経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

少子化対策に負担増は必要ない

2023年04月07日 | 社会保障
 少子化対策のたたき台が公表されたが、財源を巡って迷走しそうな雲行きである。そして、今回も、乳幼児期の支援という肝心な部分が後回しにされそうで、この国は、また失敗するのではないかと心配だ。どうして、こうなるのかね。要するに、少子化対策の意味とか、財源確保の仕方とか、基本的なことがぼんやりしたままなので、刺さる施策が立案できずにいるのだと思う。

………
 まず、財源だが、2.5兆円は難なく用意できる。12年後には、小中高の児童生徒が250万人減るので、1人当たり年100万円の学校教育の公費負担が減るからだ。6年後だと、1.1兆円である。現時点で、小中の給食費の無償化には3,650億円あれば良く、高校生に月1万円の給付をしても3,000億円で済む。財源は、徐々に現れるので、始めは公債で賄う部分があっても、その程度は許されよう。

 続いて、すべての女性に育児休業給付をするには7100億円が必要であり、勤労者皆保険を実現するために低所得者の社会保険料を軽減するのに1.1兆円かかるので、この二つを加えて、2.5兆円である。ここまでなら、少子化対策に負担増は必要ない。むしろ、勤労者皆保険になると、年金財政が改善するので、一般政府全体では、財政赤字が増えないどころか、減ることになるだろう。

 少子化対策を、あれもこれもとメニューを増やし、予算倍増の5兆円が目的化すると迷走する。成果を上げるには、政策の狙いをハッキリさせ、若い人の認識を新たにし、行動を変えなくてはならない。低所得でも子供は持てるのだ、学校にかかるカネは心配ないのだといったメッセージを届けなければならない。子育ての負担軽減なら何でも構わず、見合いに税や社会保険料を重くするのでは、成功はおぼつかない。

(図)


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 少子化対策の効果が薄いのは、既に生まれている子供への支援は効果がなく、効果は、これから生まれる子供の分しかないからである。例えば、児童手当を増額する場合、来年以降に生まれる子供だけを対象にしても、現在の18歳以下の全員を対象にしても、効果は同じになる。全員を対象にしたら、費用対効果が薄くなるのは、当然である。

 その点、すべての女性への育児休業給付は、これから生まれる子供が対象なので、効果は高い。こういう打ち手を優先して負担増なしで実現すべきである。もし、十分な効果が得られなかったとしても、非正規では生活保障がなくて産むに産めないという明らかな障害を放置していては、少子化が収まるわけがないので、挑戦に悔いはないはずだ。

 財源については、子供の減少で財源が出るということ、少子化の緩和や皆保険の実現で年金財政に余裕が生まれること、税収増で2025年度にはプライマリーバランスに達して、それ以降の自然増収は新規施策に充てられるようになることをしっかり踏まえて、設計すれば良い。社会保険料を重くするだけでは、知恵がなさすぎる。


(今日までの日経)
 世界のテック人員削減、1~3月16.8万人 昨年の通年超え。首相「世代・立場超え協力」少子化対策、財源の議論開始。海外生産「縮小」最多11%、高める37%。米雇用減速、利上げ停止観測強まる。パートの賃上げ、満額回答4割弱。


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