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中小企業白書を読む第5回

2009年08月13日 | Weblog
中小企業のイノベーション

 2009年白書では、その副題の通り「イノベーション」と「人材」を中心テーマに各種統計データが提供され、考察が述べられている。

 『そもそも、「イノベーション」とは、一般に、企業が新たな製品を開発したり、生産工程を改善するなどの「技術革新」だけにとどまらず、新しい販路を開拓したり、新しい組織形態を導入することなども含むものであり、広く「革新」を意味する概念である。特に中小企業にとってのイノベーションは、研究開発活動だけでなく、アイディアのひらめきをきっかけとした新たな製品・サービスの開発、創意工夫など、自らの事業の進歩を実現することを広く包含するものである。

 現在、厳しい経済環境の中にあるにもかかわらず、なぜ中小企業はイノベーションの実現に取り組んでいくことが重要とされるのであろうか。まず、そこから考察を始めることにしよう』

 そして、まず図表に、97年から06年の間の景気後退局面においては中小企業の売上高経常利益率は低下し、それと連動して設備投資額の売上高に占める割合も低下していることを示している。しかし、中小企業における研究開発費の売上高に占める割合は、その景気循環の中でも、一定水準(0.6-0.7%)で推移しているのである。すなわち「景気後退局面で厳しい経済環境にあるものの、中小企業は研究開発活動を重視し、研究開発活動に継続的に取り組んでいる可能性を示唆している」と述べている。

 その次の図表は、中小企業における研究開発費が売上高に占める割合と営業利益率の推移である。94年から06年まで、研究開発費が売上高に占める割合が2.5%以上の企業の営業利益率は3.8%から6.6%で推移し、2.5%から4.0%で推移する2.5%未満(0%を除く)の企業をいずれの年次でも上回っている。すなわち研究開発費が売上高に占める割合が高い企業ほど、営業利益率も高い傾向にあることを明確に示している。

 また、イノベーションを実現し、売上高に占める新製品の比率が一定程度高い中小企業ほど、売上高が増収傾向にある。そしてそのイノベーションへの取り組みは、中小企業では大企業に比べて、経営者のリーダーシップの比重が大きい。大企業が組織としてシステマチックにイノベーションに取り組むのに比べて、中小企業はどうしても経営者の資質やリーダーシップに依存するのである。

 また、中小企業と大企業の差異が特徴的なのは、イノベーションの実現に向けた課題にある。大企業も中小企業いずれも「適切な人材の維持・確保が難しかった」、「活動のビジョン・戦略が明確でなかった」や「従業員の動機づけ(やる気の維持)が難しかった」が上位に並ぶが、大企業では1%に過ぎない「資金調達が難しかった」という課題は、中小企業では18%を占めて2番目に大きな課題となっていることである。

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