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「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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閣議決定最終案の全文

2014-07-01 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと
 http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf
 
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http://www.jiji.com/jc/zc?k=201406%2F2014062701030

政府が27日に与党に示した集団的自衛権の行使を容認する閣議決定最終案の全文は次の通り。

 【冒頭部分】わが国は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持しつつ、安定して豊かな国民生活を築いてきた。また、わが国は、平和国家としての立場から、国際連合憲章を順守しながら、国際社会や国際連合を始めとする国際機関と連携し、それらの活動に積極的に寄与している。このわが国の平和国家としての歩みをより確固たるものにしなければならない。
 一方、わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続け、わが国が複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している。国際連合憲章が理想として掲げたいわゆる正規の「国連軍」は実現のめどが立っていないことに加え、冷戦終結後の四半世紀だけをとっても、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発・拡散、国際テロなどの脅威により、アジア太平洋地域において問題・緊張が生み出されるとともに、脅威が世界のどの地域において発生しても、わが国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている。さらに、近年では、海洋、宇宙空間、サイバー空間に対する自由なアクセスおよびその活用を妨げるリスクが拡散・深刻化している。もはや、どの国も一国のみで平和を守ることはできず、国際社会もわが国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待している。
 政府の最も重要な責務は、わが国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の命を守ることである。わが国を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、政府としての責務を果たすためには、まず、十分な体制をもって力強い外交を推進することにより、安定しかつ見通しがつきやすい国際環境を創出し、脅威の出現を未然に防ぐとともに、国際法にのっとって行動し、法の支配を重視することにより、紛争の平和的な解決を図らなければならない。
 さらに、わが国自身の防衛力の強化を図るとともに、同盟国である米国や友好国と連携し、相互に支援することによって抑止力を高めることが重要である。特に、わが国の安全およびアジア太平洋地域の平和と安定のために、日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、わが国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。その上で、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためには、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備しなければならない。
 今般、与党協議の結果に基づき、政府として、以下の方向性に従って、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な国内法制を速やかに整備することとする。

 【1、武力攻撃に至らない侵害への対処】
 わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることを考慮すれば、純然たる平時でも有事でもない事態が生じやすく、これによりさらに重大な事態が生じかねないリスクを有している
 武力攻撃に至らない侵害において、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための態勢を整備することが一層重要な課題となっている。
 さまざまな不法行為に対処するため、警察・海上保安庁等の関係機関が、それぞれの任務と権限に応じて緊密に協力して対応するとの基本方針の下、おのおのの対応能力を向上させ、連携を強化するなど各般の分野における必要な取り組みを一層強化することとする。
 離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、近傍に警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合に、手続きを経ている間に被害が拡大することがないよう、早期の下令や手続きの迅速化のための方策について具体的に検討することとする。
 自衛隊と米軍が連携して切れ目のない対応をできるよう、自衛隊法第95条による武器等防護のための「武器の使用」の考え方を参考にしつつ、自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動(共同訓練を含む)に現に従事している米軍部隊の武器等であれば、米国の要請または同意があることを前提に、自衛隊法第95条によるものと同様の極めて受動的かつ限定的な必要最小限の「武器の使用」を行うことができるよう法整備をすることとする。

 【2、国際社会の平和と安定への一層の貢献】
 (1)いわゆる後方支援と「武力の行使との一体化」
 いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は、「武力の行使」に当たらない活動である。例えば、国際の平和および安全が脅かされ、国際社会が国際連合安全保障理事会決議に基づいて一致団結して対応するようなときに、わが国が当該決議に基づき正当な「武力の行使」を行う他国軍隊に対してこうした支援活動を行うことが必要な場合がある。
 わが国による支援活動については、他国の「武力の行使と一体化」することにより、憲法の下で認められない「武力の行使」を行ったとの法的評価を受けることがないよう、活動の地域を「後方地域」や「非戦闘地域」に限定する等の法律上の枠組みを設定してきた。
 安全保障環境がさらに大きく変化する中で、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために、自衛隊が幅広い支援活動で十分に役割を果たすことができるようにすることが必要である。
 政府としては、「武力の行使との一体化」についての議論の積み重ねを踏まえつつ、こうした枠組みではなく、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所で実施する補給、輸送等のわが国の支援活動については、当該他国の「武力の行使と一体化」するものではないとの認識の下、以下の考え方を基本として、わが国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国軍隊に対して必要な支援活動を実施できるよう法整備を進める。
 (1)わが国の支援対象となる他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しない(2)仮に、状況変化により支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止・中断する。
 (2)国際的な平和協力活動に伴う武器使用
 わが国は、これまで必要な法整備を行い、過去20年以上にわたり、国際的な平和協力活動を実施してきたが、「駆け付け警護」に伴う武器使用や「任務遂行のための武器使用」については、これを「国家または国家に準ずる組織」に対して行った場合には、憲法第9条が禁ずる「武力の行使」に該当するおそれがあることから、自衛官の武器使用権限はいわゆる自己保存型と武器等防護に限定してきた。
 「国家または国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、PKO等の「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動における「駆け付け警護」に伴う武器使用および「任務遂行のための武器使用」のほか、領域国の同意に基づく邦人救出等の「武力の行使」を伴わない警察的な活動ができるよう、以下の考え方を基本として、法整備を進める。
 (1)PKO等では、PKO参加5原則の枠組みの下で、「当該活動が行われる地域の属する国の同意」および「紛争当事者の当該活動が行われることについての同意」が必要とされており、受け入れ同意をしている紛争当事者以外の「国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場することは基本的にないと考えられる。住民保護等の治安の維持を任務とする場合には、特に、その任務の性格上、紛争当事者の受け入れ同意が安定的に維持されていることが必要である(2)自衛隊の部隊が、領域国政府の同意に基づき、当該領域国における邦人救出等の「武力の行使」を伴わない警察的な活動を行う場合、領域国政府の同意が及ぶ範囲、すなわち、その領域において権力が維持されている範囲で活動することは、その範囲においては「国家に準ずる組織」は存在しないことを意味する(3)受け入れ同意が安定的に維持されているかや領域国政府の同意が及ぶ範囲等については、国家安全保障会議での審議等に基づき、内閣として判断する(4)なお、これらの活動における武器使用については、警察比例の原則に類似した厳格な比例原則が働くという内在的制約がある。

 【3、憲法第9条の下で許容される自衛の措置】
 (1)いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、これまでの憲法解釈のままでは必ずしも十分な対応ができないおそれがあることから、いかなる解釈が適切か検討してきた。その際、政府の憲法解釈には論理的整合性と法的安定性が求められる。従って、従来の政府見解における憲法第9条の解釈の基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための論理的な帰結を導く必要がある。
 (2)憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や第13条が「生命、自由および幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されない。一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置としてはじめて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。
 これが、憲法第9条の下で例外的に許容される「武力の行使」について、従来、政府が一貫して表明してきた見解の根幹、いわば基本的な論理であり、昭和47年10月14日に参院決算委員会に対し政府から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」に明確に示されているところである。
 この基本的な論理は、憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない。
 (3)これまで政府は、この基本的な論理の下、「武力の行使」が許容されるのは、わが国に対する武力攻撃が発生した場合に限られると考えてきた。しかし、冒頭で述べたように、パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器等の脅威等により、わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的・規模・態様等によっては、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。わが国としては、紛争が生じた場合にはこれを平和的に解決するために最大限の外交努力を尽くすとともに、これまでの憲法解釈に基づいて整備されてきた既存の国内法令による対応や当該憲法解釈の枠内で可能な法整備等あらゆる必要な対応をとることは当然であるが、それでもなおわが国の存立を全うし、国民を守るために万全を期す必要がある。
 こうした問題意識の下に、現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。
 (4)わが国による「武力の行使」が国際法を順守して行われることは当然であるが、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが、憲法上は、あくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るためのやむを得ない自衛の措置としてはじめて許容されるものである。
 (5)また、憲法上「武力の行使」が許容されるとしても、それが国民の命と平和な暮らしを守るためのものである以上、民主的統制の確保が求められることは当然である。政府としては、わが国ではなく他国に対して武力攻撃が発生した場合に、憲法上許容される「武力の行使」を行うために自衛隊に出動を命ずるに際しては、現行法令に規定する防衛出動に関する手続きと同様、原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記することとする。

 【4、今後の国内法整備の進め方】
 これらの活動を自衛隊が実施するに当たっては、国家安全保障会議における審議等に基づき、内閣として決定を行うこととする。こうした手続きを含め、実際の自衛隊による活動の実施には根拠となる国内法が必要となる。
 あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法案の作成作業を開始することとし、十分な検討を行い、準備ができ次第、国会に提出し、ご審議をいただく。(2014/06/27-21:40)
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憲法学の理念を知らない一部政治家がなそうとする今回の閣議決定の誤り2:内容の違憲

2014-07-01 11:30:36 | 国政レベルでなすべきこと

 憲法学の理念を知らない一部政治家がなそうとする今回の閣議決定の誤り2:内容の違憲


 憲法学上、憲法9条から、集団的自衛権を解釈することは、できません。
 もし、閣議決定されるというなら、その閣議決定の内容自体に誤りがあります。
 解釈できたかのように閣議決定しますが、その内容は、現行憲法に反している以上、誤った閣議決定に基づく法律改正がなされた場合、その法律は、違憲な法律、すなわち法令違憲となります。

 最高裁は、法令違憲を出しますので、結局、その法律はできません。


***********日本国憲法********************************
  第二章 戦争の放棄

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
*******************************************

 自分が書いた憲法9条解説ブログ:http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/98ebbc20603d093623644c64acb5b933




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統治行為は「政治過程が正常に機能するが前提」、前提崩れた以上、最高裁も憲法解釈変更に待ったを!

