ウクライナ
ロシアのウクライナ侵攻から8か月、国土防衛軍は必至に戦うが、意味なく攻め込む側の士気は上がらない。21世紀に時代遅れのリーダーを戴くロシアの不幸であり、隣国の悲劇であった。
遂にプーチンは小型核のスイッチに手を触れるところまで来ているという情報がもっぱらである。しかし、ウクライナ側は、国土を踏み荒らされ、侵略されたままで停戦するわけにはゆかない。初期の頃、日本の論者の一部に、「ウクライナはさっさと降伏して国民の生命を危険に晒すのを止めるべきだ」というのがあった。平和ボケ、腰抜け体質をよく表現している言葉であった。
その点、ウクライナのゼレンスキー大統領は違った。今後もたとえ核攻撃を受けたとしても一歩も引くことはないだろう。プーチンは米国の広島、長崎への原爆投下さえ挙げて、核の脅しを現実のものとし、戦況の好転を目論む。しかし核兵器の使用は、第三次世界大戦を誘導する。その勝者は居ない。
所詮、人類は駄目な生き物である。地球上に80億人も要らない。ただ核戦争は人類だけでなく、ただでさえ絶滅危惧種の多い中、多くの生物も巻き添えとなる。
プーチンはすでに、ナチスドイツのヒトラーのように、人類の世界史に悪名を止めることになっているが、その汚名にさらに上書きするつもりだろうか。
この侵略、落としどころにプーチンも苦慮しているように見える。当初は彼も、「ウクライナはさっさと降伏して、国民の生命を危険に晒すのを止めるべきだ」との第三者の声の高まりに期待して、ウクライナ政府がさっさと白旗を揚げると思っていたのではないか。
それにしても2014年の、ロシアがクリミア半島を制圧した時、ウクライナはほとんど抵抗しなかったのかどうか。日本の政府もマスコミも大きな声を上げなかったようで、私などほとんど知らない間に、ロシアが半島を占拠し、立派な橋まで作っていた。当時の日本の政権は、ロシアとの北方領土返還交渉があり、ロシアを刺激するような言動を、マスコミにさえ封印したのか。挙句プーチンに貢いだだけで、今回の戦費の足しになった。プーチンには、クリミアの成功体験が、ウクライナ本土への侵攻を促したのであろう。
停戦交渉としてトルコのエルドアン大統領なども登場したりしていたけれど、もともとトルコは帝政ロシアにいじめられ続けていた国である。調停役として相応しいのかどうか。関連したテレビの報道番組の受け売り的だが、停戦の条件として、ロシアはプーチンの立場維持と、先に住民投票によってロシア領としたこの度の侵攻で占拠した地域を新たなウクライナとの国境線とすること。しかし、ゼレンスキーは一歩も引かず、クリミア半島まで奪還しての停戦でなければ矛を収めない覚悟のようだ。調停は難しかろう。
ロシアの核使用の可能性は51%などという、もっともらしくもいい加減な見方もあるが、ゼレンスキー大統領は核兵器の脅しにも屈しない。今のところこの紛争の落としどころは、ロシア国内の反乱に期待するしか、ないのではないか。