波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

            思いつくまま  

2009-01-07 09:49:32 | Weblog
2009年を迎えた。昨年の後半があまり良くないままに年を越したので、心が晴れやかにならないのは仕方が無いかもしれないが、気持ちを新たにしたいものだ。
私は年賀状に「新年をチエンジ掲げて牛歩の一歩」としたためたが、心を新たに、
牛のように歩みは遅くても一歩、一歩歩いてゆきたいという思いです。
さて、今年はどんな年になるのでしょう。天気予報的に言えば、「雨、後小雨、
次第に天気は回復し薄日の射すこともあるでしょう。」と言ったところでしょうか。項目的に言えば①アメリカの政権交代(1月20日)と新政策、②衆議院解散と総選挙③地球温暖化による自然現象の気候の変化。の三つが上げられる。
世界への影響として最も大きなものはアメリカの新政策だと思うのだが、オバマさんは早くも地球環境関連のグリーンニューデール政策を打ち出し、風力発電、太陽電池、エコカーの開発(電気自動車の開発について政府が援助する)などを具体的に進めている。環境技術開発事業は証券化すれば低リスクの金融商品として広がるだろう。日本もこれに倣って、進むことになりそうだ。
ただし、②の選挙は今年必至と思われるが新しい政策が具体的に施行されるのは遅くなり、早くて秋以降になりそうだ。
各企業も為替差損の影響が突然襲い、その対応に慌ててせざるを得なくなり、雇用人員の合理化を打ち出したが、元来本質的に経営が悪化したのではなく、緊急避難でのことだと思い、将来の見通しが出来次第、元の体制へと徐々に戻ると思われるし、アメリカの体制と、政策が具体的に見え始めると同時に準備にかかるのではないだろうか。そうなると、中国を始めとする世界の中国系の企業の動きも旧正月明けから動き始めるのも間違いないところで、どんなに悪くても、新しい知恵と力が出てくるものである。
新たな、環境関連産業、とりわけ新製品が生まれるような気がする。そのトップは
現在水面下で開発が進んでいる電気自動車で、来年の量産販売に向けてその準備が進んでいることは間違いないところだ。
日本もゆっくりしている場合ではないのだが、麻生さんは世界で一番早く、閉塞感からの脱却をを計ると言っておられるが、ご本人の言うとおり、事が運ぶかどうか心配である。いずれにしても、③地球温暖化は仕方が無いとしても、大きな天変地異が起きないで、穏やかに、心静かに、足をためたスタートで少しづつダッシュを掛けるペース配分になればよいと願っている。

波紋     第55回

2009-01-05 10:41:38 | Weblog
店は時間が過ぎていくと共に賑やかになり、華やかになっていく。ピアノの音が静かに流れ、着飾った若いホステスがゆらゆらと動きその雰囲気を盛り上げていく。
歌を歌うもの、踊るもの、あちこちから聞こえてくる笑い声が絶え間なく聞こえる。そして時間は告ぎ、12時を過ぎる頃、客のほとんどがいつの間にか居なくなる。しかし、彼の席だけは残っている。入ってきた時と同じようなままで、続いている。ラストになり、ママの声に釣られて立ち上がる。お供のものも全員彼が立ち上がるのを待っている。上司を見送らないで帰るわけに行かないのが、暗黙の鉄則である。嘗て、飲みすぎて自制が聞かなくなり、お迎えの車まで見送りに出て、車の出発の際「バイ、バイ」と手を振って、お辞儀をしなかった人が車から見咎められてお供を下ろされて二度とお呼びがかからなかった人が居たが、その徹底振りに恐ろしさを覚えたものである。
松山も何度か、その席に呼ばれ、同席したことがあったが、とてもおいしく酒を飲むと言うことが出来るわけもなく、緊張感の中で、酒を殺してのみ、翌日二日酔いのような悪酔いをした事が何度かあった。命令は絶対であり、その日に呼ばれたものは何があっても、その業務命令は断るわけには行かなかった。
ある部下の一人は奥さんが病気でかなり悪く入院していたにも拘らず、その日のメンバーに居て、途中、携帯電話がなり、「危篤」と知らされ、病院は駆けつけたが、間に合わず、最後を看取れなかったという事を聞いたことがある。
その時はさすがに本人も寝覚めが悪い悪いと思ったのか、病院まで、ご焼香に行ったらしいが、悪いことを知らされてなかったとはいえ、その権勢は徹底したものであった。反対にきちんと説明して、断っていなかった側にも大きな責任はある。業務命令とはいえ、きちんと説明しておけば,来いとはいえなかったのではないかと思う。世の中のことは一方だけが悪いと言うことはないので、どんな命令であっても、言うべきことは言わなければ、後悔する事になる。いかし、
こんな習慣は、長続きするはずも無かった。いつの間にか社内に通じるところ所となり、トップから自粛するように戒告を受け連日のセレモニーは終わったのである。
彼もまた、サラリーマンだった。
その後、彼は定年を迎え、静かに会社を去って行ったのだが、彼の居た部屋にいってみると、忘れられた置物が棚の上におかれていた。それは、ガラスのボトルに入った帆船の模型である。彼はそれを趣味として創っていたのだが、一隻の帆船の作成に材料の選択から始まり、完成まで約6ヶ月かかると言う精密なもので、素晴らしいものだった。松山はその帆船を眺めながら、あの亡羊とした彼の姿にこんな繊細な神経がどこにあったのかと船を見ながら思い出していた。

波紋          第54回

2009-01-02 08:02:26 | Weblog
このボスの特徴はお坊ちゃん育ちであること、従って自然なわがままだった。すべてに自分の思い通りにことが運ぶのが当たり前であり、そのようになら
ないと感情がむき出しになる。確かに人間は不足を感じたり、満足が得られない時に我慢とか、忍耐とか、あるいは思いやりとかと言う感情と理性が生まれてくるものである。従って、その必要が無いとすれば必然的にそのようなものは生まれてこないし、必要が無いのである。
だから、最低限の人間関係における節度として持ち合わせているとしても、それ以上のものは無いのである。
自分より権力の無いもの、弱いものに対してそのように振舞うのは当たり前なのかもしれない。ご機嫌の良い時はやさしく接するが、悪い時は極端に変わるのも自然と言えば、自然なのかもしれない。
そして、「無くて七癖」と言われるように、この人にも「癖」があった。
それは、「魔が差した」としか思えないように突然始まった。毎日のように続くクラブ通いである。定時退出時間になると、そわそわし始め、車の手配に入る。
お抱えの運転手に時間と、行き先を指定、そして行動を開始するのだ。最初は
麻布付近の料亭での会食である。その場には必ず、誰かが指名されていて侍っている。お酒は体の都合で飲めないのでもっぱら、食べるのみなのだが。
其処での話は主に仕事上の話が主であるが、その場に居合わせた人は食べた気にもならないほどの緊張感であったはずだ。
8時を過ぎた頃になると、車が廻されて、銀座のクラブへ行く。つまりその料亭とクラブのママが同一人物であり、その二つの店を回るのである。
クラブも8時では客も無く、静かであるが、そんなことはお構いなしである。
其処でも、同じ相手と話を続けるのであるが、まるで、その雰囲気は会社と変わらないものであった。テーブルには一本何十万円もするボトルが置かれ、ホステスも
サービスのために座っているが、彼にはそんな雰囲気は無い。会社に居る時の延長のような表情で面白くも,おかしくも無い顔で座っている。はしゃぐ様子はこれっぽっちも見られなかった。
ただ、ひたすら、ウーロン茶を飲み、しゃべるのみである。何を語っているのか、何が面白いのか、何が良いのか、全く分らないまま時間は過ぎて行くのだ。
やがて、時間と共に店の様子も変わってくる。支度の出来たママも時々来て
お愛想を振りまいているが、すぐ居なくなる。