2014-07-01 10:01:45 | 国政レベルでなすべきこと

自衛隊、安保など統治行為として、最高裁は、憲法判断を避けて来ましたが、「政治過程が、正常に機能するという前提」がありました。

今、その「前提」が崩れた以上、最高裁も、当然に、歯止めとなるべく立ち上がるべきとき。


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現政権の愚行:集団的自衛権行使を容認する新たな憲法解釈の閣議決定

2014-06-30 15:55:51 | 国政レベルでなすべきこと

 平和主義の日本を、一部政治屋により、壊されることが、とても残念でなりません。

 憲法を逸脱した手続きにより、無理やり現行憲法でとりえない解釈をする政権。

 日本が進むべき方向性は、教育を進行し、科学技術を発展させ、それら輸出し世界に貢献するとともに、その技術力による世界の信頼のもと、平和主義を広げていくことです。武器に手をだして、世界の信頼は得られません。

 
 日本の行く先を憂い、焼身自殺を図ろうとしたひとさえ、出ています。

 
 安倍晋三政権に申し上げます。

 「集団的自衛権行使を限定的に容認する新たな憲法解釈の閣議決定」は、絶対にやめて下さい。

 仮にそのような閣議決定をしたからといっても、必ずや、真の政権交代をし、民意のちからで、撤回をさせます。

 


******************読売新聞*****************************
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140630-OYT1T50075.html
集団自衛権、1日閣議決定の意向…菅長官


2014年06月30日 13時49分

 菅官房長官は30日午前の記者会見で、集団的自衛権行使を限定的に容認する新たな憲法解釈の閣議決定について、「最終的に与党間で調整できれば、明日行いたい」と述べ、7月1日に行う意向を明らかにした。

 一方、公明党は30日午後、外交安全保障・憲法両調査会合同会議を国会内で開き、行使を容認する方向で意見集約する。閣議決定に盛り込まれる武力行使の「歯止め」が厳格で、容認できると判断した。

 公明党幹部は30日午前、「意見が出尽くすまで議論することになるが、理解は広がっているから、賛同を得られるのではないか」と語り、党内意見のとりまとめに自信を示した。28日の地方議員を集めた意見交換会では、山口代表が「憲法9条の規範は全く変わるものではない」と語り、憲法解釈見直しに理解を求めた。山口氏は30日の党内会合でも、集団的自衛権の行使が限定的であることを改めて説明するとみられる。



*********朝日新聞**************
http://www.asahi.com/articles/ASG6Y55DBG6YUTIL01T.html
新宿駅前で男性が焼身自殺図る? 集団的自衛権で抗議か

2014年6月29日20時39分


 29日午後2時すぎ、東京都新宿区西新宿1丁目のJR新宿駅南口付近の歩道橋上で、男性がガソリンとみられる液体をかぶり、ライターで火をつけた。男性は病院に運ばれたが、顔や手足にやけどを負う重傷。直前に集団的自衛権の行使容認などに反対する演説をしていたという。

 新宿署によると、男性は60歳くらいで背広姿。ガソリンとみられる液体の入ったペットボトル2本と拡声機などを持って、地上約10メートルの歩道橋の屋根部分によじ登り、午後1時ごろに演説を始めたという。火は消防の救急隊員らによって消し止められた。

 現場はデパートや飲食店が密集する繁華街で、一時は300人近い人が集まって騒然としたという。


*********毎日新聞**************
http://mainichi.jp/select/news/20140629k0000m010091000c.html

<毎日世論調査>「戦争に巻き込まれる恐れ」71%

毎日新聞 6月29日(日)9時30分配信




 毎日新聞が27、28両日に実施した全国世論調査で、日本が集団的自衛権を行使できるようにした場合、他国の戦争に巻き込まれる恐れがあると思うか聞いたところ、「思う」が71%で、「思わない」の19%を大きく上回った。政府は行使を限定すると説明しているが、範囲が拡大して戦争につながることへの危機感が強いことがうかがえる。【仙石恭】


 集団的自衛権の賛否は前回の5月調査では反対が54%で賛成が39%。政府は7月1日にも行使を容認する閣議決定を行う方針だが、時期が近づくにつれ反対が増え、賛成が減っている。

 政府は集団的自衛権の行使の範囲を「限定的」だと主張している。これについて考え方を尋ねたところ、「そもそも行使すべきではない」が43%で最も多く、「限定した内容にとどめるべきだ」が41%だった。「全面的に行使すべきだ」は7%にとどまった。

 行使に賛成の人のうちでも「限定にとどめるべきだ」と答えた人が74%に上り、「全面的」は20%だった。一方で、行使に反対の人のうち24%の人が「限定にとどめるべきだ」と答え、「そもそも行使すべきではない」とした人は72%だった。

 政府は「限定的」とするが、国連の集団安全保障に基づく武力行使への参加など実際には武力行使の範囲は拡大する。日本が直接攻撃を受けていない段階で武力行使に踏み切れば、相互の武力行使のエスカレートにつながる危険もある。行使に賛成の人の中でも、限定すべきだという意見が多数を占めるのは、戦争への歯止めが利かなくなることへの懸念が強いことが背景にあるとみられる。

 政府・与党の主張する限定の内容が歯止めとなりうるかが問われるが、政府・与党の説明が「不十分だ」とする人は内閣支持層でも71%に上った。集団的自衛権行使に賛成の人のなかでも67%が「不十分だ」と答えた。

 また、集団的自衛権の行使容認を憲法改正ではなく、憲法解釈の変更で対応しようとしていることについては反対が60%、賛成が27%だった。行使に賛成の人のうちでも28%が解釈変更の手法には反対だった。解釈変更という手法に依然抵抗が強いことがうかがえる。【村尾哲】

以上

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戦後最大の危機。憲法学の理念さえ知らない首相・政権による、民意を無視した集団的自衛権容認

2014-06-29 12:41:15 | 国政レベルでなすべきこと
 戦後最大の危機だと思います。

 人災であるところの福島第一原発事故が最大の危機といままで思っていましたが、それを上回る危機が、来ました。

 心から残念でなりません。悔しいです。
 今までの、先人の努力はなんだったのでしょうか。


 早々に、真の政権交代をなしとげ、閣議決定(もし本当になされるのであれば)の撤回を目指しましょう。

 

 

***********************************************************
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014062990070852.html

地方190議会批判 集団的自衛権 広がる「反対」「慎重に」

2014年6月29日 07時08分



 安倍政権が目指す集団的自衛権行使容認の閣議決定に対し、地方議会で反対、慎重な対応を求める意見書を可決する動きが急速に広がっている。本紙の調べで、今月だけで少なくとも百二十超の議会に上り、これまでに可決済みは百九十(二十八日時点)となった。自民党会派の賛同も目立つ。閣議決定を急ぐ政府と、それを懸念する地方の溝はさらに広がった。 (関口克己)

 本紙の三月末時点での集計では、同様の意見書は約六十あった。だが、安倍晋三首相が五月十五日、行使容認を検討する意向を記者会見で表明すると、それに抗議する形で議決の動きが勢いを増した。

 都道府県レベルでは長野、岐阜両県議会がいずれも六月に慎重審議を求める意見書を可決。市町村議会では三十二都道府県の百八十八に増えた。最多は長野県で、県議会のほか四十五市町村となった。自民党県連が県内市町村に意見書提出要請をした岐阜県は、九市町村となっている。

 逆に、全国千七百八十八の自治体で政府方針を支持する意見書は一つもない。

 東日本大震災で被災した福島県南相馬市議会は十九日、自民系会派を含め全会一致で容認反対を議決。「震災と原子力災害で助けられた自衛隊員が海外に出て武力を行使することは容認できない」と訴えた。

 二十五日には、自民党の石破茂幹事長のお膝元となる鳥取県境港市議会も、行使容認反対の意見書を可決した。自民党の高村正彦副総裁は二十七日、相次ぐ意見書可決に「地方議会も日本人であれば、慎重に勉強してほしい」と反論したが、与党は協議開始から一カ月余りで結論を出そうとしている。

(東京新聞)


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http://www.asahi.com/articles/ASG6W5JDRG6WUTFK008.html

下村文科相「9条は無責任」 著書で批判、胃切除も告白

2014年6月27日18時00分


 下村博文・文部科学相が今月、著書を出版した。胃がんの宣告を受けていたことを初めて明らかにする一方、安倍晋三首相に近い保守派として、現憲法のあり方を厳しく批判している。

 著書「9歳で突然父を亡くし 新聞配達少年から文科大臣に」(海竜社)によると、第1次安倍政権で官房副長官を務めていた2007年に胃がんを宣告されたが、首相や秘書にも知らせないまま、胃の切除手術を受けた。また、第2次安倍政権で初入閣した際、当初安倍晋三首相から環境相を打診されたが断り続け、首相の4度目の提示で念願だった文科相ポストを勝ち取ったとも明かした。

 憲法については、特にその成立過程を「日本国の主権がなかった時代に無理やり押しつけられた」と断じ、9条2項を「極めて無責任で非現実的な条文」と批判している。


******毎日新聞*******
http://mainichi.jp/opinion/news/20140628k0000m070118000c.html

社説:閣議決定案 9条改憲にほかならぬ

毎日新聞 2014年06月28日 02時31分


 政府は与党協議で、集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定の最終案を示した。公明党は受け入れる方向で、与党の正式合意を経て、7月1日に閣議決定される見通しだ。

