“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「日立の壁」(東原敏昭著/東洋経済新報社)

2023-04-20 09:35:40 |    企業経営



<新刊情報>



書名:日立の壁~現場力で「大企業病」に立ち向かい、世界に打って出た改革の記録~

著者:東原敏昭

発行:東洋経済新報社

 2009年3月期に7873億円という製造業史上最大の赤字(当時)を出した日立。幸い、未曾有の危機に際して経営を引き継いだ川村隆・中西宏明両氏の大ナタによって立ち直り、大きな「壁」を超えた。世間からは「奇跡のV字回復」と喝采を浴びたが、実は改革は道半ばにあった。不測の事態がふたたび起これば、二番底を打つ状況になりかねなかったのである。中西氏の後を継いで社長となった筆者は、相次いで改革に打って出る。それは、日立という巨大企業の中にいくつも立ちはだかっていた壁を叩き壊す作業であった。言い訳文化、事なかれ主義、縦割り組織、もたれ合い、先送り体質、忖度……同書は、日立最高幹部が現場力で「大企業病」に立ち向かい、世界に打って出た経営改革の実録である。組織の壁、事業の壁、歴史や伝統の壁、メンツの壁……「会社の壁」を破るのは、これを読んだあなただ!【目次】序章 日立という壁 第1章 ポラリスを見上げて 第2章 稼げる会社になる 第3章 ルマーダ始動 第4章 日立のDNA 第5章 大みか工場と私 第6章 ロスコストの清算 第7章 グローバルナンバーワンへ――日立グループの再編 第8章 私の経営理念――自律分散型グローバル経営 第9章 未来の日立のために
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●科学技術ニュース●パナソニック、AIアシスタントサービス「PX-GPT」を国内約9万人が本格利用開始

2023-04-20 09:35:05 |    人工知能(AI)
 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は、パナソニック コネクトが活用しているAIアシスタントサービス「ConnectGPT」をベースに全社版の環境を構築し、「PX-GPT」として、パナソニックグループの国内全社員に向けて展開した。

 パナソニックグループでは、DXへの取り組みを「Panasonic Transformation(PX)」として、ITシステム面の変革に留まらない経営基盤強化のための重要戦略と位置づけ、「IT変革」「オペレーティング・モデル変革」「カルチャー(企業文化)変革」の3階層で全社的に推進しており、今回の取り組みもその活動の一環となる。

 パナソニック コネクトでは、2023年2月17日のサービス開始以来、多くの社員が「ConnectGPT」を業務で活用している。また、パナソニック コネクト以外のパナソニックグループの社員からも、AIアシスタントサービスの業務活用の可能性の評価・検証や業務効率化のためのAI活用の要望があがってきていた。

 こで、パナソニックHDは、最先端のAIテクノロジーの導入と業務への適用をパナソニックグループ全体へ波及させることで、より多くのサービスやソリューションを創出するために、パナソニック コネクトの支援を得て、パナソニックグループ版AIアシスタントサービス「PX-GPT」を構築し、2023年4月14日より国内社員約9万人を対象に提供を開始した。

 パナソニックHDは、「PX-GPT」を国内全社員に広く提供することで、技術職だけでなく製造・営業など様々な部門の社員の生産性向上と業務プロセスの絶え間ない進化を実現するとともに、社員のアイデア・夢の実現や新たなビジネスアイデア創出への挑戦を促進する。

 また、社員が最先端のAIテクノロジーに日々自由に触れられる環境を提供することで、IT部門だけでなく全部門の社員に、AIの活用方法を加速度的に学習させ、新技術を利活用できる人材を育成していく。<パナソニック>

<PX-GPTの機能概要>

 日本マイクロソフトが提供する同社のパブリッククラウドMicrosoft Azure上で利用できるAzure OpenAI Serviceを活用しており、パナソニックグループの国内全社員が社内イントラネット上からアクセスすることで、いつでもAIを活用することができる。

 マイクロソフトが提供するGTP3.5の法人向けサービス(API提供型)のAIエンジンをベースに開発し、入力した情報の二次利用や第三者提供がされない仕様で、入力した情報は一定期間を過ぎたら消去するなど、セキュリティ面に配慮している。

 ユーザーインターフェースには使用に際しての注意喚起を明記している。英語で質問した方が、より精度の高い回答が得られることから自動翻訳機能も搭載。

 なお、PX-GPTの使用に当たっては、AI活用における利用ルールを整備し、入力情報の取り扱い(社内情報・営業秘密・個人情報などの入力はしない等)には細心の注意を払い、適切に情報を活用するよう全社員に注意喚起を徹底していく。
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●科学技術ニュース●第43回(2023年)「猿橋賞」、”宇宙気候学”の宮原ひろ子氏が受賞

