goo blog サービス終了のお知らせ 

“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●北海道大学など、環状高分子のリングの中に線状高分子が入り込んだネットワークポリマーの合成に成功

2023-09-05 09:46:04 |    化学
 北海道大学 大学院工学研究院の佐藤 敏文 教授、磯野 拓也 准教授、お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系の出口 哲生 教授、東北大学 多元物質科学研究所の陣内 浩司 教授、丸林 弘典 講師、防衛大学校 応用物理学科の萩田 克美 講師らの研究グループは、環状構造を持った高分子(環状高分子)とひものような高分子(線状高分子)の混合物に対して架橋反応を行うことで、環状高分子のリングの中に線状高分子が入り込んだネットワークポリマーの合成に成功した。

 リング分子に軸分子が貫通した「ロタキサン」は、軸分子両端のかさ高い構造の存在によって2つの分子が物理的につながった構造を持つ超分子であり、2016年のノーベル化学賞のトピックとしても注目されている。

 これまで知られているロタキサンはリング分子が比較的小さい小分子化合物に限られており、リング分子と軸分子の両方が高分子からできた巨大なロタキサンは全く注目されてこなかった。しかし、巨大なロタキサンは分子量や構造を調節することで未知の物性や機能が期待できるため、その合成は意義深い挑戦と言える。

 同研究グループは、環状高分子と線状高分子を混合した状態で線状高分子末端の架橋反応を行うことでロタキサンの形で環状高分子を取り込んだネットワークポリマーの合成に成功した。

 同研究グループが「マクロロタキサン」と名付けたこの巨大なロタキサンは、リング分子と軸分子の両方が高分子から形成されているため、環状高分子のリングの数や大きさを自在にアレンジすることができる。

 さらにロタキサンの形でネットワークポリマーに取り込まれた環状高分子は、材料からにじみ出さないにもかかわらず、液体のように振る舞ってエネルギー分散性を付与できることから、建築物に使われる免振ゴムのような制振材料やタイヤの素材などへ応用可能であることを実証した。今後、マクロロタキサンの特長を生かした新たな高分子材料の開発が期待される。<科学技術振興機構(JST)>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「化学研究者のための やさしくて役に立つ特許講座」(中務茂樹著/化学同人)

2023-08-09 09:41:05 |    化学



<新刊情報>



書名:化学研究者のための やさしくて役に立つ特許講座~化学特許の「いろは」を解説~

著者:中務茂樹

発行:化学同人

 化学研究者が知っておくべき特許の基本をやさしく解説した。「特許とはなんぞや」から始まり、出願から取得後の活用法まで、現場に精通した弁理士がていねいに解きほぐす。読みやすいが、深くてためになる決定版入門書。【目次】 PART Ⅰ.特許制度 PART Ⅱ.特許される発明 PART Ⅲ.特許出願する前に PART Ⅳ.特許出願書類の作成、読み方 PART Ⅴ.特許出願の審査と外国への出願 PART Ⅵ.メディカル発明の特殊性 PART Ⅶ.特許権の活用
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「動かして理解する 第一原理電子状態計算<第2版>」(著/前園 涼、市場友宏)

2023-08-08 09:31:45 |    化学



<新刊情報>



書名:動かして理解する 第一原理電子状態計算<第2版>~DFTパッケージによるチュートリアル~

著者:前園 涼、市場友宏

発行:森北出版

 今日の材料科学に欠かせない第一原理電子状態計算。手法やパッケージが整備され、シミュレーションを専門とする研究者でなくても扱えるツールになってきている。同書は、実験系研究者などの「具体的ミッションをもつ初学者」がいち早く第一原理電子状態計算を実務で扱えるようになるための入門書。長年「第一原理計算チュートリアル」を実施してきた著者が、その概念と実務をわかりやすく丁寧に解説。密度汎関数法(DFT)の無料パッケージQuantumEspressoを動かしながら、押さえるべき勘所を体得する。Linuxコマンドの扱い方から、論文に記載すべき重要なパラメタの設定法、さらには、マテリアルズインフォマティクス時代の研究体制構築のポイントまで、効率よく学べる。第2版では構成を一部見直し、Linux初心者により配慮した内容になった。また、ソフトウェアやOSのアップデートに対応するためのサポートページを用意した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「持続可能な社会を支えるゴム・エラストマー」(日本化学会編/化学同人)

