DVD「ブランカニエベス」

DVD「ブランカニエベス」(2012 スペイン・フランス)

無声映画のスタイルでつくられた映画。
白黒で、画面は正方形。
音声はなく、セリフはカットのあいだにはさまれる、黒地に白文字の字幕でみせる。
なぜか字幕は英語。

この白黒の画面と音楽が、とても美しい。
それに場面の状況をみせるのがうまいので、退屈さがまるでない。

タイトルの「ブランカニエベス」とは、白雪姫のこと。
この映画は白雪姫が闘牛士になるという、スペイン風の白雪姫の物語なのだ。

時代は1920年代。
プロローグは闘牛の場面から。
6頭の猛牛を次々に相手にしていた闘牛士アントニオは、牛に倒されてしまう。
そのショックで妻のカルメンは産気づき、娘のカルメンシータを産む。
カルメンは亡くなってしまい、アントニオは一命をとりとめるが、四肢が不自由になり車イスの生活に。

カルメンシータは、カルメンの母のもとですくすくと成長。
だが、この祖母も亡くなり、カルメンシータは父の屋敷に引きとられる。

アントニオは邪悪な看護婦エンカルナと再婚。
カルメンシータは絶対に2階にいってはいけないと、この継母にいわれる。
カルメンシータがあてがわれたのは、地下の石炭置場。
それからは、水をくみ、洗濯をし、石炭をすくってはかごに入れるといった下働きの毎日。
一緒に連れてきたニワトリのペペも、ニワトリ小屋に入れられてしまった。

が、ペペが小屋を抜けだし、屋敷のなかへ入りこんだことから、カルメンシータはいってはいけない2階へ。
そこではじめて、車イスの父と対面する。

以後、たびたびカルメンシータは父のもとへ。
童話を読んでもらったり、闘牛の手ほどきを受けたり。

だが、その幸せもつかのま。
父親は継母の手により亡き者にされてしまう。

こうなると、最後の邪魔者は成長したカルメンシータ。
継母の命令で、父の墓にそなえる花を摘みに森にいったカルメンシータは、そこで継母の下男に襲われてしまう。
が、カルメンシータは生きていた。
6人の小人の面々に助けられたカルメンシータは、記憶を失ってしまい、名前も思い出せなくなる。

小人たちは、旅芸人であり闘牛士。
訪れた町や村で、子牛を相手にしたコミカルな闘牛をみせる。
あるときアクシデントがあり、小人のひとりが子牛に倒されてしまう。
カルメンシータは驚くが、まわりの小人は、これが客に受けるんだよと意に返さない。

カルメンシータは衝動的に闘牛場のなかへ。
そして、本職の闘牛士のようにうまく子牛をあしらい、満場の喝采を得る。

カルメンシータは、おとぎ話から名前をとって、ブランカニエベスと名づけられる。
「白雪姫と7人のこびと闘牛士たち」として、各地で巡業。
次第に評判が上がり、ついには父が負傷した闘牛場に出演することに。
が、その評判を聞いた継母エンカルナも闘牛場に姿をあらわして――。

この映画は、無声映画のスタイルをとっているので、状況を視覚的にあらわすことによく注意を払っている。
幼いカルメンシータは、初聖体式のとき白いドレスをつくってもらう。
だが、祖母が亡くなると、そのドレスは黒に染められる。

また幼いカルメンシータが、成長した娘へと姿を変える場面。
洗濯ものを干しながら、闘牛士の真似事をしているカルメンシータが、シーツの陰にかくれ、あらわれると美しく成長している。
じつに見事なワンカットだ。

継母の悪辣ぶりもわかりやすくて楽しい。
着飾ったり、下男にまたがったり、肖像画を描かせたり。
無声映画のスタイルに凝ることができたのは、よく知られたおとぎ話の骨組みがあってのことだろう。

ブランカニエベスとなったカルメンシータは、一時、継母の手から逃れる。
とはいえ、それでカルメンシータの受難は終わらない。
カルメンシータが子牛から助けた小人は逆恨みをし、その後カルメンシータに恥をかかせる機会を狙い続ける。

最後には、ちゃんと毒リンゴも登場。
もちろん、継母がカルメンシータに渡そうとするのだが。


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