 政府は憲法解釈変更について「解釈の再整理、一部変更」としている。だが内容は、解釈を抜本的に変更することによって憲法9条を改正するに等しい。政府に許される解釈の範囲を逸脱した解釈改憲だ。

 閣議決定案は、「我が国と密接な関係にある他国」への武力攻撃が発生し、国民の権利が根底から覆される「明白な危険」がある場合に、集団的自衛権の行使を認めている。

 他に適当な手段がないことや、必要最小限度の実力行使にとどまることと合わせて、新たに定めた「自衛の措置としての武力行使の3要件」が閣議決定案の中核だ。

 「密接な関係」や「明白な危険」という基準はあいまいだ。時の政権の判断次第で拡大解釈され、歯止めがきかなくなる恐れがある。

 政府が閣議決定について国会などで説明するため作成した想定問答集は、そうした懸念を裏付ける。

 例えば、どういう場合に集団的自衛権を行使できるのかについて、想定問答は、時の内閣が新3要件に該当するか否かなどを客観的、合理的、総合的に判断するとしている。

 与党協議で議論された機雷掃海などの8事例は、新3要件を満たせば集団的自衛権を行使できるとしている。国連の集団安全保障で武力行使を認めるか否かも、新3要件を満たせば許容されるとしている。

 いずれも協議では、公明党が反対し、答えが出なかった問題だ。結論ありきだったと言わざるを得ない。

 また閣議決定案は、集団的自衛権の行使容認について、国際法上の根拠と憲法解釈を区別している。国際法上は集団的自衛権でも、憲法解釈上は個別・集団を明確にせず「自衛の措置」とした。公明党への配慮だが、極めてわかりにくい。

 憲法解釈変更の根拠は、1972年の政府見解だ。見解の一部をつまみ食いして、集団的自衛権の行使についての結論だけを「許されない」から「許される」に逆転させた。政府の想定問答は「見解の基本的論理の枠内で導いた論理的帰結。解釈改憲ではない」としている。

 強引な理屈でも、いったん閣議決定してしまえば、あとはあいまいな基準のもと時の政権の判断次第で何でもできる。政府のそんな狙いが透けて見えるようだ。憲法と国民をあまりに軽んじている。
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憲法学の理念を知らない一部政治家がなそうとする今回の閣議決定の誤り1:手続きの違憲

2014-06-25 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと

 憲法学の理念を知らない一部政治家がなそうとする今回の閣議決定の誤り1:手続きの違憲


 選挙に選ばれたからと言って、何をやってもよいわけではありません。
 閣議決定で、何でも決定できる???
 大間違いです。

 今回の閣議決定は、憲法解釈に踏み込むわけですから、適正な手続きのうえでなされる必要があります。
 本質的な内容の変更ですから、憲法改正手続きしか、とりえません




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民主主義に反するもの。政治では、独裁。経済では、独占。

2014-06-12 01:14:23 | 国政レベルでなすべきこと
 日本国が、真に民主主義の国になるためには、
 政治と経済の民主化が必要です。

 経済法を学び、強く感じることです。

 民主主義に反するもの。政治では、独裁。経済では、独占。
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専門職がなす営利的広告は、どこまで許されるのか?