2023-05-30 09:34:19 |    化学



<新刊情報>



書名:持続可能な社会を支えるゴム・エラストマー~新素材・自己修復・強靱化と最先端評価技術~

編者:日本化学会

発行:化学同人

 エラストマーは、常温で弾性を示す物質であり、粘弾性を示すゴムが代表だ。タイヤ用途が中心だが、電子材料や医療用材料からビル(免震ゴム)や橋桁などの巨大建造物まで、その用途は広がりを見せている。とりわけ化学架橋構造を持たない熱可塑性エラストマーの利用は大きく進展している。同書では、バイオマス材料である天然ゴムの研究、天然ゴムを凌ぐ新たなゴム素材の開発、熱可塑性エラストマーと新エラストマーの開発や多様な解析手法を、基礎と応用バランス良く紹介する。【目次】PartⅠ 基礎概念と研究現場(フロントランナーに聞く/活躍するエラストマー/エラストマーの基礎科学/エラストマーの素材と応用) PartⅡ 研究最前線(天然ゴム素材とその改変/高シスポリイソプレン/熱可塑性エラストマー/環動ゲルのエラストマー応用/ゴムNMR法(FG-MAS固体NMR法)/散乱法によるゴムの階層構造解析/ひずみを可視化できる液晶エラストマー/他) Part Ⅲ 役に立つ情報・データ(革新論文/他)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「理工系学生のための基礎化学 無機化学編」(川口博之、植草秀裕、八島正知、火原彰秀、小松隆之著/化学同人)

2023-05-29 09:49:35 |    化学



<新刊情報>



書名:理工系学生のための基礎化学 無機化学編

著者:川口博之、植草秀裕、八島正知、火原彰秀、小松隆之

発行:化学同人

 同書は無機化学基礎を掲載。全7章構成。第1章では原子の構造について学び、第2章では原子構造に基づいて元素の周期律を理解し物質の構造と性質を考える。第3章では原子が共有結合で結びついた分子の構造を学ぶ。第4章と第5章では、われわれの文明生活を支える固体材料の性質を理解するのに必要な基礎を身につけるため、固体の結晶構造を理解し、続いて固体における化学結合と電子状態を学ぶ。第6章では化学結合や元素の性質が典型的に現れる無機反応−酸塩基反応,酸化還元反応を理解する.第7章では,われわれの世界に華やかな色を添える染料や宝石に含まれる錯体の性質を学ぶ。毎章、章末問題があり、理解の確認ができる。化学科の教員による執筆で、コンパクトに無機化学の重要事項が記載されている。4学期制に使いやすい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「理工系学生のための基礎化学 有機化学編」(鈴木啓介、後藤 敬、豊田真司、大森 建著/化学同人)

2023-05-26 09:31:14 |    化学



<新刊情報>



書名:理工系学生のための基礎化学 有機化学編

著者:鈴木啓介、後藤 敬、豊田真司、大森 建

発行:化学同人

 同書は有機化学基礎を掲載。全7章構成。第1章では有機化合物の結合を理解するための共有結合と混成軌道について学び、第2章では有機化合物の構造や立体異性体を説明、第3章では結合の分極と酸と塩基の理論について解説。第4章ではハロゲン化アルキルの求核置換反応と脱離反応、第5章ではアルケンに対する求電子付加反応、第6章では芳香族化合物の求電子置換反応、第7章ではカルボニル化合物のさまざまな反応について説明。これらの反応は有機化学でよく見られ、反応がどのような過程で進行するか、すなわち反応機構の基礎を学ぶために重要である。毎章、章末問題があり、理解の確認ができる。化学科の教員による執筆で、コンパクトに有機化学の重要事項が記載されている。4学期制に使いやすい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「DLCの基礎と応用展開<普及版>」(大竹尚登監修/シーエムシー出版)

