一日一条ずつ、自民党改憲案の問題点を考えています。
昨日から、第三章の人権規定「国民の権利及び義務」に入りました。
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日本国憲法
(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
自民案
(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
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今日は、憲法11条。11条は、人権保障の総則的規定です。
基本的人権の享有主体と、基本的人権の保障の意義についてうたっています。
すなわち、基本的人権の享有主体は、国民であり、基本的人権の保障の意義が、その固有性、不可侵性、普遍性があるがゆえに保障すべきものと意義づけられるとしています。
固有性:人権が憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされる権利であること。
不可侵性:人権が、原則として、公権力によって侵されないこと。行政権はもとより、立法権も、さあらに憲法改正権も侵すことはできない。
普遍性:人権は、人種、性、身分などの区別に関係なく、人間であることに基づいて当然に享有できる権利であること。
日本国憲法の条文を見ることで再度確認します。
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない(普遍性)。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利(不可侵性)として、現在及び将来の国民に与へられる(固有性、人間が生まれながらに有するということ)。
自民党案を次に。
第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
私は、基本的人権を守るという真摯な思いが、自民党案に感じられません。
それは、重要な文言を削除しているからです。
1)基本的人権の「普遍性」が自民案では弱まっている
現行憲法
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。
↓
自民案
国民は、全ての基本的人権を享有する。
単に享有するだけでなく、享有を妨げられないところに意味があると思います。
自民案では、こっそりと重要文言を落としています。
2)基本的人権の「固有性」が自民案では、ない。
現行憲法
現在及び将来の国民に与へられる。
↓
自民案
(削除)
憲法以前に、私たちは人間として固有の権利をもっています。それを文字で表したのが、憲法です。「実定的な法的権利」として確認したのが憲法です。
「人間の固有の尊厳に由来する」のが基本的人権です。
このような重要な「固有性」の観念を、自民案では削除しています。
考えられないことです。
なお、このことは、単に文言を整理していたら、たまたま落ちたとかいうレベルの話ではなく、自民案では意図して行っていることが分かります。
日本国憲法が、人権を、「信託されたもの」であるとして人権の固有性を謳った重要な憲法97条も、自民案では、こっそり削除しています。
現行憲法97条
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
↓
自民案
(97条自体を削除)
3)麻生氏の「ナチスに学べ」発言が意図していたものが、憲法11条、97条にも表れています。
麻生氏が、「だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。」と発言されたことの真意が、憲法11条の変更、97条の削除でも出ています。
日本国憲法における基本的人権の重要な観念である「固有性」が、自民案では、「誰にも気づかないような手口」で、落とされています。
以上
いままで、1条から11条まで自民案を見て来て分かることは、
自民案は、
○象徴天皇制を否定する
○戦争の放棄を否定する
○基本的人権の保障よりも、国家主義
その意図が含まれているということを私は強く感じます。
基本的人権の保障は、私たちひとりひとりに直接影響が出る話です。
第三章に入り、特に注意して自民案の問題点を、考えて行きたいと思います。
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