2014-06-11 17:46:22 | 国政レベルでなすべきこと
 専門職が行う広告はどこまで許されるか。

 以下、先駆的な判例です。
 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法七条の事件です。

 賛否両論あります。

***********最高裁ホームページ****************************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120022963374.pdf

         主    文
    本件上告を棄却する。
    当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

         理    由

 被告人の上告趣意について。
 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法七条は、あん摩、はり、きゆう等
の業務又は施術所に関し、いかなる方法によるを問わず、同条一項各号に列挙する
事項以外の事項について広告することを禁止し、同項により広告することができる
事項についても、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはなら
ないものとしている。そして本件につき原審の適法に認定した事実は、被告人はき
ゆう業を営む者であるところその業に関しきゆうの適応症であるとした神経痛、リ
ヨウマチ、血の道、胃腸病等の病名を記載したビラ約七〇三〇枚を判示各所に配布
したというのであつて、その記載内容が前記列挙事項に当らないことは明らかであ
るから、右にいわゆる適応症の記載が被告人の技能を広告したものと認められるか
どうか、またきゆうが実際に右病気に効果があるかどうかに拘らず、被告人の右所
為は、同条に違反するものといわなければならない。
 論旨は、本件広告はきゆうの適応症を一般に知らしめようとしたものに過ぎない
のであつて、何ら公共の福祉に反するところはないから、同条がこのような広告ま
でも禁止する趣旨であるとすれば、同条は憲法一一条ないし一三条、一九条、二一
条に違反し無効であると主張する。しかし本法があん摩、はり、きゆう等の業務又
は施術所に関し前記のような制限を設け、いわゆる適応症の広告をも許さないゆえ
んのものは、もしこれを無制限に許容するときは、患者を吸引しようとするためや
やもすれば虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞があり、その結果適時適切な医療
を受ける機会を失わせるような結果を招来することをおそれたためであつて、この
- 1 -
ような弊害を未然に防止するため一定事項以外の広告を禁止することは、国民の保
健衛生上の見地から、公共の福祉を維持するためやむをえない措置として是認され
なければならない。されば同条は憲法二一条に違反せず、同条違反の論旨は理由が
ない。
 なお右のような広告の制限をしても、これがため思想及び良心の自由を害するも
のではないし、また右広告の制限が公共の福祉のために設けられたものであること
は前示説明のとおりであるから、右規定は憲法一一条ないし一三条及び一九条にも
違反せず、この点に関する論旨も理由がない。
 よつて刑訴四一四条、三九六条、一八一条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官垂水克己、同河村大助の補足意見、裁判官斎藤悠輔、同藤田
八郎、同河村又介、同奥野健一の少数意見があるほか裁判官全員一致の意見による
ものである
 裁判官垂水克己の補足意見は次のとおりである。
 心(意思)の表現が必ずしもすべて憲法二一条にいう「表現」には当らない。財
産上の契約をすること、その契約の誘引としての広告をすることの如きはそれであ
る。アメリカては憲法上思想表現の自由、精神的活動の自由と解しこれを強く保障
するが、経済的活動の自由はこの保障の外にあるものとされ、これと同じには考え
られていないようである。
 本法に定めるきゆう師等の業務は一般に有償で行われるのでその限りにおいてそ
の業務のためにする広告は一の経済的活動であり、財産獲得の手段であるから、き
ゆう局的には憲法上財産権の制限に関連する強い法律的制限を受けることを免れな
い性質のものである。この業務(医師、殊に弁護士の業務も)は往々継続的無料奉
仕として行われることも考えられる。しかし、それにしても専門的知識経験あるこ
とが保障されていない無資格者がこれを業として行うことは多数人の身体に手を下
- 2 -
しその生命、健康に直接影響を与える仕事であるだけに(弁護士は人の権利、自由、
人権に関する大切な仕事をする)公共の福祉のため危険であり、その業務に関する
広告によつて依頼者を惹きつけるのでなく「桃李もの言わねども下おのづから蹊を
なす」ように、無言の実力によつて公正な自由競争をするようにするために、法律
で、これらの業務を行う者に対しその業務上の広告の内容、方法を適正に制限する
ことは、経済的活動の自由、少くとも職業の自由の制限としてかなり大幅に憲法上
許されるところであり、本法七条にいう広告の制限もかような制限に当るのである。
そのいずれの項目も憲法二一条の「表現の自由」の制限に当るとは考えられない。
 とはいえ、本法七条広告の制限は余りにも苛酷ではなかろうか、一般のきゆう師
等の適応症を広告すること位は差支ないではないか、外科医に行かず近所の柔道整
復師で間に合うことなら整復師に頼みたいと思う人には整復師の扱う適応症が広告
されていた方がよいのではないか、といつたような疑問は起こる。また、本法七条
が適応症の広告を禁止した法意は、きゆう師等が(善意でも)適応症の範囲を無暗
に拡大して広告し、広告多ければ患者多く集まるという、不公正な方法で同業者ま
たは医師と競争し、また、重態の患者に厳密な医学的診断も経ないで無効もしくは
危険な治療方法を施すようなことを防止し、医師による早期診断早期治療を促進し
ようとするにあるようにも思える。とすれば憲法三一条に違反する背理な刑罰法規
ともいえないのではないか。
 とに角、本法七条広告の禁止は憲広二一条に違反しない。むしろ同条の問題では
ない。だから、この禁止条項が適当か否かは国会の権限に属する立法政策の問題で
あろう。
 裁判官河村大助の補足意見は次のとおりである。
 原判決の確定した事実関係の要旨は、被告人はきゆう業を営むものであるところ、
きゆうの適応症であるとした神経痛、リヨウマチ、血の道、胃腸病等の病名を記載
- 3 -
したビラ約七〇三〇枚を配付し以て法定の事項以外の事項について広告したという
のである。
 そこで右認定の証拠となつた押収の広告ビラ(特に証二、五号)を見るに(一)
a町のA灸と題し、施術所の名称、施術時間等あん摩師、はり師、きゆう師及び柔
道整復師法(以下単に法と略称する)第七条一項において許された広告事項の記載
が存するの外(二)きゆうの適応症として数多くの疾病が記載され更にその説明が
附記されている。例えば「灸の効くわけ」として、「○熱いシゲキは神経に強い反
応を起し、体の内臓や神経作用が、興奮する○血のめぐりが良くなり、血中のバイ
菌や病の毒を消すメンエキが増へる○それ故体が軽く、気持が良くなりよく寝られ
る、腹がへる等は灸をした人の知る所である◎(注射や服薬で効かぬ人は灸をする
と良い)」「人体に灸ツボ六百以上あり、病によつてツボが皆違ふ故ツボに、すえ
なければ効果はない」等の説明が附記されている。しかして右のようにきゆう業者
の広告に適応症としての病名やその効能の説明が(一)の許された広告事項に併記
された場合には、その広告は法第七条二項の「施術者の技能」に関する事項にわた
り広告したものということができる。蓋しきゆうは何人が施術するも同様の効果を
挙げ得るものではなく、それぞれの疾病に適合したツボにすえることによつて効果
があるものであるから、施術者又は施術所ときゆうの適応症を広告することは、そ
の施術者の技能を広告することになるものと解し得るからである。されば本件広告
は法第七条二項に違反するものというべく、この点の原判示はやや簡略に過ぎる嫌
いはあるが、要するに本件ビラの内容には適応症及びその説明の記載があつて施術
者の技能に関する事項にわたる広告をした事実を認定した趣旨と解し得られるから、
同法七条違反に問擬した原判決は結局相当である。
 広告の自由が憲法二一条の表現の自由に含まれるものとすれば、昭和二六年法律
第一一六号による改正に当り法第七条一項において一定事項以外の広告を原則的に
- 4 -
禁止するような立法形式をとつたことについては論議の余地があろう。しかし、同
条二項は旧法第七条の規定の趣旨をそのまま踏襲したものであつて、即ち施術者の
技能、施術方法又は経歴に関する事項は、患者吸引の目的でなす、きゆう業広告の
眼目であることに着眼し、これを禁止したものと見られるから、第一項の立法形式
の当否にかかわりなく、独立した禁止規定として、その存在価値を有するものであ
る。そこで本件被告人の所為が既述の如く右第二項の施術者の技能に関する広告に
該当するものである以上本件においては、右第二項の禁止規定が表現の自由の合理
的制限に当るかどうかを判断すれば足りるものと考えられる。ところで右第二項の
立法趣旨は、技能、施術方法又は経歴に関する広告が患者を吸引するために、やや
もすれば誇大虚偽に流れやすく、そのために一般大衆を惑わさせる弊害を生ずる虞
れがあるから、これを禁止することにしたものと解せられる。されば右第二項の禁
止規定は広告の自由に対し公共の福祉のためにする必要止むを得ない合理的制限と
いうことができるから、憲法二一条に違反するものではない。その他右規定が憲法
一一条ないし一三条、一九条に違反するとの論旨も理由がない。
 裁判官斎藤悠輔の少数意見は、次のとおりである。
 わたくしは、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法七条の立法趣旨は、
多数説と同じく、「もし広告を無制限に許容するときは、患者を吸引しようとする
ためややもすれば虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞があり、その結果適時適切
な医療を受ける機会を失わせるような結果を招来することをおそれたためである」
と解する。従つて、広告が同条違反であるとするには、ただ形式的に同条一項各号
に列挙する事項以外の事項について広告したというだけでは足りず、さらに、現実
に前記のごとき結果を招来する虞のある程度の虚偽、誇大であることを要するもの
といわなければならない。すなわち薬事法三四条とほぼ同趣旨に解するのである。
 しかるに、原判決の確定したところによれば、本件広告は、きゆうの適応症であ
- 5 -
るとした神経痛、リヨウマチ、血の道、胃腸病等の病名を記載したというだけであ
つて、虚偽、誇大であることは何等認定されていないのである。そして、きゆうが
かかる疾病に適応する効能を有することは顕著な事実である。従つて、本件は、罪
とならないものと思う。
 多数説は、形式主義に失し、自ら掲げた立法趣旨に反し、いわば、風未だ楼に満
たないのに山雨すでに来れりとなすの類であつて、当裁判所大法廷が、さきに、「
あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法一二条、一四条が医業類似行為を業
とすることを禁止処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞のある業務所為に限局す
る趣旨と解しなければならない」旨判示した判例(昭和二九年(あ)二九九〇号同
三五年一月二七日大法廷判決判例集一四巻一号三三頁以下)の趣旨にも違反するも
のといわなければならない。もし、前記七条一項各号に列挙する事項以外の事項を
広告したものは、その内容の如何を問わず、すべて処罰する趣旨であると解するな
らば、奥野裁判官らの説くかごとく、同規定は憲法二一条に反し無効であるという
べきである。因に、前記七条と同形式の医療法六九条、七〇条の規定は、漢方医た
る標示を禁止するもののごとくであるが(大塚敬節著東洋医学とともに一一六頁以
下参照)、もし然りとすれば、かかる規定もまた憲法二一条違反と解すべきである。
 裁判官藤田八郎の少数意見は次のとおりである。
 「あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法」七条は、
 あん摩業、はり業、きゆう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関しては、
何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告
をしてはならない。
一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二 第一条に規定する業務の種類
三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
- 6 -
四 施術日又は施術時間
五 その他厚生大臣が指定する事項
 前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、
施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。と規定して
いる。
 同条が、広告の内容が施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたるこ
とを禁止していることは、合理的な理由なしとしないであろう。しかし、単なるき
ゆうの一般的な適応症の広告のごときは、それが虚偽誇大にわたらないかぎり、こ
れを禁止すべき合理的な理由のないことは奥野裁判官の少数意見の説くとおりであ
る。されば同法同条も、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたらな
いかぎり、単なる一般的な適応症の広告はこれを禁じていないものと解すべきであ
る。若し、多数意見のごとく同条は同条所定以外一切の事項の広告を禁ずるものと
解するならば、同条は憲法の保障する表現の自由をおかすものとならざるを得ない
ことまた奧野裁判官の説くとおりである。
 しかるに、本件の起訴にかかる事実、また本件第一審判決の認定する事実は「き
ゆうの適応症であるとした神経痛、リヨウマチ、血の道、胃腸病等の病名を記載し
たビラ」「を配布し」たというのであつて、かかるきゆうの一般的な適応症の記載
のごときは本法七条の禁止するところでないと解すべく、従つて本件公訴事実は同
条違反の犯罪事実を構成しないものであつて、本件に関するかぎり、同法七条の合
憲なりや違憲なりやを論ずるの要はないものというべきである。本件の処理として
は、第一審判決を破棄して無罪の言渡をすべきであると思う。
 裁判官奥野健一の少数意見は次のとおりである。
 広告が憲法二一条の表現の自由の保障の範囲に属するか否かは多少の議論の存す
るところであるが、同条は思想、良心の表現の外事実の報道その他一切の表現の自
- 7 -
由を保障しているのであつて、広告の如きもこれに包含されるものと解するを相当
とする。広告が商業活動の性格を有するからといつて同条の表現の自由の保障の外
にあるものということができない。しかし、表現の自由といえども絶対無制限のも
のではなく、その濫用は許されず、また公共の福祉のため制限を受けることは他の
憲法の保障する基本的人権と変らない。従つて、広告がその内容において虚偽、誇
大にわたる場合又は形式、方法において公共の福祉に反する場合は禁止、制限を受
けることは当然のことである。
 あん摩師、はり師、きゆり師及び柔道整復師法七条は、きゆう業を営む者はその
業に関しきゆう等の適応症について一切広告することを禁止している。すなわち、
虚偽、誇大にわたる広告のみならず適応症に関する真実、正当な広告までも一切禁
止しているのであつて、これに反する者を刑罰に処することにしているのである。
 (明文上同条が正当な適応症の広告は禁止していないと解することは到底できな
い。)そもそも、本法はきゆう等の施術を医業類似の行為として一定の資格を有す
る者に対し免許によりこれを業とすることを許しているのである。すなわち、きゆ
う等の施術が何らかの病気の治療に効果のあることを認めて、その業務につき免許
制を採用しているのである。従つて、その施術が如何なる病気に効能があるか、真
実、正当に世間一般に告知することは当然のことであつて、かかる真実、正当な広
告まで全面的に禁止しなければならない保健、衛生上その他一般公共の福祉の観点
からもその理由を発見することができない。これは正に不当に表現の自由を制限し
ているものという外はない。
 多数意見は、「もしこれ(広告)を無制限に許容するときは、患者を吸引しよう
とするためややもすれば虚偽誇大に流れ、一般大衆を惑わす虞がある」というので
あるが、単に広告が虚偽誇大に流れる虞があるからといつて、真実、正当な広告ま
でも一切禁止することは行き過ぎである。成程、取締当局としては予め一切の広告
- 8 -
を禁止しておけば、虚偽、誇大にわたる広告も自然防止することができるであろう
が、かくては正当な広告の自由を奪うものであつて、取締当局の安易な措置によつ
て、正当な表現の自由を不当に制限するものである。これは恰も集団示威行進が時
として公安を害する危険性を包蔵するからといつて、公安を害する直接、明白な危
険もないのに、予め一切の集団行進を禁止するのと同様であつて、到底是認するこ
とができない。このことは人命、身体こきゆう等より重大な影響を持つ医薬品につ
いてさえ薬事法三四条が虚偽又は誇大な広告のみを禁止しているのと対比して考え
ても、きゆう等について特に医薬品と区別して正当な広告までも一切禁止しなけれ
ばならない合理的根拠を発見することができない。また、多数意見は「その結果適
時適切な医療を受ける機会を失わせるような結果を招来する」というのであるが、
若し然りとすれば、むしろ当初からきゆう等の施術の業務を禁止すべきであつて、
既に医業類似行為として病気治療上効果のあることを認めて、その業務を免許して
おきながら、その施術を受けると適時適切な医療を受ける機会を失わせるとの理由
で、正当な広告までも禁止することは、それ自体矛盾であるという外はない。
 なお、一切の適応症の広告が禁止されている法制を前提として、これを甘受して
自ら進んで免許を受けた者であるから、今更適応症の広告禁止の違憲を主張するこ
とは許されないのではないかという疑問もあるが、かかる憲法の保障する表現の自
由の制限を免許の条件とするが如きことは許されざるところであるから、かかる議
論も成り立たない。
 これを要するに、本法七条が真実、正当な適応症の広告までも一切禁止したこと
は不当に表現の自由を制限した違憲な条章であつて無効であると断ずるの外なく、
同条に則り被告人を処罰せんとする第一審判決は違憲であるから破棄を免れない。
 裁判官河村又介は、裁判官奥野健一の右少数意見に同調する。
 検察官清原邦一、同村上朝一公判出席
- 9 -
  昭和三六年二月一五日
     最高裁判所大法廷
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
 裁判長裁判官田中耕太郎、裁判官小谷勝重は退官、裁判官垂水克己は病気につき
署名押印することができない。
            裁判官    島           保
- 10 -
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新司法試験からの問題提起:「国際テロリズム対策法案」のどこに憲法学的な問題点があるか