2023-05-09 09:33:55 |    化学



<新刊情報>



書名:DLCの基礎と応用展開<普及版>

監修:大竹尚登

著者:大竹尚登ほか

発行:シーエムシー出版

 2016年刊「DLCの基礎と応用展開」の普及版。DLC(ダイヤモンドライクカーボン:Diamond-Like Carbon)技術の構造分析、評価などの基礎理論から各種応用技術までを網羅した1冊。DLC膜は、宝石で知られるダイヤモンドと炭で知られるグラファイトの中間の物質で、ダイヤモンドのsp3結合とグラファイトのsp2結合の両者を炭素原子の骨格構造としたアモルファス炭素膜である。DLC中のダイヤモンド結合の成分は20~90%と幅広く、水素を0~50%含み、さらにシリコンなどの第3元素を含むこともあるので、一言でDLCと言ってもその物性は千差万別である。そこで、DLCを何種類かに分けて産業応用しやすくする必要に迫られており、現在DLCの標準化が検討されている。DLCは以前と比較して随分身近な存在になった。自動車を例にとれば、F1クラスにしか用いられていなかったDLCコーティング部品が、100万円台の市販車にも用いられている。低燃費が希求される自動車業界にあって、摩擦係数の低い表面を実現できるDLCは、今後ますます重宝される存在になるだろう。本書は、主にDLCの応用を扱ったものであるが、用途拡大に必要な基礎的視座を重視し、DLCの構造、表面修飾についても詳述している。もちろん応用の基幹をなす機械的特性とトライボロジー特性については多くのページを割いている。DLCの応用とそれを支える基礎技術について、読者の皆様に多くの気づきがあることを期待する。(「はじめに」より一部抜粋)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「難水溶性薬物の経口製剤化技術最前線<普及版>」(川上亘作監修/シーエムシー出版)

2023-05-05 09:34:55 |    化学



<新刊情報>



書名:難水溶性薬物の経口製剤化技術最前線<普及版>

監修:川上亘作

著者:川上亘作ほか

発行:シーエムシー出版

 2016年刊「難水溶性薬物の経口製剤化技術最前線」の普及版。難水溶性薬物製剤化のための開発戦略、原薬物性評価、共結晶や非晶質固体分散体、ナノ結晶製剤など製剤技術を詳述した1冊。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「<新版> はじめての電子状態計算」(小和田善之、小笠原一禎、水野正隆著/三共出版)

2023-04-27 10:37:24 |    化学



<新刊情報>



書名:<新版> はじめての電子状態計算~DV-Xα分子軌道計算への入門~

著者:小和田善之、小笠原一禎、水野正隆

発行:三共出版

 1998年に刊行した「はじめての電子状態計算」は、わかりやすい丁寧な解説とCD-ROM付でDV-Xαプログラムがパソコン上で簡単にできるということで好評を博してきたが、今回、進化する量子化学に合わせて本文を全面的に改訂し、プログラムもリニューアルした。さらにプログラムは同書記載のアカウントよりダウンロードできるようになり、より使いやすくなっている。【プログラム内容】◆DV-Xα分子計算プログラム◆光電子スペクトルおよびX線吸収スペクトル計算プログラム◆秀丸エディタを使用したDV-Xα法のための統合支援環境◆相対論DV-Xα法計算プログラム◆非相対論DVME法計算プログラム 【目次】 1 電子状態計算とは 2 必要な計算環境の構成 3 DV-Xα 分子軌道計算の基本操作 4 各種プログラムの解説 5 クラスター法による結晶の計算 6 DV-Xα法のための統合支援環境 7 いろいろな計算 8 付録
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「フロンティア・ナノ金属錯体化学」(山下正廣・小西克明編著/三共出版)

2023-04-26 09:33:34 |    化学



<新刊情報>



書名:フロンティア・ナノ金属錯体化学

編著:山下正廣・小西克明

著者:秋吉亮平・芥川智行・有賀克彦・井口弘章・伊藤肇・内田さやか・加藤恵一・川脇徳久・河野慎一郎・日下心平・米田忠弘・澤田知久・陳旻究・七分勇勝・鈴木康介・高石慎也・高野慎二郎・田所誠・田中健太郎・佃達哉・中西亮・中村貴義・根岸雄一・芳賀正明・速水真也・福嶋貴・牧浦理恵・松田亮太郎・山内美穂・山林奨・吉田健文

発行:三共出版(錯体化学会フロンティア選書)

 日本が世界をリードする「ナノ金属錯体」。同書では、(1) ナノ金属クラスター、(2) 界面ナノ金属錯体、(3) 単分子スピントロニクス、(4) 超分子ナノ金属錯体、(5) 低次元ナノ金属錯体、に焦点を当て、基礎から最先端の研究成果まで、日本のトップ研究者、総勢33名が総力を挙げてわかりやすく解説。金属錯体の最新の「ナノワールド」をあなたに。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする