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放送事業者に対し、放送法9条に基づく訂正放送等を求める私法上の権利を、名誉を棄損された者は有するか

2014-05-14 23:00:00 | メディア・リテラシー
 放送事業者に対し、放送法9条1項(裁判当時4条1項)に基づく訂正放送等を求める私法上の権利を、名誉を棄損された者は有するか。

 東京高等裁判所は、私法上の権利を有すると判事しました。

 「法4条1項の規定は,放送事業者の放送により権利を侵害された者は,私
法上の権利として,その放送のあった日から3か月以内にその放送事業者に対して
訂正放送を求めることができることを規定したものと解するのが相当であり,放送
事業者が請求を受けても訂正放送に応じない場合には,裁判によりその実現を求め
ることができるというべきである。」


 しかし、最高裁判所は、以下のように、私法上の権利を有しないと判事しました。

  →概していうと、
4条は、私法上の請求権を付与するものではなく、放送事業者に対し,自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであるということ。   


 「法4条は,放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によって,その
放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人(以下「被害者」と総称す
る。)から,放送のあった日から3か月以内に請求があったときは,放送事業者は
,遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して,その真実でない
ことが判明したときは,判明した日から2日以内に,その放送をした放送設備と同
等の放送設備により,相当の方法で,訂正又は取消しの放送(以下「訂正放送等」
と総称する。)をしなければならないとし(1項),放送事業者がその放送につい
て真実でない事項を発見したときも,上記と同様の訂正放送等をしなければならな
いと定めている(2項)。そして,法56条1項は,法4条1項の規定に違反した
場合の罰則を定めている。

 このように,法4条1項は,真実でない事項の放送について被害者から請求があ
った場合に,放送事業者に対して訂正放送等を義務付けるものであるが,この請求
や義務の性質については,法の全体的な枠組みと趣旨を踏まえて解釈する必要があ
る。憲法21条が規定する表現の自由の保障の下において,法1条は,「放送が国
民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること」(1号),「
放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を
確保すること」(2号),「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって,
放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」(3号)という三つの原則
に従って,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ること
を法の目的とすると規定しており,法2条以下の規定は,この三つの原則を具体化
したものということができる。法3条は,上記の表現の自由及び放送の自律性の保
障の理念を具体化し,「放送番組は,法律に定める権限に基く場合でなければ,何
人からも干渉され,又は規律されることがない」として,放送番組編集の自由を規
定している。すなわち,別に法律で定める権限に基づく場合でなければ,他からの
放送番組編集への関与は許されないのである。法4条1項も,これらの規定を受け
たものであって,上記の放送の自律性の保障の理念を踏まえた上で,上記の真実性
の保障の理念を具体化するための規定であると解される。そして,このことに加え
,法4条1項自体をみても,放送をした事項が真実でないことが放送事業者に判明
したときに訂正放送等を行うことを義務付けているだけであって,訂正放送等に関
する裁判所の関与を規定していないこと,同項所定の義務違反について罰則が定め
られていること等を併せ考えると,同項は,真実でない事項の放送がされた場合に
おいて,放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自
由の確保の観点から,放送事業者に対し,自律的に訂正放送等を行うことを国民全
体に対する公法上の義務として定めたものであって,被害者に対して訂正放送等を
求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではないと解するのが相当である。前
記のとおり,法4条1項は被害者からの訂正放送等の請求について規定しているが
,同条2項の規定内容を併せ考えると,これは,同請求を,放送事業者が当該放送
の真実性に関する調査及び訂正放送等を行うための端緒と位置付けているものと解
するのが相当であって,これをもって,上記の私法上の請求権の根拠と解すること
はできない。
 したがって,【要旨】被害者は,放送事業者に対し,法4条1項の規定に基づく
訂正放送等を求める私法上の権利を有しないというべきである。」


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最高裁判所第一小法廷 平成13年(オ)第1513号等 平成16年11月25日判決
(第一審:東京地方裁判所 平成8年(ワ)第23253号 平成10年11月19日判決)

当時:放送法
第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、左に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。

二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。

三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

(定義)

第二条 この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
(略します。)
(昭三四法三〇・昭六二法五六・昭六三法二九・平元法五五・平二法五四・平六法七四・平九法五八・平一〇法八八・平一一法五八・一部改正)

(放送普及基本計画)

第二条の二 総務大臣は、放送(委託して放送をさせることを含む。次項第一号、第七条、第九条第一項第三号、第二項第五号及び第六号並びに第六項、第三十四条第一項、第五十二条の十三第一項第四号、第五十三条第一項並びに第五十三条の十二第一項において同じ。)の計画的な普及及び健全な発達を図るため、放送普及基本計画を定め、これに基づき必要な措置を講ずるものとする。

2 放送普及基本計画には、放送局の置局(受託国内放送及び受託内外放送にあつてはこれらの放送を行う放送局の置局及び委託放送業務とし、受託協会国際放送(電波法の規定による免許を受ける無線局により行われるものに限る。以下この項において同じ。)にあつては受託協会国際放送を行う放送局の置局及び委託協会国際放送業務とする。)に関し、次の事項を定めるものとする。

