経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

年金加算について考える

2012年02月19日 | 社会保障
 維新の会の年金改革構想を見ていると、掛け捨て年金だの、積立方式だのと、日本の年金論議は、またフリダシに戻ってしまうのかと暗澹たる思いがする。一般の人には、何が問題なのかも分からないだろうが。

 社会保険制度の原則は、払った保険料が老後に還ってくることである。これを忘れないでほしい。掛け捨てとは、払った保険料が還ってこないことを意味するから、もう社会保険とは言いがたい。「それは高所得者の話だから関係ない」と甘く見ていると、財政が苦しくなるにつれ、還ってこない範囲は無原則に広がるだろう。原則を失うとは、こういうことなのだ。

 また、公的年金制度は、子が親を支える制度なので、子供がいる人にとっては、積立方式に変更して余計に保険料を払う必然性は何もない。積立方式を唱える人は、とにかく負担を増やしたかったりするから、要注意である。現行の年金制度は、既に保険料率の上限が決まっていて、予定以上に負担が増すことはないことを思い起こしてほしい。

 現行の年金制度は、ずるずると給付水準が低下するおそれはあるが、破綻はない。むしろ、ずるずると低下する調整がなされるから、突然、制度が立ち行かなくなるということはないのである。この給付水準の低下を防ぐには、少子化を緩和するか、経済成長を高めるしかない。年金をいじるのではなく、そちらに注力すべきなのだ。年金を改革すれば、解決できると言う人の主張は、まず疑ってかかるが良かろう。

 むろん、現行の年金制度にも「改善」を要すべきところはある。2/14の社会保障審議会・年金部会で議論された低所得者への加算もその一つである。その議論は、煎じ詰めれば、消費税増税の増収を使って、どういう人に、どのくらい加算をするかというものである。その考え方は、どうも二段構えになっているようだ。

 一つは、免除加算というものである。現在は、基礎年金の国庫負担は1/2になっているから、仮に保険料の全額免除を受けても、半分の3.3万円は受給できるが、既に受給している人は、国庫負担が1/3当時の2.2万円しかもらえないでいる。これを今後の受給者と同様の3.3万円程度に引き上げようとするものだ。これは十分に納得できる。

 もう一つは、民主党の7万円の最低保障を実現すべく、6000円を上乗せするものである。これは、保険料を上げるわけでもないし、国庫負担を1/2から引き上げるわけでもないので、なかなか正当化が難しい。しかも、未納期間も加算の対象になる。最低限の生活水準に必要という説明のようだが、そもそも、ベースの6.4万円は、マクロ経済スライドで下がることになっている。こうしてみると、実現は、前者のみにとどまるように思えてくる。

 ちょっと、難しかっただろうか。年金制度を抜本的に「改革」するとなると、ワンフレーズで済むが、「改善」するとなると、とたんに専門的な話になる。これを万人が理解して、年金制度で政権を選ぶというのは、なかなか難しいように思う。それゆえ、あえて見栄えの良い公約を掲げて引きつけようとするのかもしれない。

(今日の日経)
 中国が金融緩和、準備率下げ、インフレより優先。温暖化対策を取引1万社と・パナソニック。企業収益・どう生かす眠れる資源。円売り続く展開か、一時79.62円。時間軸政策は回復期に効果発揮・清水功哉。電力改革・価格活用、一時国有化、エネ課税・八田達夫。中外・仕切りなおしの北方領土。フィリバスター宣言・大石格。読書・さよなら僕らのソニー、経済大国インドネシア、地球と共存する経営。

※さすが八田先生だ。傾聴すべき点が多い。※プーチンに期待せず、次の「プチャーチン」との交渉も展望すべし。民主化なしに法と正義による解決はない。

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