万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イランの謎-黒幕は?

2019年06月23日 13時27分44秒 | 国際政治

  イランによるアメリカの無人偵察機の撃墜により、世界はあわや戦争と云う危機的な状況に至りました。とは申しますものの、危機は完全に去ったわけではなく、今後の成り行き次第では、イランが第三次世界大戦の発火点ともなりかねません。かくしてイランに人々の関心が集まるのですが、同国を観察すればするほど謎は深まるばかりです。

 今般の米偵察機撃墜についても、同事件は、イランがステルス機を撃墜し得る程の高い防空能力を有する証拠とする意見もあります。同説に従えば、トランプ大統領がイランに対する攻撃を控えた理由は、米軍による爆撃作戦が成功する見込みが薄かったからということにもなるのでしょうが、イランが有する軍事技術のレベルや実態については情報不足のために判断は困難です。しかしながら、仮にイランが高レベルの軍事技術を有しているとしますと、イランがこれらの技術を独自に開発したとは考え難く、おそらく、何れかの軍事大国からの技術支援があったものと推測されるのです(核・ミサイル開発にも同様の疑惑がある…)。

 軍事技術面において大国からの支援が推測される理由は、仮に、イランが高度な科学技術力を独自に開発する能力を有しているとすれば、その技術力以ってすれば、アメリカが課した禁輸措置で悲鳴を上げるはずもないからです。誰もが知るように、イランは世界有数の石油産出国です。採掘された石油の大半は海外諸国に輸出され、石油代金として外貨を得ることでイラン経済は保たれてきました。つまり、イスラム革命によって西欧文明を否定し、イスラム教に基づく国家の樹立を高らかに宣言しながら、その実イランは、経済的自立からはほど遠く、天然資源の輸出に頼る輸出依存型の国なのです

 このため、石油輸出の道が閉ざされると、経済基盤を輸入に頼ってきた分、そのダメージは甚大です。当然に、同国に対する制裁措置が国民生活にも波及し、品不足や価格の高騰に苦しめられることとなります。イラン国民の対米感情が悪化する原因もまさにここにあり、イラン政府も、国民の不満がアメリカ敵視に向かうよう煽っているのです。国内の対米強硬派にとりましては、アメリカによる経済制裁は好都合なのでしょうが、自国の政権を表だって批判できない一般のイラン国民が、本心からアメリカとの戦争を望んでいるのかは怪しいところです。

 そして、資源輸出型の国の特徴の一つは、輸入によって国内の製品需要に応えることができるため、技術面における発展が遅れがちとなることです。イランもまた、イスラム教に基づく国家体制を理想としてきたこととも相まって、製造業等の分野にあって先端的な技術の研究・開発に熱心に取り組んできたわけではありませんでした。産業技術力は軍事技術の基盤となると共に転用も可能ですので、仮に、イランにあって軍事技術のみが突出して高いレベルにあるとしますと、それは殆どあり得ない現象です。となりますと、やはり、イランは、何れかの軍事大国から軍事テクノロジーを‘輸入’している、あるいは、支援を受けていると考えざるを得ないのです。

 

 それでは、イランを支援する軍事大国とは、一体、どこの国なのでしょうか。最も可能性が高いのは、南下政策の伝統に鑑みればロシアと云うことになりましょう。あるいは、経済制裁下において秘かにイラン産の石油を独占的に手に入れ、将来における対米戦争に備えたい中国である可能性も否定はできません。そして、これらの諸国のさらに裏には、全ての諸国を影から操ろうとする勢力も潜んでいるかもしれないのです。今般の事件は、アメリカとイランとの二国間関係のみならず、その背後関係をも明らかにしませんと、その真の目的は見えてこないのではないかと思うのです。

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