ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

かど徳 @愛知県清須市

2015年08月25日 | 愛知県(尾張・老舗)

清須城のそばを流れる五条川。そこに架かる清須橋の近くにある蕎麦屋「かど徳」。近辺の店を探していて、このHPに載っていた達筆な品書きと興味深い略歴に惹かれて訪問してみた。創業は何と慶應2年(1866)とのこと(HPによる)。現在の店主が4代目だそうだ。ただし、店の表看板には明治初年とあり、道端の立て看板には創業1856年(=安政3年)とあるので(笑)、実際はどれが正しいのかよく分からない。看板には「県優秀技能そば打名工」「日本一と定評」なんて文字があるので期待は高くなってしまう。店は商業テナントのひとつにあった。車を停め、暖簾をくぐる。中は奥に長くなっていて、入ってすぐの左側に麺打ち場が設けてあった。少々店内はくたびれているが、しっかりお客さんは入っている。さすが歴史あるお店。テーブル席に腰を下ろし、壁にたくさん貼られた店の紹介記事の切り抜きと品書きを眺めながら、二八そばと迷ったが、注文してから打つという十割の「せいろそば」を注文した。

席から主人の所作は見えないが、麺を打っているだろう音が聞こえてくる。やっぱりその場で最初から打つんだね。すごい。しばらくして、その音がトントンとそばを切る音に変わる。思ったよりも早く作業は進み、テーブルの上が一杯になるくらいの、ものすごく大きなざるに広げて盛られたそばが運ばれた。かなりの量に見える。刻み海苔は別皿に入れられていて、そばの上にはチョコンと梅干しの天ぷらが置かれていた。さっそくそばつゆをひと啜り。溜り醤油由来の風味と甘味が感じられる、この地方特有の昔ながらの濃いめ、甘めの味。今の感覚でいうと随分甘さを強く感じ、このそばがいわゆる「趣味蕎麦」でないことが分かる。太さがばらついたそばを手繰る。柔らかめの茹で加減。いかにも十割といった風味は希薄。麺肌にもざらつきは無い。ただ、何口食べてみても、なかなかこの十割そばの特徴が掴めない。何だろうこの掴みどころの無さ。途中で梅干しの天ぷらを口に入れてみたが、揚げ置きのかたい衣で、そばと一緒に食べるには酸味が強過ぎて、これは正直自分の口には合わない。

けっこう色々な蕎麦を食べてきているつもりだったが、こちらのそばは明らかに今、巷で流行るそばとは違っている。あるテレビ局の取材では、100%の蕎麦粉を、水を使わず玉子と山芋でつなぐと書いてあるが…。それって合ってるかな?。久しぶりに自分の中で消化(理解の意)しきれないそばに出会った。最近でこそ手打ちの店は当たり前のようにあるが、昭和の初め頃までには、東京でさえほとんど手打ちの蕎麦屋が無くなった時期があったというから、少し前までは手打ちで十割というのが今よりもずっと価値があったはず。腕に憶えのある主人が、現在のそば業界の流れとは全く違うところで、信念を持って技術と昔ながらの味を研鑚しているという感じだろうか。主人は給仕の女性らにも厳しく接しているので、自分にも厳しいに違いない。ただ香りも重要な十割そばの要素だから、店内の様子も含めて、もう少し香りには厳しく気を使って欲しいかな。巷の蕎麦好きが、こちらのそばをどう評価するのか訊いてみたい。(勘定は¥1,260)

かど徳

愛知県清須市朝日天王57

 

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コメント (2)
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