万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

韓国の‘三権分裂の術’は通用しないのでは?

2019年01月14日 13時46分35秒 | 国際政治
韓国に30日以内の返答要請 徴用工訴訟協議で日本政府
韓国政府は、‘司法の独立’ならぬ‘司法の独裁’を認めたことで統治諸機関が分立し、国家の一体性が損なわれることとなりました。‘徴用工問題’をめぐる対日要求を正当化するための策であったのですが、果たして、この‘三権分裂の術’は通用するのでしょうか。

 日本国政府は、30日間の期限を設け、韓国政府に対して「日韓請求権協定」が定める政府間協議開催に対する回答を迫るそうですが、仮に韓国側がこの申し入れを拒絶した場合、同協定が定める仲裁委員会の設置、それも困難に直面すれば、その他の国際司法機関への提訴へと解決の歩を進めることとなりましょう。韓国が協定上の手続きを拒絶する可能性は極めて低いので、国際レベルでの司法解決となれば、両国の合意を要する国際司法裁判所(ICJ)よりも、単独訴訟が可能な常設仲裁裁判所での解決の方が相応しいかもしれません。

そして、この際に問題となるのは、やはり、韓国側の国家分裂状態です。何故ならば、日本国の窓口は日本国政府で凡そ一本化されていますが、韓国側は、韓国政府、韓国裁判所の二者が当事者となり得るからです。もっとも、日本国側でも、政府ではなく賠償を命じられた日本企業が当事者となって、民間投資の保護の観点から国際私法上の権利侵害として訴えるという道もないわけでもありませんが、争点が条約の解釈ですので、やはり、当時者は国の機関と言うことになりましょう。そこで国際司法による解決に至った場合を想定しますと、以下の二つのシナリオを描くことができます。

第1のシナリオは、韓国裁判所が当事者となるケースです。原告国となる日本国政府は、国際司法機関に際して、まずは、請求の原本に当事者を明記する必要があります。この時、韓国の最高裁判所の名を原本に記した場合、韓国側は、政府の見解がどうあれ、司法機関が国際裁判の当事者となることを認めざるを得なくなるのです。一般的には、国際裁判の当事者はその国の政府ですので、韓国の措置は異例となるのですが、国際司法システムを国内司法システムを包摂する一元的な制度として捉えますと、韓国の国内裁判所は、それが国内的な最終審となる最高裁判所であれ第一審となり、一方的な判決を不服とする被告国が、一審の判決の取り消しを求めて国際司法機関に上訴する形態となります。今後、韓国の術を模倣して国際法上の義務から逃れようとする国が現れるかもしれませんので、案外、この観点も重要です。

第2のシナリオは、文面の当事者の欄に韓国政府の名が書き込まれるケースです。日本国政府は、「日韓請求権協定」の交渉において両国間で合意された、元“徴用工”の給与未払い問題の解決は韓国政府の責任とする補償義務の不履行を訴因として提訴することでしょう。実際に韓国国内では、韓国政府に対して同問題の補償を求める訴訟が起こされていると報じられています。このケースでは、韓国政府は、最早逃げられない立場に追い込まれます。三権分立を根拠に最高裁判所の判決の受け入れを日本国政府に迫りながら、政府の協定違反を理由として提訴された場合には、自らが当事者とならざるを得ないからです。

以上に二つのシナリオを想定してみましたが、何れにいたしましても、韓国の敗訴は決定的なように思えます。韓国による‘三権分裂の術’には奇策ゆえの限界があり、‘徴用工問題’を、きれいに筋を通して解決するためには、国際司法機関での解決こそ望ましいのではないかと思うのです。

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