草花好きのひとりごと

植物の栽培記録や鉄道・路線バスなどの趣味について記しています。

桜草花壇

2012-02-28 | さくらそうに関するあれこれ
さくらそう(日本桜草)の開花鉢を展示鑑賞するための設備として、「花壇」と呼ばれるものが存在します。
江戸時代に植木屋などで小屋や屋根の下に棚を置き、鉢植えを並べて展示したことが桜草にも取り入れられ、明治に入ってから桜草独特の幅一間の小屋に5段の棚という形態が生まれたともいわれています。

よほど器用な人でない限りこれを自作するのは難しく、どこかに注文して作ってもらうことになると思いますが、さくらそうの花の形や色、咲き方の違いが一目にわかり、近づいて見ると品種ごとの特徴も見ることができ、風雨を避けられるという、優れた鑑賞法と考えられます。

これは5号か6号の鉢を並べて鑑賞するもので、小屋の大きさは幅が一間(約1.82m)、奥行き5尺(約1.52m)、5段の棚(棚板の幅5、6寸(約15 ~18cm))に一段ごとに鉢を置く位置をずらして33あるいは38鉢並べるのが標準的なようです。

開花時期の違いを考慮して、良い状態の鉢を鑑賞しようと思うと、その3倍以上の鉢を栽培する必要がありそうに考えられ、それだけの鉢数を栽培し、開花時期だけとは言っても小屋を設置する場所は、我が家の庭にはありません。

仮に5、6号鉢用で棚板幅6寸(約18cm)と考え、鉢数はそのままで4号鉢用に縮小して棚板の幅を5寸(約15cm)にすると、幅5尺(約1.52m)、奥行き4尺(約1.21m)に収まりそうです。
設置面積は3分の2になるのですが、現代の住宅事情を考えると、これでもまだ大きいですし、そのような場所があれば、なにも4号鉢で栽培することは無いように思います。

棚の幅はそのままにして、小屋の間口と棚の長さを5尺(約1.52m)、4尺(約1.21m)・・・と縮める方法も考えられますが、小屋の前に立って見ることと、鉢の出し入れ時に小屋の中に入る事を考えると、高さは小さくできませんし、奥行きも5段を維持するとあまり小さくすることはできず、かといって棚の段数を減らすと全体の見た目が寂しくなるほか、鉢数が少な過ぎて花色や形、咲き方の違いを見比べることが十分にはできなくなると思います。

小屋と棚の材質は古くから伝わるような木造の方が見映えがする事は間違いないですが、風情には目を瞑り価格と組み立ての容易さを優先して、金属や樹脂などの素材という選択肢もあるとは思います。
でもそれだけのものを作るくらいなら、価格よりも見映えを優先させた方が良いかとも思います。

と、まあいろいろと考えてみましたが、簡単にできるものではありません。
伝統的な様式の桜草花壇は、古いものが残されていたり、現代に再現されたりしていて、中には開花時期に公開されているものもあるようですから、私などはもっと容易にできる別の鑑賞方法を模索した方が良いのかなと思っています。
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孫半土(孫半斗)と桜草鉢

2012-02-28 | さくらそうに関するあれこれ
江戸時代にさくらそう栽培の鉢として使われた容器に、孫半土、孫半斗などと呼ばれた陶器に底穴をあけたものがあったそうです。
これについての情報は多くはないのですが、貴重な陶磁器を焼成する際の保護用、壷のように使われたものなど、一種類のものではなく、複数の種類が存在したようですし、先に記した「孫半土」「孫半斗」以外の名称もあったようです。

大きさも一種類だけではなかったようですが、主にさくらそう栽培に使われたものは、直径が5、6号鉢に相当する程度だったともいわれ、時代が下ると入手困難となったため、それを模した植木鉢が作られることとなり、それも同名で呼ばれているようです。

その材質など栽培に利用する上での特性について、私の手元にある書籍に記載されている事柄もあるのですが、後に再現されたものも含めて複数の種類が存在したということで、その全てに当てはまる事なのかどうか、私にはわかりませんし、私は書籍に掲載された写真及び記述と、以前に展示されていた鉢を何度か見ただけで、言わば現存する孫半土・孫半斗の中でもごく一部の種類しか見ていないはずで、先に記した以外の事は何もわかりません。