2014-06-07 09:40:38 | 国政レベルでなすべきこと
 テロ行為は、決してゆるされないとしても、以下の法案は、許されるのか?

 新司法試験からの問題提起です。



**********新司法試験 憲法 プレテスト**********************************
[公法系科目]
〔第1問〕(配点:100)

Xは,A党に属する衆議院議員であるが,200X年の総選挙において,国際的にテロ対策を進
めることが課題となってきていること(資料1)を踏まえて,我が国においても国際テロ対策を強
力に推進することを選挙公約にうたって(資料2)再び当選した。その後,Xは,他のA党の議員
とともに,国際テロリズム対策法案を衆議院に提出する準備を進め,同法案の要綱(資料3)を策
定した上で,衆議院法制局に対して,それを示し,憲法に違反するものでないか相談をした。

この事例について以下の問いに答えなさい。


1.国際テロリズム対策法案について,要綱の第1から第7のどの項目にどのような憲法上の問題
点が考えられるかを箇条書きにして挙げなさい。

2.要綱の項目のうち,憲法違反となる疑いがもっとも強いと考えるものについて論じなさい。そ
の上で,その違憲の疑いを軽減させる方策について検討しなさい。


資料1 テロリズムに対するG8首脳声明
平成13年9月19日

 我々G8首脳は,9月11日にアメリカ合衆国に対して行われたテロリズムという野蛮な行為を
限りなく強く非難する。我々の哀悼の意はアメリカの国境内のみに留まらない。なぜならニューヨ
ークとワシントンは多くの国の国民が住んでいる国際都市だからである。犯人,そして如何なる手
段であっても犯人をかくまったり,援助や支援を差し延べたりしたすべての者は,無実の人々と国
際社会の中心的な価値や利益に対して攻撃を仕掛けたのである。その行為は全ての人々,全ての信
仰,全ての国についての平和と繁栄と安全に対する深刻な脅威である。我々は,憎しみと恐怖を犯
す者により世界の諸国民や諸文化を分断させることは許さない。

 国連憲章は全加盟国に対して国際の平和及び安全を維持するための有効な措置を執るよう明確に
責任を課している。

 12件のテロ対策国連諸条約はテロリズムとの戦いに関する国際的な行動の規範を定めている。

 9月11日の野蛮な事件を受けて,我々はすべての国々にこれらの条約の可及的速やかな批准へ向
けての措置を執り,また,批准前であっても直ちにこれらの条約の内容を実施するよう強く要請す
る。

 我々は,我々の外務,財務,司法および必要に応じ他の関係各大臣に対し,対テロ協力強化のた
めの具体的措置に関するリストを作成するよう指示した。その中には,テロリストへの資金の流れ
を断ち切るための金融的措置及び制裁の行使の拡大,航空安全,武器輸出の管理,治安その他の当
局間の協力,テロに対する全ての支援の拒絶,そして,テロの脅威の特定と除去が含まれる。我々
は具体的な措置を特定し,それらを実施することによって,今回の非道な行為の犯人を法の下で裁
き,あらゆる形態のテロと戦い,更なるテロ攻撃を防止し,そしてこのグローバルな悪との戦いに
おける国際的な協力を強化するという決意を強調するものである。

 我々は,これらの努力において我々と協調する用意のある全ての者を歓迎し,また,我々もそう
した者を支援する。



資料2 Xの選挙公約
1 世界一安全な国家を作るため,テロ対策を推し進めます!
・国際的テロ組織は,米国の同盟国である我が国をテロの標的として名指ししています。
・国際刑事警察機構を通じて国際手配されていた国際テロ組織関係者が,他人名義の偽造旅
券を使用して我が国に不法に入国を繰り返していました。

今すぐ,国際テロリストの実態(潜伏的,無差別的)に合わせたテロ対策が
必要です。テロ行為を未然に防ぐには予防的措置が必要です。
四つの対策の提言
① テロリストに関する情報収集方策の強化
② テロリストを入国させない対策
③ テロリストを我が国で自由に活動させないための対策強化
④ テロ資金を封じるための対策強化
(以下略)





資料3 国際テロリズム対策法案(要綱)

第1 目的
この法律は,我が国において国際テロリズム活動を行う団体の活動を禁止するとともに,国
際テロリズム活動に対する必要な規制措置を定め,もって我が国を含む国際社会の平和及び安
全の確保に資することを目的とする。

第2 定義
この法律における用語の意義は,以下に定めるところによる。
① 「テロリスト犯罪」とは,我が国若しくは外国(条約等の国際的約束により設立された国
際機関を含む。)に作為若しくは不作為を強制し,又は,我が国若しくは外国の政策に影響を
及ぼすことを目的として,人の生命にとって危険な行為を行うことをいう。
② 「国際テロリズム活動」とは,2か国以上の国においてテロリスト犯罪を行う運動をいう。
③ 「特定国際テロリズム組織」とは,国際テロリズム活動を行う組織のうち,特に我が国に
おける公共の安全にとって脅威となるものであって,国家公安委員会によって指定されたも
のをいう。


第3 特定国際テロリズム組織の指定
1 警察庁長官は,国際テロリズム活動を行う組織が特に我が国における公共の安全にとって脅
威となると判断する場合には,国家公安委員会に対して,請求の内容・理由等を記載した指定
請求書を提出して,当該組織を「特定国際テロリズム組織」に指定するよう求めることができ
る。
2 警察庁長官による指定請求がなされた場合には,国家公安委員会は指定請求があった旨を官
報において公示しなければならない。当該指定請求に異議のある者は,国家公安委員会に対し
て,指定に反対する理由を記載した書面を提出することができる。
3 国家公安委員会は,審査にあたり必要である場合には,警察庁長官に対し,さらに説明を補
充するとともに資料を提出するよう求めることができる。
4 国家公安委員会は,当該組織が特に我が国における公共の安全にとって脅威となると判断す
る場合には,「特定国際テロリズム組織」の指定を行うものとする。この指定は,官報で公示さ
れなければならず,公示した時から効力を有する。


第4 「特定国際テロリズム組織」への参加の禁止
何人も「特定国際テロリズム組織」の構成員となるなど,「特定国際テロリズム組織」の活動
に加わってはならない。違反者は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。


第5 「特定国際テロリズム組織」のためにする行為の禁止
何人も「特定国際テロリズム組織」のためにするいかなる行為(「特定国際テロリズム組織」
への情報若しくは物的手段の提供,又は「特定国際テロリズム組織」の犯罪行為に寄与すると
知りながら資金を提供することを含む。)も行ってはならない。違反者は,1年以下の懲役又は
50万円以下の罰金に処する。


第6 捜索・押収
1 検察官,検察事務官又は司法警察職員は,「特定国際テロリズム組織」による犯罪行為が行わ
れようとしていると疑うに足りる充分な理由がある場合において,証拠を保全する緊急性があ
り,かつ,裁判官の令状を求めることができないときは,その理由を告げて当該場所に立ち入
り捜索し,証拠物を押収することができる。
2 検察官,検察事務官又は司法警察職員は,裁判官の令状なしに捜索し証拠物を押収した場合
には,直ちに,裁判官に対して,捜索をした場所,理由を記載した書面と押収した物の目録を
提出し,その許可を求めなければならない。裁判官が許可を与えなかった場合には,速やかに
押収物を還付しなければならず,押収物の複写物又は写真は破棄されねばならない。


第7 金融機関に対する質問等
検察官,検察事務官又は司法警察職員は,銀行等の金融機関に対して,「特定国際テロリズム
組織」による犯罪行為に関わりのあると信じることに相当の理由がある預金,振込等につき質
問し,記録の閲覧を求めることができる。金融機関の職員が質問に答えず若しくは偽りの答弁
をし,又は記録の閲覧を認めなかった場合には,当該職員は50万円以下の罰金に処する。




