かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書術

2006-03-03 17:37:29 | 本と雑誌

日本経済新聞に「半歩遅れの読書術」というコラムがあるが、私の読書術はさしずめ「周回遅れの読書」だろう。古本屋店頭に並べられても誰にも振り向かれず2、3度値下げがされ100円になったところで初めて私の手に入ると言う運命を持った本が主役だ。

出版後の経過時間だけなら中には半歩遅れ程度の幸運な本もある。どうしても読みたい新刊の本は公立図書館のウェブサイトから予約を入れ、メールで通知を貰って借りて読むことにしている。人気のベストセラー書は待たねばならないが、幸いなことに天邪鬼の私は大勢が読む本は余り読みたくない。

私はノンフィクションを読むことが圧倒的に多い。仕事柄ビジネス関連の書物を多く読むが、特定企業の名前のついた本は主義として読まない。その手の本の多くは業績の良い企業のお追従に満ち溢れている。ところが数年も経たないうちに優良企業といえども業績悪化、中には存続の危機に陥る運命を辿る企業もある。そんなニュースに接すると無駄に本を読んだという気分になる。

このような「冠」企業本は社員向けだと思っている。1周遅れか2周遅れの読書で批判的に読むと当時著者が表層と底流をどう見ていたか、何が欠けていたのか考えさせられ、それはそれで面白いが、それでも何冊も読むのは時間の浪費である。

私の読書スタイルは昔からのものではない、退職後身に付けたものである。退職金の一部を投資し運用するようになった結果、日本や世界の政治経済の動きをより注目するようになった。自分のお金が懸かると仕事とは違った視点で、違った真剣さで物事の本質を見届けようとして本を読むようになった。

読んでいくうち必ずしも書物の内容の新鮮さは出版された日付と一致しないことを実感し、古本に対するこだわりが無くなった。私の好みに合ったと思うが、投資判断や勉強の為の読書がいつしか冷戦後の世界が何処に向かうのか、グローバリゼーション、バブル破裂、構造改革などが世の中の経済や生活をどう変えるのかという視点で本を読みニュースを追っ掛けるようになった。

更に次の段階として世の中の有様に対して、得られた情報に知識と直感を駆使して仮説を立て、実際の結果と突合せ検証し見落としていた事実・知識や考え方を整理し、関連する書物やインターネットを調べるサイクルで本を選び読むようになった。仮説を立てて考えるようになったのは、本質的に投資行為が将来を予測する作業をベースとするからで自然な成り行きと思う。

ここまで来ると格好よく言えばこの「周回遅れの読書術」は実は「プロアクティブ読書術」の境地に近づいてきた証左と我ながら内心悦に入っている。古本でもプロアクティブとはこれいかに。この読書術に気が付いたことで私にとってはテーマを持って古本を探し、誰からも無視され続けた古本を探し純粋に楽しめるようになった。この仮説・検証のプロセスの副産物として、海外のサイトで見つけた記事と比較する作業を通じて、日本のメディアのいい加減さが見えてきた。

最新の話題に付いて行くのが目的ではないので、必ずしも新刊のベストセラーを読む必要もない。私の求める解はマスコミで話題のベストセラーにある可能性は少ない。経済的にも非常に都合が良い。

何度か紹介したように「ブックオフ」のようなキャッシュフロー重視の経営スタイルの古本屋は私のような「周回遅れの読者」には有難い。又、行く先々の土地毎に特徴のある古本が棚に並ぶので、古本屋巡りは遠出や旅行の楽しみの一つでもある。しかし、この読書法は誰にでもは勧められないかも、時間に余裕がないと難しい。■

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