経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

年収の壁の本質は低所得者の過重な負担

2023年07月09日 | 社会保障
 専業主婦がパートを増やすと、いきなり社会保険料がかかり、手取りが減って「損」をする問題がある。お役所は、将来、年金で還ってくるから、損ではないとするが、目先のカネが切実な庶民の実状を分かっていない。保険料の免除を人件費削減に使ってきた事業者も、このところの人手不足で何とかしてくれと言い出したことで、雇用保険を流用する弥縫策で対処するようである。

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 専業主婦から保険料を取らない最大の理由は、本人の収入がないからだ。だからと言って、無年金にもできないので、3号被保険者にすることで、基礎年金を与えている。専業主婦でなくても、収入がないなら、手続を踏めば、税方式によって半額は与えられるので、半額分が問題だとは言える。しかし、そもそも半額では、貧窮の老後になる。それで良いのかということがむしろ重要だ。

 結局、十分に負担できない低所得者の年金の負担と給付をどうするかの問題なのである。それは、非正規の若者の問題でもあり、低い手取りに喘ぐ若者が結婚できず、日本社会を崩壊させる急速な少子化の原因にもなっている。低所得者の保険料の軽減を通じて、勤労者皆保険を実現することが本当に必要とされることであり、専業主婦の問題も、この中で解決されるべきものだ。

 保険料軽減の財源をどうするかについては、元旦のコラムで示したように、年に1.1兆円あれば足りる。現下の税収の好調ぶりからすれば、難なくできるレベルだが、年金の枠内で賄うこともできるだろう。なにしろ、GPIFは、コロナ下の金融緩和の局面で、年金の運用資産を40兆円も増やし、米国の金利が上がった2022年度も保てたのだから。庶民の生活は苦しかったけれど、金融資産が膨らむ恩恵はあった。これを利用するリテラシーがあっても良いではないか。

(図)


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 社保審年金部会で、たかまつななさんは、余裕がある人の年金はカットして、将来世代に回すという発言をして、物議を醸した。彼女が叫んでも、虚空に響くだけだろうが、こうした打ち手はありうる。むろん、若者の生活が楽になり、少子化が緩和すれば、若者に還元しても、年金財政の改善さえ予想される。もっとも、お役所的には、保険料の軽減はタブーだろうね。せいぜい、カネを抱えて、滅べばいいさ。


(今日までの日経)
 国民の金融リテラシー向上が欠かせない。大学ファンド、604億円赤字。GPIF、黒字2.9兆円。補助金が長期化、ガソリン販売増。「働き損でないなら働きたい」8割 改革なら雇用70万人分増。夏の国内旅行費、最高に。過熱する不動産市場 近隣国から投資資金が流入。賃上げ平均3.58% 30年ぶり高水準 連合最終集計。


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