********法務省出題の趣旨*********
【公法系科目】
〔第1問〕
本問の「国際テロリズム対策法案(要綱)」には,刑罰法規の明確性の要件,国際テロリズム
活動規制と結社の自由及び表現の自由との関係,「特定国際テロリズム組織」の指定の際の適正
手続の保障,裁判官の令状を要しない捜索・押収の許容性,捜査機関の質問権限と自己負罪拒
否特権との関係等,様々な憲法上の問題があり得る。本問は,こうした架空の法案を素材とし
て,その背景を示す資料をも参照しながら,憲法上の問題を分析する力を問うとともに,違憲
の疑いを軽減させる方策を考察する能力をも問うものである。
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企業の違法を、企業内弁護士が、その阻止のため、外部に報告する行動を保護する法のありかた

2014-06-05 11:03:58 | 国政レベルでなすべきこと
 企業の違法を、企業内弁護士は、その阻止のため、外部に報告することは、守秘義務違反となるか。

 もし、その企業の違法が、ひとの生命身体に危害を加えるものであった場合に、当然、阻止することが、弁護士の役目である。
 その当然の弁護士の行動を、保護する『弁護士職務規定』となっているか。

 企業内弁護士は、薬害、事故などを未然に防ぐ重要な役割をになっていると考えます。
 そして、企業の社長、上層部と衝突してでも、その企業や企業が加害を加えることとなる消費者市民を守るために、敢然と企業の違法に立ち向かわねばならないこともあると考えます。
 

************日本の弁護士倫理の規定**************************
弁護士職務基本規定

(秘密の保持)
第二十三条弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏ら
し、又は利用してはならない。

第五章組織内弁護士における規律
(自由と独立)
第五十条官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これらを合わせて「組織」と
いう)において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となって。
いる弁護士(以下「組織内弁護士」という)は、弁護士の使命及び弁護士の本質であ。
る自由と独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。

(違法行為に対する措置)
第五十一条組織内弁護士は、その担当する職務に関し、その組織に属する者が業務上法
令に違反する行為を行い、又は行おうとしていることを知ったときは、その者、自らが
所属する部署の長又はその組織の長、取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対す
る説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとらなければならない。
***************************************

 米国の弁護士規定は、日本のものより、一歩進んでいます。

 特に1.13(c)の規定で、組織を守るため(例えば、企業がひとに危害を加えるような企業とならないため、事故を起こして企業が損害の責任を負ったり、企業のイメージが落ちることがないようにするため)、企業の違法に関する情報開示が許されています。


************米国の弁護士倫理の規定************************
ABAモデルルール
1.13 組織が依頼者である場合
(a)組織から雇用され又は委任された弁護士は、その正当に権限を付与された構成員を通じて活動する当該組織を代理する。

(b)組織のための弁護士は、業務執行者、従業員又は組織に属する他の者が、組織に対する法的義務違反又は合理的に組織に帰責される可能性のある法律違反で組織に重大な損害を及ぼすおそれのある代理行為に関連する行為に関与し、当該行為に関与する意図を有し、又は関与することを拒否することを知ったとき、組織の最善の利益のために合理的に必要な措置を講じなければならない。弁護士は、そのおうにすることが組織の最善の利益を図るこために必要でないと合理的に考えるのではない限り、組織内のより上級の機関に事案を付託しなければならない。
 これには状況により必要とされる場合には、準拠法の定めに従い、組織を代表して行為できる最上級機関に照会することを含む。

(c)(d)項に定める場合を除き、
(1)弁護士が(b)項に従って努力したにもかかわらず、組織を代表することができる最上級機関が明白な法律違反である行為若しくは行為の拒否を主張し、又は遅滞なく適切に対処することを怠り、
  かつ、
(2)弁護士が当該違反が組織に重大な損害をもたらすことが合理的に確実であると、合理的に考えるときは、
 弁護士は、1.6によりこのような開示が認められるか否かにかかわらず、組織の損害を防止するために必要であると合理的に考える場合に限り、かつ、その限度で、代理に関する情報を開示することができる。

(d)(c)項は、法律違反を調査するため、又は申し立てられた法律違反に基づく請求に対し、組織、業務執行者若しくは組織に所属する他の構成員を防御するために弁護士が組織を代理することに関連する情報に関しては適用されない。

(e)(b)項若しくは(c)項に則って行動したために解任されたと合理的に考える弁護士、又はそれらの条項にいずれかに従い措置を講じることが求められる若しくは許される情況において辞任する弁護士は、当該組織の最上級機関に自己の解任又は辞任が確実に伝わるために必要であると合理的に考える方法で手続きを進めなければならない。

(f)組織の取締役、業務執行者、被用者、会員、株主又はその他の構成員と折衝するにあたって、組織の利益が弁護士の折衝の相手である構成員の利益と対立することを弁護士が知っている又は合理的に知りうべきときは、弁護士は、依頼者が誰であるかを明らかにしなければならない。

(g)組織を代理する弁護士は、1.7の規定のもとで、組織の取締役、業務執行者、被用者、会員、株主又はその他の構成員を代理することができる。1.7により双方代理についての組織の承諾が必要とされたとき、承諾は、代理を予定している個人以外の、組織のしかるべき役員又は株主がこれを与えなければならない。
************************************
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司法試験:受験回数「5年で5回」に来年から 改正司法試験法

2014-05-29 10:35:27 | 国政レベルでなすべきこと
 別に回数制限なくてもよいと、自分は思いますが。
 
 なんのための制限なんだろうか。


******毎日新聞******
http://mainichi.jp/shimen/news/m20140529ddm012040099000c.html

司法試験:受験回数「5年で5回」に


 司法試験を受験できる回数を現行の「5年で3回」から「5年で5回」に緩和する改正司法試験法は、28日の参院本会議で全会一致により可決、成立した。2006年に始まった制度の初の見直しで、来年の試験から適用される。今年の試験までに3回不合格になった受験生でも、来年が4、5年目なら再挑戦が可能になる。
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野党時と与党時で、言うこと変えていたら、政治家は信頼されない

2014-05-17 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと

野党時と与党時で、
言うこと変えていたら、政治家は信頼されません。

時代や潮流自体は、変わっていくものです。

もし、言うことを変えるのであれば、
そのことをきちんと説明していく責任があります。

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寺田逸郎最高裁判所長官 就任談話H26.4.1

2014-04-22 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと
 以下、新しく就任された寺田逸郎最高裁判所長官 就任談話です。

 定型的なあいさつ文の中にも、下線(下線を私は引きましたが)のような長官自身が注目している観点があるような気がします。

*******最高裁ホームページ********************************
寺田最高裁判所長官の就任談話


平成26年4月1日


談 話



最高裁判所長官 寺田逸郎


この度,最高裁判所長官を拝命いたしました。その職責の重大さを十分に受けとめて務めてまいりたいと考えております。

戦後70年近くを経過し,この間,私共は,国民の御理解,御協力をいただきながら,個々の事件の適正妥当な解決を見いだす作業を通じて,国民の権利を擁護し,社会の基盤をなす法秩序の維持を図るという自らの使命を果たすべく努めてきたところです。しかし,社会,経済状況の変化等を反映して,利害の対立が複雑化し,また深刻化することも少なくない中で,裁判所に求められるものがますます幅広く,深くなっていることに思いを致さざるを得ません。また,社会のテンポが一層速くなっていることも見逃せません。裁判所は,これまでにも増して,一件一件の事件の適正妥当な,そして迅速な解決に向けて誠実に努めていかなければならないと思います。

時代の要請に応えるため取り組まれてきた一連の司法制度改革については,導入された制度の運用がそれぞれ進められています。このうち,裁判員制度は,まもなく施行から5年になります。裁判員を経験された多くの方々が裁判員裁判に参加したことは得難い経験であったと高く評価しておられ,国民の協力を得て円滑な運用を行うという点では,概ね責任を果たしつつ推移しているということができるでしょう。しかし,この歴史的意義を有する制度の定着に向けて取り組んでいくべき課題もなお少なくありません。また,裁判所にとって,新たに本日施行されたハーグ条約関連法にあるように,家庭内の出来事や国際的な広がりのある分野もが視野に入ってくることも普通に見られるようになっています。このような状況に対応し,司法の機能を充実,強化していくため,国内の実情はもとより国際社会の潮流も見据えて検討を深め,国民の期待と信頼に応え得るよう不断に努力を重ねていくことが求められているのだと思います。

東日本大震災とこれに伴う原子力発電所の事故は,発生から3年を経過しましたが,被災地域の方々をはじめとして,今なお多くの国民の生活に深刻な影響を与えています。司法の分野においても,被災地域の方々の生活の安定と復興に向けて可能な限り努力を続けてまいります。

就任に当たり,これまで築き上げてきたところを土台として,国民,社会から一層信頼される司法を確立していくため,全力で職務に取り組んでまいる覚悟です。

国民の皆様におかれましても,一層の御理解,御協力を寄せていただけるようお願い申し上げます。
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渡辺喜美氏「個人借り入れに関する説明」全文(2014/4/7記者会見にて配布)

2014-04-08 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと
 猪瀬氏の件でもそうでしたが、権力あるいは、権力闘争というものの恐ろしさを考えさせられます。


 以下は、渡辺喜美氏「個人借り入れに関する説明」全文(2014/4/7記者会見にて配布)


******************************


1 2010年(平成22年)の参院選を控えた時期に3億円、2012年(平成24年)の衆議院総選挙を控えた時期に5億円をそれぞれDHC吉田嘉明会長の個人口座から私の個人口座に送金していただきお借りしました件について、様々な報道がありました。

 当初、政治資金規正法や公職選挙法に違反する可能性があるなどと報道されたことから、党内に弁護士でもある三谷議員を委員長とした検証委員会を設置していただき、現在、事実関係及び法律に抵触するのか否かなどについて調査を始めていただいており、私の方から適宜説明をさせていただくことになっております。

