かぶれの世界(新)

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米国の信用低下

2007-07-08 11:24:43 | 国際・政治

2月の世界同時株安をきっかけにしてポートフォリオを見直し株式投資を止めたと報告した。毎日相場を眺めて一喜一憂することから開放されてボランティア活動などにもっと時間を割こうというものだった。それから4ヶ月たって世の中の動きに鈍感になった気がする。

時々寝坊するし、余程大きなニュースや相場の急変でもない限り朝方ゆっくり大リーグ中継を見、新聞や本を読むようになった。市場が開いている時間でも気にせずバドミントンやエキササイズをするようになった。しかし、今日のテーマは私の生活振りではない。もう一度頭を働かせて、どうも世界は変わり始めた、という仮説を書いてみる。

それは米国の信用力が低下していると実感することが増えたことだ。超大国としての軍事力が落ちた訳ではないが、イラク・アフガニスタンの泥沼化、BIRICsや資源国の台頭、北朝鮮やイラクの挑戦、中南米の反抗など米国軍事力の限界を見透かされて、米国の外交政策が悉く行き詰まり不透明感を増している。

ブッシュ政権のイラク戦争の失敗が極めて象徴的に米国の限界を示した。イラクに軍事力を全力投入させなければいけない事態は、米国が他地域に軍事的影響力を行使する選択肢を決定的に狭めることになったのは誰の目にも明らかになった。

米国がくしゃみをしても元気な世界

実は経済の分野でも相対的な力関係の変化が劇的に起こっている。米国経済は住宅バブルが萎んだ昨年から成長がスローダウンし、今年は踏み止まっても2%前後に落ち着くと見られている。それにもかかわらず、世界経済は絶好調で4%台後半の成長が予測されている。

米国が引っ張らなくても何とかなるという状況は従来とは異なる風景といって良い。ここ数年間のグローバル過剰流動性がBRICs初め世界中に行き渡り、終に自律的な成長の域に達し始めたからである。欧州もドイツに引っ張られて好況が続きユーロ高が進行している。

昨日の日本経済新聞は今年前半の新興国の株式市場は中国43%、マレイシア24%、ブラジル21%、韓国21%と軒並み急上昇したと報じている。一方欧州でもドイツ21%、フランス9%、英国6%と上昇が続いている。

ユーロ誕生以来8年で世界取引の2割がユーロになった(ドルは4割)。昨年末の各国の外貨準備高の通貨構成比はドルが65%にまで低下、ユーロが99年には20%以下だったが26%(ポンドは別枠で4.4%)になり、30%に達するのは時間の問題であるといわれている。

米国が風邪を引いたら困るが、くしゃみをしたくらいではびくともしないほど世界経済は好調だ。グローバリゼーションの進行は技術の進歩とあいまって各国経済の連携を有機的なレベルに高めた。リスク管理する金融技術が開発され、世界の隅々まで投資が行渡った結果である。世界規模の水平分業がロックインされて自転し始めた。

世界各国の国富が急伸し、株式時価総額が90年代まで米国に次いでダントツだった日本に迫っている。又、かつて8%以上あった各国の円の外貨準備高も3.2%に激減した。つまり、日本のプレゼンスの後退の方がもっと劇的だが、世界への影響という点ではニュース価値が少ないようだ。

米国は孤立主義に振れるか

しかし、このような状況が米国民を不安にさせ苛立たせている。特に中国経済の台頭は購買力平価換算ではそう遠くない日に米国を凌ぐ可能性があると思い始めた。次の大統領選で保護貿易に振り子が触れ、中国バッシングの競い合いになる恐れがある。

議会では超党派での人民元安や汚染食料品・薬品などの中国叩きは既に始まっている。民主党の大統領となれば内向きの政策に転換する可能性が高いと見られている。しかし、上記のように世界経済は水平分業でロックインされており、そこから最も利益を得ているのも米国なのである。

一方海外では米国への信頼が悪化している。最近の調査によると、米国人を信頼する外国人が減り、共産独裁の中国の方がまだましだと考える人さえ増えているという。この責任の大半はブッシュ大統領の拙劣な政権運営にある。

しかし、短期的な失敗はあっても米国の真の力は何も変わっていない。圧倒的な軍事力といえども限界があることを示したが、米国が地球上で比類なき力を保持している事に変わりは無い。依然として「何事も米国の黙認無しにはなしえない」と最新号のエコノミストは説いている。

同誌は続けて、「今日の世界的な経済成長は米国の自由と開放性という価値観が普遍的な魅力を持つ」ことを証明していると述べている。世界的好況の果実を最も多く取り込んでいるのは米国のグローバル企業でもある。その普遍性のゆえに日欧や新興国にも広がっている。

文字通りの孤立主義など非現実と思うが、ブッシュが勘違いしたように民主党政権とその支持者も実行可能な政策と思う恐れ十分ある。しかし、それはいわば選挙戦のリップサービスであり、世界の現実を直視した政策を採る可能性のほうが高いと私は考える。

軌道修正のシナリオ

米国のスーパーパワーは健在だがその使い方としての政策は現在からの軌道修正が必要だ。超大国としての総合力を抑止力として使う、囲碁に喩えて言うならスーパーパワーを壁として使いからめ手で地合を稼ぐ戦略に戻すことであろう。果たしてそれがどういう道筋を辿り、どんな時間軸で起こるか。

中国の成長は続き米国との差を詰め、局面、局面では超大国としての地位に挑戦するのは間違いないが、一方で中国の廉価な商品は米国を豊かにした。しかも中国の独裁政治体制は普遍性に欠け、パラダイム変化に追随出来ない脆弱性を本質的に内在する。

ブッシュ政権は既に方針転換した。地球環境にしろ、中東問題・北朝鮮の核武装にしろ、国際協調に舵を切った。思うに米国ほど軌道修正を簡単に実行できる政治システムは無い。どの国よりも早く修正する、それが力の源泉であることを我々は肝に銘じなければならない。

大統領選挙中は米国民の恐れや自信のなさ・不安を反映して思い切り孤立主義の方向に振れるが、民主・共和どちらに新大統領がなっても徐々に現実主義に向かうという道筋と時間軸が今日時点での私の見方だ。時々の事件で慌てて反応して底流の変化を見逃さない様にしたいものだ。

余談

これを投資にどう生かすかというとそう簡単ではない。日本の個人マネーは依然海外に向かっており、日本経済新聞によると45兆円になったという。これが昨今の円安の要因となっている。投資信託が殆どなので結果的には国富が程よく分散されて海外に投資されていると理解している。

円安は我が国のグローバル企業の経営を助ける。投資のリターンも円に換算されると大きくなる。好い事ずくめのように聞こえるが、外から見ると上記のように日本経済の規模が縮小しプレゼンスが無くなることを意味する。

個人投資家の姿勢は日本には投資する気がないいう現実を反映している。正直言って国名を伏せて、年金で大騒ぎし、非効率な官僚と政治システムを持つ人口減少国に投資しますかと聞かれれば積極的にお勧めしますとはいえない。■

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