経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

円安による景気の陰り

2024年05月12日 | 経済
 4月の景気ウォッチャーは、前月比-2.4と低下し、前月が-1.5だったこともあって、判断も「このところ弱さがみられる」に下方修正された。原因は、円安による物価高で、「判断理由」に表れている。物価の安定が日銀の使命なら、輸入物価が高騰しているのだから、引き締めるべきで、為替は所掌外とか言ってる場合ではない。金利を上げられる時に上げておかないと、米国の金融政策の方向が変わって円高になり過ぎて困るときのノリシロもなくなるのじゃないか。

………
 5/8の経済教室で鶴光太郎教授が、アベノミクスは株価ターゲティングだとしていたが、的を射た評価だと思う。ただ、それで財政を緩めていたわけではなくて、緊縮で物価が上がらないようにしていたのであり、金融緩和を持続させ、資産高騰の果実を得ようとする典型的な新自由主義の経済政策だった。コロナ禍の財政出動はイレギュラーなもので、今や消費税率の倍増が物価高での税収増の源になっている。

 異次元緩和が圧倒的な支持を受けたのは、円高の是正に成功したからで、輸出が伸びれば景気が良くなるという日本の伝統に則ったものだった。日本の景気循環は、自律的な波が見られるというより、輸出増で良くなり、輸出減で悪くなるという、リアルビジネスサイクルみたいなところがあるから、円安によって外需のショックにより成長率を高めようというのは、常識的な戦略になる。

 もっとも、かつて高投資・高成長を成し遂げたのは、輸出の所得増を内需の消費増に循環させていたからで、当時は大した政策だとは思われていなかったけれども、アベノミクスのように金融緩和に緊縮財政を組み合せて堰き止めてきたのを目の当たりにすると、当たり前のようでいて、現実に根差した政策は意外に非凡だったのかもしれない。財政や金融という手段のスタイルに拘って、成長に資するという目的を忘れてしまうのだ。

(図)


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 草創期の経済白書が内閣府のホームページで公開されるようになったが、特徴的なのは、貿易が筆頭に掲げられていることだ。昔は、通産省の全部局の頭に「通商」か付けられていたくらい、輸出は資源の乏しい日本経済の死命を制するものと考えられていた。自然な認識だったけれど、それが高度成長へ導いて行く。金融政策は、原点に帰って、円安で輸出が伸びて成長できるのかで判断すれば良いのである。


(今日までの日経)
 3メガ銀、純利益3兆円 前期最高へ。4月の街角景気、基調判断下げ 円安の影響に懸念。製造業が最高益 前期。認知症、迫る「7人に1人」 14年度推計に比べて約3割下振れ。米経済、本当に強いか 所得上位層の消費底堅く 高金利、住宅・景況感に影。円安にもほどがある!年収300万円じゃ働けない。


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