「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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(旧)あん摩師、はり師、きゆり師及び柔道整復師法7条は違憲、奥野健一最高裁裁判官

2014-05-20 23:00:00 | 医療
 営利的広告が表現の自由の保障を受けるかどうかが争われた事件「きゅう適応症広告事件最高裁判決(昭和36.2.15)」



 (旧)あん摩師、はり師、きゆり師及び柔道整復師法7条
 (現在)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆり師等に関する法律)
 に対して、奥野健一最高裁裁判官は、違憲の判断を示しています。

 



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裁判官奥野健一の少数意見は次のとおりである。

 広告が憲法二一条の表現の自由の保障の範囲に属するか否かは多少の議論の存す
るところであるが、同条は思想、良心の表現の外事実の報道その他一切の表現の自
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由を保障しているのであつて、広告の如きもこれに包含されるものと解するを相当
とする。広告が商業活動の性格を有するからといつて同条の表現の自由の保障の外
にあるものということができない。しかし、表現の自由といえども絶対無制限のも
のではなく、その濫用は許されず、また公共の福祉のため制限を受けることは他の
憲法の保障する基本的人権と変らない。従つて、広告がその内容において虚偽、誇
大にわたる場合又は形式、方法において公共の福祉に反する場合は禁止、制限を受
けることは当然のことである。

 あん摩師、はり師、きゆり師及び柔道整復師法七条は、きゆう業を営む者はその
業に関しきゆう等の適応症について一切広告することを禁止している。すなわち、
虚偽、誇大にわたる広告のみならず適応症に関する真実、正当な広告までも一切禁
止しているのであつて、これに反する者を刑罰に処することにしているのである。
 (明文上同条が正当な適応症の広告は禁止していないと解することは到底できな
い。)そもそも、本法はきゆう等の施術を医業類似の行為として一定の資格を有す
る者に対し免許によりこれを業とすることを許しているのである。すなわち、きゆ
う等の施術が何らかの病気の治療に効果のあることを認めて、その業務につき免許
制を採用しているのである。従つて、その施術が如何なる病気に効能があるか、真
実、正当に世間一般に告知することは当然のことであつて、かかる真実、正当な広
告まで全面的に禁止しなければならない保健、衛生上その他一般公共の福祉の観点
からもその理由を発見することができない。これは正に不当に表現の自由を制限し
ているものという外はない。

 多数意見は、「もしこれ(広告)を無制限に許容するときは、患者を吸引しよう
とするためややもすれば虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞がある」というので
あるが、単に広告が虚偽誇大に流れる虞があるからといつて、真実、正当な広告ま
でも一切禁止することは行き過ぎである。成程、取締当局としては予め一切の広告
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を禁止しておけば、虚偽、誇大にわたる広告も自然防止することができるであろう
が、かくては正当な広告の自由を奪うものであつて、取締当局の安易な措置によつ
て、正当な表現の自由を不当に制限するものである。これは恰も集団示威行進が時
として公安を害する危険性を包蔵するからといつて、公安を害する直接、明白な危
険もないのに、予め一切の集団行進を禁止するのと同様であつて、到底是認するこ
とができない。このことは人命、身体こきゆう等より重大な影響を持つ医薬品につ
いてさえ薬事法三四条が虚偽又は誇大な広告のみを禁止しているのと対比して考え
ても、きゆう等について特に医薬品と区別して正当な広告までも一切禁止しなけれ
ばならない合理的根拠を発見することができない。また、多数意見は「その結果適
時適切な医療を受ける機会を失わせるような結果を招来する」というのであるが、
若し然りとすれば、むしろ当初からきゆう等の施術の業務を禁止すべきであつて、
既に医業類似行為として病気治療上効果のあることを認めて、その業務を免許して
おきながら、その施術を受けると適時適切な医療を受ける機会を失わせるとの理由
で、正当な広告までも禁止することは、それ自体矛盾であるという外はない。

 なお、一切の適応症の広告が禁止されている法制を前提として、これを甘受して
自ら進んで免許を受けた者であるから、今更適応症の広告禁止の違憲を主張するこ
とは許されないのではないかという疑問もあるが、かかる憲法の保障する表現の自
由の制限を免許の条件とするが如きことは許されざるところであるから、かかる議
論も成り立たない。

 これを要するに、本法七条が真実、正当な適応症の広告までも一切禁止したこと
は不当に表現の自由を制限した違憲な条章であつて無効であると断ずるの外なく、
同条に則り被告人を処罰せんとする第一審判決は違憲であるから破棄を免れない



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全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120022963374.pdf
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