経済情勢(とマニフェスト)
中小企業白書の構成は、まず発行前年の中小企業を巡る経済情勢の分析に始まる。2009年版白書は例年より少し遅れて、6月末に発刊された。景気の極端な悪化の状況の見極めに手間取ったためと推測する。その第1章は、「2008年度における中小企業を巡る経済金融情勢」であり、種々の経済指標が折れ線グラフなどで示されている。
その中の最初のグラフ「国別、地域別の実質経済成長率」(IMF統計)を見ると、2001年から2004年まで、いずこも成長率の上昇が続き、わが国も2004年には2%を超えている。その後アジアを除くわが国を含めた諸国は横ばいで推移し、2008年(予測)、2009年(予測)と全世界で急速に下落する。特に日本では2008年で▲0.3%*2)、2009年は▲2.6%と予測され、米国も1.6%のマイナス成長である。このため世界全体の成長率もマイナスであるけれど、アジアは2007年ピーク時の10%超の成長から5.5%まで下落するもプラス成長を維持する。
誰もが耳タコであろうけれど、「100年に1度といわれるこの世界的大不況」の下で、2009年予測の成長率が世界全体でマイナス2%である。その程度のものかと思ってしまう。例えば日本のGDP(国内総生産)でみた場合、2007年のそれは561兆円で、そこから0.3%、さらに2.6%成長率が低下してもGDPは545兆円に低下する*3)だけで、それは2005,6年の規模に戻るだけだ。しかもこの4-6月期の大手企業の決算はすでに回復傾向を示しており、最終的な成長率は今年の白書予測より上昇する可能性もある。
しかし、これは年収561万円の家庭が2年間で年収545万円(522万円)*3)に下がるというのとは異なる概念で捉える必要がありそうだ。2007年度には1兆数千億円の利益を上げていたトヨタ自動車が、2008年秋以降の景気低迷で一気に数千億円の赤字に転落したけれど、企業の設備投資(すなわち成長)は、その目論見が外れて新たな設備の稼働がなければ、その固定費負担であっという間に赤字になる。国や世界の経済も同様で、前年度の成長分が新たな成長に結びつかない場合は苦しくなるのだ。
経済学で、中央銀行が直接供給する貨幣量すなわちハイパワードマネー(H)が「信用創造」によってm倍(マネーサプライM=m*4)×H)に膨らむことを学んだけれど、恐らくその真逆に近い現象が起こるのであろう。
それにしても、このような経済状況の中、総選挙の各党マニフェストはバラマキ合戦に終始している。特に次期政権を担うと見られている民主党には改めてあきれる。政権を担う4年間の国民との約束で十分として、中長期の目標も掲げる自民党マニフェストを批判しているけれど、それは経営というものが全く分かっていないことを意味する。この国をどのような方向に導こうとするのかのビジョンも示さず*5)、2007年参議院選挙で功を奏した農家への個別補償の柳の下で、子供手当てや高速道路無料化等々。選挙に勝てばいいと考えるのは分かるけれど、それは国民を軽蔑していることではないか。麻生首相は財源が見えないことを批判しているけれど、問題は財源ではなく、国民の心を蝕むことが問題ではないのか。
現在の自民党も対抗して似たようなことをやっているのだけれど、不労所得を得た人間の精神の堕落を考えるべきだ。昔からたとえ貧民でも、日本人の親は、子供にさえ他人からの謂れなき施しを拒否することを教えたものだ。ここらあたりの機微は、共に御曹司である鳩山代表も麻生首相も同じ程度に分かってはいないと見えてしまう。しかも子供手当ては一時的な定額給付金と違い、将来さらなる財政難でも止めるのが難しい。
また、高速道路は無料化でなく、償却済み路線を除き日常は半額化程度で十分ではないのか。一般道と比べてはるかに快適な道路は、やはり受益者負担を幾らかは要求すべきだ。車で高速道路を走れる人は、日々の暮らしに困窮している人などいない。通行を多くすることでの経済効果はあろうが、電気自動車は追いついておらず、CO2の増加はどうするのか。ガソリン税の廃止も同様の問題を含んでいる。
*2)近々のデータでは▲3.5%というのもある。
*3)2009年も2008年と同様▲3.5%のマイナス成長と考えればGDPは2007年から39兆円減の522兆円
*4)信用乗数あるいは貨幣乗数
m=(c+1)/(c+r) c:現金預金比率、r:法定準備率
*5)5原則5策では抽象的、本質を避けている
旧社会党系党員との調整が全くついていないものと考える
憲法問題、防衛、日米安保、対北朝鮮や中国政策