写真を含めて私が見たことのあるその鉢について、見た目ということを個人的な好みによって考えると、素朴さや作為の無さのようなものは感じられても、現代に再現すべき美しさやデザイン性があるとは感じらず、おそらく改良が進んだ園芸品種の花には似合わないのではないかと思っています。

桜草鉢の中には、孫半土(孫半斗)を参考にして、それを洗練させて綺麗に見えるようにしたものといった感じの鉢が、私の知るものだけでも複数あります。


内側にも釉薬がかけられていることと、鉢の厚みがやや厚いことが、これらに共通した特徴かと思われます。


私の場合、このタイプの鉢では根腐れさせてしまうことが多く、栽培結果が思わしくありません。
私の栽培管理に問題があるのだとは思いますが、現代使われている赤玉土を主とした用土と、かつて使われていたとされる荒木田土や田土を主とした用土、あるいはそれより前の時代の用土との性質の違いが影響している、と考えることもできるかもしれません。

ここからは、さくらそうを栽培する鉢に必要とされる性質とは何なのか、少し考えてみます。

近頃は20~30年前と比べると夏の気温が高いように感じられますし、最高気温が30度を超える日の日数などを見ても、かなり増えています。
そのことから、根腐れを防ぐ意味で、保水性よりも排水性や通気性、断熱性などを重視した鉢が必要なように思われます。

鉢の外見については、孫半土(孫半斗)や、過去に存在したものと現在入手可能なものを含めた各種の桜草鉢は、鑑賞時にほとんど見えない内側を除いて考えると、濃い茶色や黒といった暗い色のものがほとんどのようです。
それは、さくらそうの花色、葉の色が映えるように考慮されていると説明される場合が多く、確かに白とか薄茶色などの鉢と比べると、見映えが良く感じられる気がします。

「桜草鉢」という名で販売される鉢は、現在入手可能なものでも複数存在していますが、その形状や通気性や排水性といった性質は、各々違いがあります。
見た目が自分の好みに合うかどうかということも大事ですが、自分の栽培方法に適した鉢を選ぶと良いと思います。

しかし、私の知る範囲内ではどの鉢も鉢底の穴が小さいように思うのですが、何か製造上の理由でもあるのかもしれません。
水はけの良さということを考慮すれば、雪割草の鉢ほどではなくても、大きい方が良いと私には思えるのですが・・・

もちろん、むやみに桜草鉢に拘ってばかりいる必要は無く、他の植物用の鉢でも良いと思えるものがあれば、それを選べば良いのだと思います。

さくらそうを栽培する人は現在でもそう多くは無いと思いますし、今後は減っていくのかもしれません。
それに、陶器鉢は割れてしまうことはあっても、プラ鉢のような劣化はしないので、数が売れるものではないと思います。
そのため残念ながら、今後新たな桜草鉢が作り出される可能性は低いのかもしれません。

現代では入手しやすく、それなりに見映えのするプラ鉢もあります。
展示会でも見かけることがあり、軽量なので搬入搬出時に多大なメリットがあるようですし、ビニールポット(ポリポット)も含めて、陶器製の鉢よりもさくらそうの生育が良いと仰る方も少なくありません。

しかし、鑑賞時のみ使うのならばともかく、栽培に使っていると日射や降雨の影響で劣化してきます。
陶磁器ならば、風雨にさらされて味わい深くなるということもあるのでしょうが、プラスチックの場合はどう考えても鑑賞価値は低下する一方です。

そしてやがては劣化が進んで壊れて使いものにならなくなりますから、リサイクル可能な素材とはいえ、個人的には無駄にゴミを増やしているように思えて気になります。
また、陶器鉢をモデルにしたようなプラ鉢は割と高価で、2、3鉢分の金額で陶器の桜草鉢が買える程度です。

しかし、ホームセンターや園芸店などで容易に入手できるのは良いところで、いったいどこに行けば買えるのやら、というような桜草鉢の現状とは比べものになりません。
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