダー照射の事実そのものをも否定し、被害者の立場から日本国に対して謝罪要求を突き付けるに至るのです。

 韓国側は、論点を‘自衛隊機威嚇飛行’の有無に巧妙にずらすことで、自らの行為を正当化しようとしたのでしょうが、ここで一つの論理矛盾が生じることとなります。それは、後になってレーダー照射の事実否認に転じたため、正当化の対象となる行為そのものがなくなってしまったことです。この結果、‘日本国の自衛隊機が威嚇飛行をしたから、致し方なくレーダーを照射した’ではなく(もっとも、この状況であってもレーダー照射は国際ルールに反する…)、‘日本国の自衛隊機が威嚇飛行をしたにもかかわらず、韓国側は何もしなかった’という、どこか奇妙な言い訳となってしまうのです。

 韓国側の反論動画では防衛省公開の動画に録音されていたレーダー照射音が意図的に消去されており、レーダー照射の事実は動かし難いのですが、虚偽を重ねて自らの非を認めようとしない韓国側の態度に憤慨した防衛省内部では、さらなる証拠の開示を検討しているそうです。そしてその証拠とは、‘軍事機密である波長データ’らしいのです。この応酬で注目されるのは、韓国側の反論動画には、以下のような一文がある点です。

「韓国海軍は、いかなる脅威行為もしていません。 日本がまだ追跡レーダー探知を主張するなら、両国が一緒に実務協議を通じて哨戒機から収集した電磁波の情報を分析して、事実を確認するための手順を踏めばなります。」

防衛省幹部の反応は、上記の韓国側の要求に応じたこととなるのですが、ここで考えるべきは、何故、敢えて韓国側が電磁波情報の分析を反論動画において提案したのか、という点です。先に述べた韓国側の言い訳は、仮に日本国側から自衛隊の電磁波情報を聞き出す意図があったとすれば、論理上の支離滅裂さは二の次であったこととなります。日韓間の証拠の出し合い合戦に持ち込むことができれば、日本国の自衛隊の軍事機密を労なくして得るチャンスとなるからです。つまり、仮に日本国側が‘証拠’を提示すれば、韓国側は電磁波情報を得られますし、また反対に、‘証拠’の提示を日本国側が渋れば、韓国側は証拠不十分で事件を有耶無耶にできますので、どちらの転んでも、韓国は自国に有利なようにこの事件を利用できるのです。

 このように推測しますと、韓国側によるさらなる証拠の提示要求は、日本国に仕掛けられた‘罠’であり、日本国を不利な行動に誘導する挑発行為なのかもしれません。日本国政府は、迂闊に自国の電磁波情報を韓国に伝えるような愚は避け、日本国の安全を脅かさないよう、電磁波情報とは別の証拠を挙げるか、あるいは、韓国艦艇が北朝鮮漁船の密漁船が蠢く日本海の大和堆で、一体何を目的とした活動を行っていたのか、この点を徹底的に追及すべきなのではないでしょうか。

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4 コメント

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あけましておめでとうございます (小平次)
2019-01-05 12:58:15
倉西先生

あけましておめでとうございます

本年もまた、勉強をさせて頂ければ幸いに存じます。

何卒宜しくお願い申し上げます。

『証拠の提示を日本国側が渋れば、韓国側は証拠不十分で事件を有耶無耶にできますので、どちらの転んでも、韓国は自国に有利なようにこの事件を利用できるのです』

本当にその通りだと思います

私は安倍首相の指示のもと、映像公開に踏み切った時点で、どこまでの覚悟をもって、どのあたりを落としどころとするつもりで公開に踏み切ったのか、非常に危惧しておりました。

韓国側のレーダー照射という行為は、決して許される行為ではありませんが、感情的な対応をしても結局翻弄されて終わり、これまでいつもそうでした。

古くは新羅の時代から、かの半島の国々は狡猾に、嘘や言い訳を繰り返し、我が国に損害を与えてきたように思います。

ましてや今、重要な軍事機密がまるで北朝鮮の傀儡のような政権である厄介な隣国の手に渡るような愚は絶対にしてはならないと思います。

ありがとうございました。
返信する
小平次さま (kuranishi masako)
2019-01-05 21:09:34
 ご丁重なご挨拶をいただき、ありがとうございました。今年も、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 歴史を振り返りましても、日本国は、朝鮮半島の諸国との関係は苦難の連続であったように思えます。今般の一連の韓国政府による反日行動につきましては、背後に北朝鮮のみならず、中国の気配も感じられます。日本国政府は挑発に乗ることなく、ゆめゆめ軍事機密を提供するといった失態を演じてはならない思うのです。
返信する
信用出来ない南北朝鮮人とチャイニーズたち (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2019-01-05 21:21:50
韓国の、このたびの事件での態度は不実としか言いようが有りません。
お正月早々、激しい怒りを感じますが、日本政府の態度も不甲斐ないです。!
いつも、こういう事が起きるつど、政府は『遺憾である』『韓国政府に厳しく抗議する』『説明を求める』『早期解決を計るべく要求する』とか言ってますが、そんなことは何度言っても埒はあかないでしょう。
韓国および韓国人というのは、基本的に信頼出来ない人たちであることは、とっくにわかってるはずです。
今、一番、深刻に現実を直視しているのは、自衛隊のかたがただと思います。
私は、自衛隊のかたの悔しいお心を拝察しますと、泣けてきて仕方がありません。
政府・官邸のかたは、そういう現場自衛隊のかたのお気持ちがわかっているのでしょうか。

 それから、今、最新ニュースを聞きましたが、チャイナが、またもや尖閣列島のわが国の領海に侵入したらしいです。もう、わが国は南北朝鮮とチャイナに舐められきっています。

☆ところで、4月からの外国人労働者受け入れですが、チャイニーズと韓国人は、絶対に受け入れてはなりません。
これは、自民党支持者のかたの『最低限度の首相へのお願い』として、かなり多くのかたから官邸にメ-ルされているそうです。
【★敵性国家から移民労働者を受け入れるなっ!!!★】、、、これは、あったりまえでしょう。!!
こう言う最低限度の請願さえも、政府が聞かないなら、話しになりません。!!

◎皇國の 為に命を 捧げたる
            英靈の聲 聞け!我が民よ!
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櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2019-01-06 09:18:37
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 尖閣諸島周辺海域におけます中国の軍事的活動が活発化し、米中新冷戦も懸念される中、日本国政府が、入管法改正において適用対象国の9カ国に中国を含めましたことは、正気の沙汰とも思えません。中国は、「国防動員法」、並びに、「国家情報法」を制定し、在外中国人に対しましても国策への協力を義務付けているのですから、中国からの外国人労働者の受け入れは見直すべきと考えております。

 唐土より 寄せくる波の 高ければ たれかまもらむ
われらがみくにを
返信する

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