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もう一つの原理主義

2004-09-26 00:04:47 | 国際・政治
9・11以降顕在化した国際テロリズムはアフガンから始まりスペイン、インドネシア、ロシア等に次々と飛び火してとどまることを知らない。地域的な民族紛争とイスラム原理主義が結びついて資金や武器、戦術の支援を得て国際テロリズムネットワークに変化した。しかし、彼らは一体何に対して戦っているのであろうか。共通の敵は誰だろうか。私はもう一つの原理主義、榊原英資氏のいう「市場原理主義」に対する戦いではないかと考える。

70年代の石油危機の結果生じたオイルダラーを西欧諸国に還流する金融資本の移動の仕組が確立され資本主義のグローバル化が始まった。80年代半ばにソ連邦が崩壊、冷戦構造が終結し、国境は資本と情報の移動を塞げる障害ではなくなり資本主義のグローバル化が進展した。金融資本は物質的な投資よりはるかに動きやすくグローバル資本主義システムの中で金融市場の影響力が一段と高まった。レーガン・サッチャー政権は経済から国家を切り離し市場メカニズムの動きに任せる、即ち為替レート、金利、株価が密接に関連して変動する国際金融市場の発達を加速させる決定的な役割を果した。80年代前半から米国経常収支の赤字の推移とグローバルマネーの傾向が見える。日欧の投資はリスクを避け米国に投資し、米国からハイリスクの周縁に投資される傾向があったが、今世紀に入り直接投資が増えてきた。主要投資家は年金、投資信託、保険会社であり、郵貯も民営化されれば市場原理主義のもとで運用されグローバルマネーになる。それ以外に選択はない。

グローバル資本システムは純粋に機能的性格なものであり、生産・消費・モノやサービスの交換といった経済機能である。このシステムにはセンターと周縁があり、センター資本の提供者、周縁は利用者である。資本をセンターに吸い込み周縁に送り出す巨大な循環系のようなものである。不安定な時代には資本は本国に戻る傾向があり、これに対し主権国家は資金の逆流が起こると防ぐ弁の働きをし、システムの崩壊を引き起こしてしまう。システムは完全競争原理に基づくイデオロギーに支えられており、自由競争に対する制約は何であれ市場メカニズムの効率を損なうもので、それゆえ阻止すべきであるという正に市場原理主義そのものなのである。全ては市場価値で評価され決定される。

センターはニューヨーク・ロンドン・東京であり、周縁は効率的な回収が期待できる投資先、例えば資源国である。株主価値重心の経営が示すように、金儲けを唯一の目的とする経済組織がかつてないほど経済生活を支配するようになった。従来市場価値では評価できない文化、政治、環境などの社会的な価値まで経済活動に置き換えその市場価値で判断するようになり、人々の生活や社会を支配するようになった。グローバル資本主義システムを構成する国は民主主義国だが、周縁を構成する国は必ずしも民主主義国ではないし、個々の国を民主的な方向に進める力はない。市場価値を最大にするのは専制体制であっても強力で安定した体制のほうが往々にして好都合である。資本主義では価値基準はマネーであり、民主主義は市民の票である。  

トータルで見るとグローバル資本主義システムは実質的な成果を上げており決して過小評価すべきではない。あまりにも市場原理主義が上手く機能し過ぎたため、システムの参加者が自らの責任と思わない領域でマイナス面が同じように大きくなった。 国際的な債務危機においては貸し手の方がはるかに有利で、会社更生法のような仕組はなく債務国は能力の限界まで返済を求められ何年も重くのしかかる。貧しい国々にとって経済開発に不可欠な外国資本を誘致し、アジアの急成長をもたらし、今も中国に大量の資本が投下され躍進を支えている。同時に特に周縁国家の富の偏在を加速し、市場原理主義は従来社会的価値に脅威を与えることになり別の形で政治問題化したのである。

参考文献
「Time: The Struggle within Islam」9/13/2004
「中国WTO加盟の衝撃」鮫島敬治 2002年 日本経済新聞
「グローバルマネーシフト」野村證券金融研 2000年 東洋経済新報
「グローバル資本主義の危機」G.ソロス 1999年 日本経済新聞


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