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中小企業白書を読む第6回

2009年08月16日 | Weblog
中小企業の求める人材

 先に、イノベーションの実現に向けた課題では、大企業も中小企業いずれも「適切な人材の維持・確保が難しかった」とあることを述べた。それでは白書は中小企業が求める人材をどのように捉え、考察しているか。

 白書、第2章第4節「技術革新を生み出す技術・技能人材の育成」では、『中小企業が、新製品・新サービスの開発等によるイノベーションを実現してゆくためには、研究開発や生産プロセスの改善等の過程でアイディアを生み出し、それを実現していく技術・技能人材の役割が極めて重要である』としながら、まず時代の変遷による求められる人材像の変化を捉えている。

 中小企業が技術・技能人材に求める知識・能力のトップは、「複数の技術・技能に関する幅広い知識」で、これは5年前も現在も5年後の見込みとしても、時間軸で若干下降気味ではあっても他を引き離している。

 一方5年前の順位では2番目である「加工・組立に関する知識・能力」は、現在では5番目に重要な知識・能力とされ、5年後の見込みでは6番目までランクを下げている。5年前に3,4番目の「特定の技術・技能に関する専門知識」と「生産工程を合理化する知識・能力」は現在も5年後も重要度は評価されており、順位を入れ替えて2,3番目を占めた。

 先の「加工・組立に関する知識・能力」に加えて「生産設備の保守・管理能力」が過去から未来で大きくランクを下げる一方、「顧客ニーズを把握し、製品設計化する能力」、「顧客ニーズを把握するためのコミュニケ-ション、プレゼンテーションができる能力」や「製品の問題点を抽出し、改善提案を行うコンサルティング能力」はランクを上げている。すなわちより顧客に近いところへの対応能力が求められるようになって来たと見る。また、イノベーションへの期待を示すものとして「革新技術を創造していく能力」は5年前の10番目から5年後見込みで7番目までランクを上げている。

 白書から外れるけれど、現在では大企業は勿論、中小企業でもある種ベンチャーといわれる企業では、研究開発部門に高学歴の技術者ばかりを採用しているところもあるようだ。確かに高度な固有技術を必要とする分野においては、高い技術力が必要で、例えば一流大学の修士課程以上の学歴者を集めるのは分かる。しかし、多様性とは幅に加えて深さもある。同じような学歴者だけで組織を構成すると、彼らの専門分野は違っても、同じような境遇で育って来た人材ばかりとなり、真に発想の異なりを得られないこともあり得る。私どもの時代は、工業高校程度の学歴ながら周囲と異なった発想で研究開発に貢献することも多かった。人材にはいろんな角度からの多様性を求めることが必要であろう。
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