 このように検証委員会に調査をお任せしているところですが、日が経つにつれて、一部議員が動揺し始めていることから、私自身がみなさんの前で取り急ぎご説明をするのがよかろうと判断した次第です。

2 私が代表を務めるみんなの党の党勢拡大のために、ご支援いただいていた会長に、私が個人として借り入れをお願いし、貸していただいたものであります。借入金は、主に党への選挙関係費用や政策策定や党勢拡大に資するために代表である私が支弁した情報収集・意見交換等のための費用として使いました。

 会長は、私から選挙のための資金として借り入れを頼まれたと、私からのメールをみなさんに公開しているようです。私の方ではメールの記録を残しておりませんので確認ができないのですが、借入れが選挙の前であることからすれば選挙のお話がでたとしても不思議ではないと思います。いずれにしても、ご支援いただいた会長も、みんなの党が選挙で勝ってさらに躍進することを期待し、私にお貸しいただいたものと理解しております。

 2010年(平成22年)の借入(3億円)につきましては、借用書を作成し、分割による返済方法も決めておりましたので、返済計画に従い返済をして参りました。最後の1回分の返済を残すだけとなっております。2012年(平成24年)の5億円につきましても吉田会長が貸付であるとマスコミに説明されているとおり、私が借り入れたものです。「元本はお金ができた時で良い」とのお言葉に甘え、現在まで従前の借入条件を念頭に利息の支払いを続けてきました。

3 当初の報道で、今回の貸付が猪瀬前知事の事例と同じではないかとの指摘がありましたが、政治資金規正法及び公職選挙法に照らして何らの法律上の問題がないことは、総務省等に確認しているところです。すなわち、私は、私個人の選挙費用として借り入れたのではないので、私の選挙運動収支報告書に記載する必要はありません。猪瀬前知事は、自分の選挙資金として資金の提供を受けたものであると理解しています。私は党勢拡大のために選挙を控えたみんなの党の選挙関係に充てるため2億5000万円を貸付けていますが、この貸付は平成24年度のみんなの党の収支報告書に記載し報告しているところですので政治資金規正法上の適正に処理しております。さらに、私が個人で使用した分については、政治家がポケットマネーを使って政治活動をしている場合、その収支については収支報告書の制度がないことを総務省に確認しておりますので、政治資金規正法上もなんら違法な点はありません。

4 このように法的に全く問題がないことは確認しましたが、今回の一連の報道によって、世間の皆さま、そしてみんなの党をご支援いただいている皆さまから誤解を受けかねないこととなりました。また、善意でお支え頂いたDHC吉田会長にも大変なご迷惑をおかけしてしまったことに照らし、信頼を回復するためには、まずは借入金のすべてを即刻返済するのがよかろうと判断し、本日借入残高全額を吉田会長に返済したところです。

 そして、法的には全く問題がないとはいえ、同志の皆さんにつらい思いをさせていることは私の本意ではありません。ここに私は代表を辞することとし、一所属議員に戻ることとしました。先ほど浅尾幹事長に伝えたところであります。

 以上、みなさまにご報告させていただきます。






*******************************
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304364704579486831689076204.html

2014年 4月 07日 17:08 JST
.
みんな・渡辺代表が辞任=8億円借り入れで引責 .


 みんなの党の渡辺喜美代表は7日、化粧品会社会長から8億円を借り入れた問題の責任を取り、代表を辞任する意向を文書で明らかにした。党内で辞任を求める声が広がったことや、今後の党運営や選挙への影響を考慮し、混乱を収拾する必要があると判断した。ただ、渡辺氏は詳しい資金の使途などを明らかにしておらず、説明責任を問われるのは必至。公職選挙法や政治資金規正法に抵触するかどうかも焦点となる。

 文書で渡辺氏は「代表を辞することとし、一所属議員に戻ることにした」と明らかにした。

 渡辺氏は、支援者だったディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から、参院選直前の2010年6月に3億円、衆院選直前の12年11月に5億円を借り入れた。このうち約5億5000万円が返済されていない。

 吉田氏が選挙資金として貸したと説明しているのに対し、渡辺氏は「個人的借り入れ」と主張。酉(とり)の市の熊手を購入したなどと発言して党内外から批判を浴びていた。 

[時事通信社]
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日本の民法改正を、改正ドイツ民法と比較して考える。特に売買契約の瑕疵担保責任

2014-03-29 23:00:00 | 国政レベルでなすべきこと
 以下、深い考察まではできていませんが、今回検討されている民法改正の重大論点のひとつ、売買契約の瑕疵担保責任の部分を中心に、民法とドイツ民法を、単純に比較してみます。


第1、はじめに
 民法570条本文は、瑕疵担保責任を定めた規定である。
 この責任の法的性質に関し、以下、議論がある。
 1)目的物の「瑕疵」とは、何を意味するか?
 2)「隠れた」瑕疵とは、何を意味するか?
 3)「売買の目的物」とは、どのような概念か?
 4)570条の責任と一般の債務不履行責任との関係は?瑕疵のある物の引渡しを受けた買主は、売主に対して修補や取替えを求めることができるか?
 上記各論点を、債権法改正中間試案も視野に入れつつ日本の民法(以下、「民法」という。)と、改正されたドイツ債権法(以下、「独法」という。)で比較する。

第2 目的物の「瑕疵」とは、何を意味するか?
1、民法
(1)瑕疵とは、
 瑕疵とは、一般に、欠点・欠陥・キズという意味であり、民法570条に言う物の「瑕疵」も同様である。
 さらに、物の客観的・物理的な品質・性能に即して「瑕疵」を判断すべきか(客観的瑕疵概念)、それとも、個々の契約の趣旨に照らせば目的物が有すべき品質・性能を欠いていることを言うのか(主観的瑕疵概念)が議論される。
 通説は、主観的瑕疵の意味で理解されており、それは、契約の解釈で得られる。すなわち、当事者の合意内容を基準に「瑕疵」の有無を判断したうえで、具体的契約から明確な帰結が出てこないときには、当該契約の当事者の地位に置かれた合理人ならば契約目的に照らしてどのような品質・性能を期待したであろうかという観点から「瑕疵」の有無を判断する。
 瑕疵には、物質的な欠点だけでなく、法令上の制限、環境瑕疵、心理的瑕疵等も含まれる。
(2)立証責任
 瑕疵の存在についての主張・立証責任は、買主の側にある。

2、独法
(1)瑕疵とは(『ドイツ売買法 2001年債務法改革(債務法現代化法)を中心としてー』ハルム=ペーター・ベスターマン著(以下、「テキスト」という。)21-22頁)
 物の瑕疵は、主として独法434条で定義され、権利の瑕疵は同435条で定義されている。
独法434条1項は、物の瑕疵あるいは欠陥を定義するのではなく、最初に目的物に物の瑕疵がないとはどういう場合かだけを述べている。同435条で権利の瑕疵についても同様に述べている。
「物の瑕疵がないこと」について、434条1項では、①目的物が契約で前提とした用法に適している場合(同項1文)、そうでなければ、②目的物が通常の用法に適している場合(同項1号)、ならびに、③同種のものが通常備えている性質および目的物の種類から買主が期待できる性質を示している場合である(同項2号)。
さらに、同項第3文で、広告で表示した内容も同項2号でいう性状に入るとされ、同条2項で、契約で定めた組み立てを売主が行う際の瑕疵の事案、組み立ての説明書に瑕疵がある事案を規定し、同条3項で、売主が「別の物または数量不足の物を提供する」事案を明示的に物の瑕疵と同視している。
独法434条の規定は、当事者が契約によって行う性質(Beschaffenheit)について特約の優位をこれまで以上に強調している。
(2)立証責任(テキスト 56頁)
 独法476条で、物の瑕疵の存在について売主の負担で証明責任を転換している。
 通常であれば、物の瑕疵がすでに危険移転時に存在していたことを買主が証明できなければならなかった。独法は、危険移転とは無関係に、瑕疵が、引渡後6ヶ月以内に顕現する場合には、買主は瑕疵がすでに危険移転時に存在したという内容の推定を援用することができる。

3、日本法と独法の比較
 独法では、瑕疵の規定を、瑕疵がない場合を、まず主観的瑕疵概念で検討し、認定できなければ、客観的瑕疵概念も入れて検討するということを、細かく規定している。指令の目標のひとつとして、瑕疵概念を拡張すること買主保護強化があったが、買主を保護するという意味では、独法が、日本民法より優れていると考えられる。
 さらに独法で重要な点は、立証責任の転換である。日本民法では、瑕疵の存在を主張立証するのは、買主であるが、その証明は困難なことが多いであろう。買主保護の点で独法の同規定は、優れている。

第3 「隠れた」瑕疵とは、何を意味するか?
1、民法
(1)「隠れた」とは、
 「隠れた」というのは、客観的に隠れたことを言うものである故に、普通の人の用いるべき注意を用いても発見できないことを言う。
 買主としては、通常人ならば買主の立場に置かれたときに容易に発見することができなかったこと(客観的に見て瑕疵が外部に現れていなかったこと)を主張・立証すれば足り、これにより買主の善意無過失が推定される。
(2)立証責任
 不表見の事実により買主の善意無過失が法律上推定されているがゆえに、買主の悪意または有過失については、売主が主張・立証責任を負う。