2023-04-20 09:34:34 |    ◆受賞◆
 第43回(2023年)「猿橋賞」は、宮原ひろ子氏が受賞した。


 研究業績:「太陽活動の変動のメカニズムおよびその気候への影響に関する研究」

 黒点数やフレアー発生数の増減にみられる太陽活動の変動は、およそ11年の周期を基本としている。太陽活動に伴い、太陽が持つ巨大な磁場は大規模に変動し、大局的に見たN極とS極は活動のピークの度に逆転を繰り返している。太陽活動は、近年では地球に到来する(銀河)宇宙線によってもモニターされている。

 宇宙線粒子は電荷を持つため、太陽磁場の影響が及ぶ太陽圏内への侵入は常時阻まれているが、太陽活動が弱まると磁場も弱まり、地球にも流入しやすくなるからである。なお、地球に到来する宇宙線量は、太陽磁場の極性によっても影響を受けるので、太陽活動の基本周期の倍の22年周期も示すことが分かっている。

 放射性同位元素である炭素14(半減期約5700年)は、大気中の反応で宇宙線が作る中性子が窒素に吸収されてできるので、その量は宇宙線の流入量を反映する。このため植物や湖底の堆積物などに含まれる炭素14の量の測定から、過去の太陽活動の強弱を見積もることができる。

 宮原ひろ子氏は、長寿命の屋久杉などを使って、年輪を1枚ずつ剥がしてそこに含まれるごく微量の炭素14の量を測定することで、太陽活動の基本周期の長さが長期変動に伴ってどのように変化するのかを前例のない高い精度で復元することに成功した。

 この研究から宮原氏は、17世紀から18世紀にかけて黒点がほとんど見られなかった時期にも、弱いながらも活動周期が存在し、その長さが14年程度に長くなっていたことを発見した。この太陽活動が不活発な時期は小氷期と呼ばれた寒冷期にあたる。一方で、中世の温暖期の初期にあたる9世紀から10世紀には、太陽活動は非常に活発で、活動周期が9年程度に短くなっていたことも発見した。このことは、太陽活動の長期変動が、太陽内部の循環速度の変化と関係して起こることを示唆している。

 木の年輪の成長率からは、当時の気温を知ることができる。宮原氏の解析により、上記の寒冷期と温暖期の時期の気温変動の卓越周期は、それぞれ29年程度と19年程度であったことが分かった。これらは太陽活動周期の2倍の周期に相当しており、気候変動の原因に、宇宙線の地球への流入量の変動が寄与していることを示唆している。太陽活動に伴う日射量の変動は極めて小さいために、これまで謎であった太陽活動と気候変動の相関の原因が、初めて実証的に解き明かされたのである。

 宮原氏は、最近では炭素14の測定精度をさらに向上させ、近代の太陽面の直接観察から得られるのとほぼ同じ精度で11年周期を復元できるようにしたほか、過去に起こった巨大太陽フレアーを比較的規模が小さなものまで検出できるようにするなどして、太陽物理学の研究に貢献している。

 また、もう一つの宇宙線起源の放射性同位元素であるベリリウム10(半減期約140万年)を含む石灰質の堆積物を用いて、数10万年以上にわたって1年分解能で太陽活動を復元できる新たな手法を開発し、炭素14で測定できる時間範囲を超えて太陽活動を詳細に復元するプロジェクトも始めている。

 現在宮原氏は、武蔵野美術大学に所属しているが、これらの研究は、名古屋大学に始まり、東京大学、国立極地研究所、山形大学などの若い研究者との共同研究で進めてきた。宮原氏が始めた”宇宙気候学”の新しい研究ネットワークは、自大学のみならず全国的に拡大・発展を続けている。

 宮原氏は、太陽活動や太陽系周辺の宇宙環境が地球の気候や気象にどのような影響を及ぼしてきたのかを解説した書籍や、子ども向けの本も出版し、社会的に関心の高い気候変動についての話題を通して、一般の読者や子供たちに科学や研究の面白さを伝えている。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「固体物理学」(寺崎一郎著/日本評論社)

2023-04-20 09:33:56 |    物理



<新刊情報>



書名:固体物理学

編者:大塚孝治、佐野雅己、宮下精二

著者:寺崎一郎

発行:日本評論社(物理学アドバンストシリーズ)

 固体物理学の概念を、電子の性質を中心に記述する。その知識をもとに、現代物理学の話題である、多様な物質の機能を説明する。【目次】第1部 固体物理学の基礎 第1章 金属電子の古典論 第2章 量子力学の復習 第3章 結晶の電子状態 第4章 金属電子の量子論 第5章 半導体 第6章 格子振動 第2部 さまざまな物質の構造と機能 第7章 結晶と回折 第8章 強磁性体 第9章 超伝導体 第10章 トポロジカル物質
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