中小企業白書の構成は、まず発行前年の中小企業を巡る経済情勢の分析に始まる。2009年版白書は例年より少し遅れて、6月末に発刊された。景気の極端な悪化の状況の見極めに手間取ったためと推測する。その第1章は、「2008年度における中小企業を巡る経済金融情勢」であり、種々の経済指標が折れ線グラフなどで示されている。
その中の最初のグラフ「国別、地域別の実質経済成長率」(IMF統計)を見ると、2001年から2004年まで、いずこも成長率の上昇が続き、わが国も2004年には2%を超えている。その後アジアを除くわが国を含めた諸国は横ばいで推移し、2008年(予測)、2009年(予測)と全世界で急速に下落する。特に日本では2008年で▲0.3%*2)、2009年は▲2.6%と予測され、米国も1.6%のマイナス成長である。このため世界全体の成長率もマイナスであるけれど、アジアは2007年ピーク時の10%超の成長から5.5%まで下落するもプラス成長を維持する。
誰もが耳タコであろうけれど、「100年に1度といわれるこの世界的大不況」の下で、2009年予測の成長率が世界全体でマイナス2%である。その程度のものかと思ってしまう。例えば日本のGDP(国内総生産)でみた場合、2007年のそれは561兆円で、そこから0.3%、さらに2.6%成長率が低下してもGDPは545兆円に低下する*3)だけで、それは2005,6年の規模に戻るだけだ。しかもこの4-6月期の大手企業の決算はすでに回復傾向を示しており、最終的な成長率は今年の白書予測より上昇する可能性もある。
しかし、これは年収561万円の家庭が2年間で年収545万円(522万円)*3)に下がるというのとは異なる概念で捉える必要がありそうだ。2007年度には1兆数千億円の利益を上げていたトヨタ自動車が、2008年秋以降の景気低迷で一気に数千億円の赤字に転落したけれど、企業の設備投資(すなわち成長)は、その目論見が外れて新たな設備の稼働がなければ、その固定費負担であっという間に赤字になる。国や世界の経済も同様で、前年度の成長分が新たな成長に結びつかない場合は苦しくなるのだ。
経済学で、中央銀行が直接供給する貨幣量すなわちハイパワードマネー(H)が「信用創造」によってm倍(マネーサプライM=m*4)×H)に膨らむことを学んだけれど、恐らくその真逆に近い現象が起こるのであろう。
それにしても、このような経済状況の中、総選挙の各党マニフェストはバラマキ合戦に終始している。特に次期政権を担うと見られている民主党には改めてあきれる。政権を担う4年間の国民との約束で十分として、中長期の目標も掲げる自民党マニフェストを批判しているけれど、それは経営というものが全く分かっていないことを意味する。この国をどのような方向に導こうとするのかのビジョンも示さず*5)、2007年参議院選挙で功を奏した農家への個別補償の柳の下で、子供手当てや高速道路無料化等々。選挙に勝てばいいと考えるのは分かるけれど、それは国民を軽蔑していることではないか。麻生首相は財源が見えないことを批判しているけれど、問題は財源ではなく、国民の心を蝕むことが問題ではないのか。
現在の自民党も対抗して似たようなことをやっているのだけれど、不労所得を得た人間の精神の堕落を考えるべきだ。昔からたとえ貧民でも、日本人の親は、子供にさえ他人からの謂れなき施しを拒否することを教えたものだ。ここらあたりの機微は、共に御曹司である鳩山代表も麻生首相も同じ程度に分かってはいないと見えてしまう。しかも子供手当ては一時的な定額給付金と違い、将来さらなる財政難でも止めるのが難しい。
また、高速道路は無料化でなく、償却済み路線を除き日常は半額化程度で十分ではないのか。一般道と比べてはるかに快適な道路は、やはり受益者負担を幾らかは要求すべきだ。車で高速道路を走れる人は、日々の暮らしに困窮している人などいない。通行を多くすることでの経済効果はあろうが、電気自動車は追いついておらず、CO2の増加はどうするのか。ガソリン税の廃止も同様の問題を含んでいる。
*2)近々のデータでは▲3.5%というのもある。
*3)2009年も2008年と同様▲3.5%のマイナス成長と考えればGDPは2007年から39兆円減の522兆円
*4)信用乗数あるいは貨幣乗数
m=(c+1)/(c+r) c:現金預金比率、r:法定準備率
*5)5原則5策では抽象的、本質を避けている
旧社会党系党員との調整が全くついていないものと考える
憲法問題、防衛、日米安保、対北朝鮮や中国政策