2、独法
 民法570条でいう「隠れた」瑕疵という表現を、独法は使っていない。
 独法では、433条で、売買契約における契約類型上の義務を定め、同条1項で、売主の義務として、「物の瑕疵及び権利の瑕疵のない物を買主に取得させなければならない」と規定し、同条2項で、買主の義務として、「売主に合意した売買代金を支払い、購入した物を引き取る義務を負う」ことを規定している。

第4 「売買の目的物」とは、どのような概念か?570条の責任と一般の債務不履行責任との関係は?
1、民法
(1)法定責任説と契約責任説
 まず、物の瑕疵担保責任の法的性質をどのように捉えるかで、「売買の目的物」の意味も変わることになる。
 以下、2説の考え方を比較する。

2、契約責任説の考え方
(1)契約責任説とは、
 売買契約において、瑕疵ある目的物を引渡したならば、それは不完全な履行であり、買主は売主に対して債務不履行に基づく責任(契約責任)を追及することができるという考え方である。
 この考え方は、売買契約において、「瑕疵のない目的物を引き渡すこと」が当事者の効果意思を形成し、したがって債務の内容(給付義務の内容)になっているとの理解を基礎にしている。そして、民法570条の責任は、債務不履行の一般法に対する特別法として位置づけられることになる。従って、まず民法570条が適用され、同条によって規定されていない問題については債務不履行の一般法理によって処理される。
(2)契約責任説の考え方の具体的な帰結
 ① 570条に言う「売買の目的物」には、特定物・種類物(不特定物)の両者が含まれる。
 ② 瑕疵の有無の判断基準時は、引渡時(受領時)とされる。売主が目的物を引き渡した時点で瑕疵があったならば、売主のおこなったことは不完全履行(債務不履行)と評価されるからである。
 ③ 契約締結時に既に瑕疵があった場合(原始的瑕疵)も、570条によって処理される。「原始的不能の給付を目的とする契約も、有効である」との考え方がなされる。
 ④ 債務不履行を理由とする損害賠償(570条、566条)は、履行利益の賠償である。
 ⑤ 瑕疵担保責任の効果は、解除と損害賠償しか規定(570条、566条)がないが、瑕疵のある目的物の引渡しは不完全履行(債務不履行)なので、買主としては、債務不履行の一般法理に依拠して、売主に対し、完全履行請求権(修補請求権。可能な場合には代物交付請求権)を有することになる。

3、法定責任説の考え方
(1)法定責任説とは、
 特定物の売買契約において、瑕疵のある特定物を引き渡しても、「この物」(特定物)を引き渡したのであれば、それは完全な履行であり、買主は売主に対して債務不履行に基づく責任(契約責任)を追及することができないとの考え方(特定物ドグマ)である。
 この特定物ドグマは、特定物の売買契約において、当事者の効果意思たる債務の内容(給付義務の内容)を形成しているのは「この物」のみであって、「物の性質」がどうであるかは効果意思ではなく、「動機」にすぎないとの理解を基礎にしている。ここから、「特定物売買では、「この物」さえ引き渡せば、履行として完全である(債務不履行ではない)」(瑕疵のある特定物の引渡しは、瑕疵のない完全な履行である)との帰結が導かれる。
 しかし、この場合に、瑕疵のある特定物の引渡しが完全な履行だとしたままでは、その特定物には瑕疵がないと信頼して取引に入った買主が不利益を被る。そこで、民法は、瑕疵のある特定物の引渡しが完全な履行であることを認めたうえでなお、買主の不利益を救済するため、法律で特別の責任を定めて、売主に課すことにした責任が、570条の瑕疵担保責任(履行として完全であると評価された後の利益調整のための特別の法定責任)である。
(2)法定責任説の考え方の具体的な帰結
 ① 570条に言う「売買の目的物」は、特定物のみを対象とする。種類物の売買では、瑕疵のある種類物を引き渡すと、不完全履行と評価され、売主の債務不履行責任が発生し、債務不履行の一般法理で処理される。
 ② 瑕疵の有無の判断基準時は、契約締結時とされる。瑕疵は、原始的瑕疵のみが570条の「瑕疵」に当たる。
 ③ 契約締結後・引渡しが現実にされるまでの間に生じた瑕疵(後発的瑕疵)については、民法400条の保存義務の問題として処理される。
 ④ 損害賠償(570条、566条)は、信頼利益の賠償、つまり、瑕疵を知らなかったことによって買主が被った損害だとされる。
 ⑤ 570条の瑕疵担保責任は、債務不履行責任ではない。従って、瑕疵のある特定物の引渡しも完全な履行なのであるから、受領した買主は、売主に対する完全履行請求権(修補請求権・代物交付請求権)を有しない。このような権利を認めるのは、論理矛盾である。

4、独法
(1)概念の説明 給付障害(テキスト 4頁)
 独法は、給付障害という概念を、用いている。債務不履行に極めて近い概念であるが、債務不履行だけでなく、危険負担の場合も含む。債務者に帰責事由がない履行不能の場合は、厳密に言えば、債務不履行にはならないので、一般的な概念として給付障害という概念を用いる。
(2)瑕疵担保責任の効果(テキスト 23頁)
ア、完全履行請求権
 独法437条は、1号で、買主にまず完全履行を求める権利を認め、439条1項は、これを定義して、買主は、「完全履行として、その選択により、瑕疵の処理または瑕疵のない目的物の供給を請求することが」できる、としている。完全履行とは、修補または代替物供給である。これは、権利の瑕疵にもあてはまる。同2項は、完全履行の費用は、売主負担であることを規定する。
 完全履行がうまくいかなかった場合に、買主は、同条2号の定めるところにより、第440条、第323条および第326条5項による契約の解除、または、第441条による売買代金の減額を行うことができる。
 逆に言うと、買主は、目的物に瑕疵があると思われるときは、直ちに解除したり、損害賠償を求めたりすることができない。売主には、2度目の提供をする権利をもつことを意味する。
イ、解除と損害賠償
 第437条2号と3号は、「および」という語でつながれており、買主は解除することができ、そしてまたそれと並んで、同3号にあるように、「第440条、第280条、第281条、第283条、および第311条により損害賠償を」求めることができる。損害賠償と解除とをともに請求できるのである。
ウ、積極的契約侵害(テキスト 22頁)
 履行利益を超える損害を買主の法益に対し起こした場合、瑕疵の後続損害(例えば、伝染病に罹った家畜を供給し、この家畜から他の買主の家畜に伝染した場合)を引き起こし、そのことに帰責事由がある場合、積極的契約侵害として、独法280条1項でいう債務者の義務違反と見ることができ、損害賠償請求がなされうる。

5、日本法と独法の比較
 独法と、契約責任説は、似ていることがわかる。
 すなわち、第4、2(2)の契約責任説の考え方の具体的な帰結での記載と対応して、独法の担保責任について書くと、
 ① 570条に言う「売買の目的物」には、特定物・種類物(不特定物)の両者が含まれる。
 ② 瑕疵の有無の判断基準時は、引渡時(受領時)とされる
 ③ 契約締結時に既に瑕疵があった場合(原始的瑕疵)も、「原始的不能の給付を目的とする契約も、有効である」とされ処理される。その場合、独法では、追完請求なしの解除がなされうる。
 ④ 損害賠償は、履行利益の賠償である。積極的契約侵害が認められる場合もありうる。

 日本の債権法改正の大きな争点のひとつが、物の瑕疵担保責任の法的性質を法定責任説から契約責任説に移行させるところにある(*『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』42頁、54頁~55頁参照)が、独法改正や実際の独法改正後の判例の蓄積が参考になるであろう。

以上


(参考資料)
*『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』から一部抜粋
〇42頁
 第22 弁済
6弁済の方法(民法第483条から第491条まで関係)
(1)民法第483条を削除するものとする。
(以下略)

〇54頁~55頁
 第35 売買
 3売主の義務
 (1)売主は、財産権を買主に移転する義務を負うほか、売買の内容に従い、次に掲げる義務を負うものとする。
 ア 買主に売買の目的物を引き渡す義務
 イ 買主に、登記、登録その他の売買の内容である権利の移転を第三者にたいこうするための要件を具備させる義務
 (2)売主が買主に引き渡すべき目的物は、種類、品質及び数量に関して、当該売買契約の趣旨に適合するものでなければならないものとする。
 (3)売主が買主に移転すべき権利は、当該売買契約の趣旨に適合しない他人の地上権、抵当権その他の権利による負担又は当該売買契約の趣旨に適合しない法令の制限がないものでなければならないものとする。
 (4)他人の権利を売買の内容としたとき(権利の一部が他人に属するときを含む。)は、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負うものとする。
(注)上記(2)については、民法第570条の「瑕疵」という文言を維持して表現するという考え方がある。

 4目的物が契約の趣旨に適合しない場合の売主の責任
 民法第565条及び第570条本文の規律(代金減額請求・期間制限に関するものを除く。)を次のように改めるものとする。
 (1)引き渡された目的物が前期3(2)に違反して契約の趣旨に適合しないものであるときは、買主は、その内容に応じて、売主に対し、目的物の修補、不足分の引渡し又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができるものとする。ただし、その権利につき履行請求権の限界事由があるときは、この限りでないものとする。
 (2)引き渡された目的物が前期3(2)に違反して契約の趣旨に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、債務不履行の一般原則に従って、その不履行による損害の賠償を請求し、又はその不履行による契約の解除をすることができるものとする。
 (3)売主の提供する履行の追完の方法が買主の請求する方法と異なる場合には、売主の提供する方法が契約の趣旨に適合し、かつ、買主に不相当な負担を課するものでないときに限り、履行の追完は、売主が提供する方法によるものとする。
 (以下略)
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