一 放送を国民に最大限に普及させるための指針、放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によつて享有されるようにするための指針その他放送の計画的な普及及び健全な発達を図るための基本的事項

二 協会の放送(協会の委託により行われる受託国内放送を含む。第三十二条第一項本文において同じ。)、学園の放送又は一般放送事業者の放送(協会の委託により行う受託国内放送を除く。)の区分、国内放送、受託国内放送、国際放送、中継国際放送、受託協会国際放送又は受託内外放送の区分、中波放送、超短波放送、テレビジョン放送その他の放送の種類による区分その他の総務省令で定める放送の区分ごとの同一の放送番組の放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域(以下「放送対象地域」という。)

三 放送対象地域ごとの放送系(同一の放送番組の放送を同時に行うことのできる放送局の総体をいう。以下この号において同じ。)の数(受託放送に係る放送対象地域にあつては、放送系により放送することのできる放送番組の数)の目標

3 放送普及基本計画は、第九条第一項、第二項第一号及び第五項に規定する事項、電波法第七条第三項の放送用割当可能周波数、放送に関する技術の発達及び需要の動向、地域の自然的経済的社会的文化的諸事情その他の事情を勘案して定める。

4 総務大臣は、前項の事情の変動により必要があると認めるときは、放送普及基本計画を変更することができる。

5 総務大臣は、放送普及基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公示しなければならない。

6 放送事業者(受託放送事業者、委託放送事業者及び第九条第一項第二号に規定する委託国内放送業務又は委託協会国際放送業務を行う場合における協会を除く。)は、その行う放送に係る放送対象地域において、当該放送があまねく受信できるように努めるものとする。

(昭六三法二九・追加、平元法五五・平六法七四・平一〇法八八・平一一法一六〇・一部改正)

第一章の二 放送番組の編集等に関する通則

(昭六三法二九・章名追加)

(放送番組編集の自由)

第三条 放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

(国内放送の放送番組の編集等)

第三条の二 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては、特別な事業計画によるものを除くほか、教養番組又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならない。

3 放送事業者は、国内放送の教育番組の編集及び放送に当たつては、その放送の対象とする者が明確で、内容がその者に有益適切であり、組織的かつ継続的であるようにするとともに、その放送の計画及び内容をあらかじめ公衆が知ることができるようにしなければならない。この場合において、当該番組が学校向けのものであるときは、その内容が学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠するようにしなければならない。

4 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

(昭六三法二九・追加、平二法五四・平六法七四・平九法五八・一部改正)

(番組基準)

第三条の三 放送事業者は、放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準(以下「番組基準」という。)を定め、これに従つて放送番組の編集をしなければならない。

2 放送事業者は、国内放送について前項の規定により番組基準を定めた場合には、総務省令で定めるところにより、これを公表しなければならない。これを変更した場合も、同様とする。

(昭六三法二九・追加、平一一法一六〇・一部改正)

(放送番組審議機関)

第三条の四 放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関(以下「審議機関」という。)を置くものとする。

2 審議機関は、放送事業者の諮問に応じ、放送番組の適正を図るため必要な事項を審議するほか、これに関し、放送事業者に対して意見を述べることができる。

3 放送事業者は、番組基準及び放送番組の編集に関する基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、審議機関に諮問しなければならない。

4 放送事業者は、審議機関が第二項の規定により諮問に応じて答申し、又は意見を述べた事項があるときは、これを尊重して必要な措置をしなければならない。

5 放送事業者は、総務省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を審議機関に報告しなければならない。

一 前項の規定により講じた措置の内容

二 第四条第一項の規定による訂正又は取消しの放送の実施状況

三 放送番組に関して申出のあつた苦情その他の意見の概要

6 放送事業者は、審議機関からの答申又は意見を放送番組に反映させるようにするため審議機関の機能の活用に努めるとともに、総務省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を公表しなければならない。

一 審議機関が放送事業者の諮問に応じてした答申又は放送事業者に対して述べた意見の内容その他審議機関の議事の概要

二 第四項の規定により講じた措置の内容

(昭六三法二九・追加、平九法五八・平一一法一六〇・一部改正)

(番組基準等の規定の適用除外)

第三条の五 前二条の規定は、経済市況、自然事象及びスポーツに関する時事に関する事項その他総務省令で定める事項のみを放送事項とする放送又は臨時かつ一時の目的(総務省令で定めるものに限る。)のための放送を専ら行う放送事業者には、適用しない。

(昭六三法二九・追加、平一一法一六〇・一部改正)

(訂正放送等)

第四条 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。

2 放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様とする。

3 前二項の規定は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による損害賠償の請求を妨げるものではない

 
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現行:放送法

第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一  放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二  放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

(定義)
第二条  この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
(以下、二条は略します。)

第二章 放送番組の編集等に関する通則


(放送番組編集の自由)
第三条  放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条  放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

(訂正放送等)
第九条  放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。
2  放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様とする。
3  前二項の規定は、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による損害賠償の請求を妨げるものではない。

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