かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

WBCの報道

2006-03-23 11:52:06 | スポーツ

一昨日サンディエゴでキューバに勝ち日本は野球の初代世界チャンピオンになった。平均視聴率が43%を越えたというからほぼ日本中がテレビの前で興奮していたということになる。私もワールドカップ以来テレビの前で興奮した。韓国に連敗した時死んだはずが運良くベスト4に残ることが出来、後は勢いで韓国・キューバを圧倒した。

米国内のWBC報道は地味な扱い

1週間前にこの件で投稿した時米国のメディアの取り扱いについて触れたが、日米の報道の違いについてもう少し議論する。一昨日夜米国の新聞やテレビの主要サイトを10社前後覗いた。WBC主催のMLBESPN(スポーツニュースチャンネル)以外のメディアのサイトでは、WBC決勝戦のニュースが何処にあるのか直ぐには分からなかった。

それではとスポーツ欄に行っても目立つヘッドラインにはWBCのことは出て来ない。各社共通のトップニュースは大家投手の所属するワシントン・ナショナルズに移籍したソリアーノ内野手が外野へのコンバートを拒否したというものだった。その他は大学バスケットボールの記事が圧倒的に多かった。

それでもNYタイムス、LAタイムスやUSAツディなどの全国紙はスポーツ欄の隅のほうにWBCの記事を見つけた。登録すると毎日送ってくれるヘッドライン紹介メールのスポーツ欄の3-4項目には入っていなかった。ましてやその他のローカル紙はいくら探しても記事が見つからなかった。

日米報道の差

しかし書かれた記事の内容を総合すると、事実の把握・野球の理解と深い洞察力で野球ビジネスから競技まで広範囲にカバーしていた。決して米国寄りの一方的な記事ではなかった。WBC野球に興味がある人が意志を持って探せば深い理解ができる記事に到達できる、しかし興味がない人はWBC存在そのものを知らないという状況を作り出していた。

一方、日本では誤審があった米国戦から韓国戦連敗の屈辱を経てまさかの米国の敗戦と状況が劇的に変化していくにつれ新聞もテレビもWBCはトップニュースになった。その論調の殆どは誤審の酷さ・大会運営の不公平・監督選手の頑張り(の秘話)・応援の盛り上がり等お馴染みの感情に訴える報道の繰り返しであった。五輪フィギュア金メダル報道と同じパターンだ。

報道だけのことではないのだが、この差はルールを作る者とそのルールに従い最大の利益を享受しようとする立場の差を反映していると思う。政治やビジネスの世界だけではない、スポーツの世界でも見慣れたことが起こっていると思う。

WBCのメッセージ

そこにはWBCの狙いや意義とその背景、計画と結果の検証等などに全く興味が無く自国チームのことのみ追っ掛ける何時もの我が国メディアの姿勢である。現在、最高のスポーツ・コンテンツはサッカーと五輪である。WBCは野球をグローバル化しサッカーと同じように魅力的なコンテンツに仕立て上げる狙いである。今回も国旗が最良のコンテンツであると証明された。

今バスケットボールが中国のスーパースターや欧州・南米などの成長でグローバル化に成功しつつある。五輪種目から外された米国野球界は危機感を持って急遽WBCを立ち上げた。日本の野球関係者には連携して野球を世界に広げようという強い意思は感じられず、スポーツ記者にだけ意識が低いというのは不公平かもしれない。理由はともあれ報道のレベルは30年前の高校野球と同じだ。

今回WBC関係者はMLB(メジャーリーグ)以外に国別対抗野球に非常に大きなポテンシャルがあることを目の当たりにし、WBC色々問題はあるが大成功だったと評価している。(唯一東京での第1ラウンドの集客が期待はずれの指摘されている)。WBCの勝者は日本というよりベースボールだったというのがコンセンサスである。

米国メディアの限界

しかし、米国のメディアが質の高い記者を抱えていても書かれた記事は隅に押しやられ、WBCに対する分析・洞察が広く一般に共有されたとはとても思えない。いい記事を書いたら終わりではない、読まれない限り意味は無い。穿った見方だけれども、これは911後の報道と類似性がある。

記者が汗を流して大量破壊兵器の存在が疑わしい事実を把握したのに、その記事が編集の判断により分厚い紙面の中に埋め込まれインパクトを失い戦争を止められなかった反省をNYタイムスが公表した。アブグレーブ刑務所の虐待も同じだ。今回の米国の敗戦についてはあまり危機感を感じてないような印象を受けているが果たしてそれで良いのだろうか。

私が米国にいるとき長野五輪テレビ中継が米国の有望種目のみで、色々な競技を見たい人たちはカナダの放送を見ていた(ケーブルTVで視聴可能だった)。特に趣味やスポーツ欄では多数の読者が望まない記事をヘッドラインに持っていくのは難しい。

韓国の報道

米国だけではない、韓国では自国選手以外の五輪放送は全く見られないと、日本のBS放送で見る人の話を聞いた。例にして申し訳ないが、今回日本に紹介された韓国の報道は悔しさは理解できるにしても感情的に過ぎ寂しい。他山の石として日本のメディアは日本人選手ばかり追いかけないでWBCの大儀に貢献する視点からの記事も書いて欲しい。

今回の最大のサプライズは韓国の大活躍だった。韓国の守備力は16チーム中ナンバーワンだった。日本にはまさかの韓国戦2連敗を喫した。3戦目に日本が勝てたのは精神的な強さを取り戻したことに加え、最終的に勝負を決めたのは総合力となる選手層の厚みの差であった。

野球は試合回数を重ねれば実力を反映した結果に収束していく。しかし短期決戦は別の話である。韓国メディアは別にして監督や選手のコメントの中にはそういう理解の発言もあったのは救いだ。試合後キューバと日本選手の友好的な握手やイチローとキューバ選手の写真撮影はスポーツのあり方を示し世界に好印象を与えた。韓国メディアの成熟が望まれる。

まとめ

「人は聞きたいことのみ聞く」は何時でも何処でも安易に適用されがちな法則であり、特に報道では世の中がポピュリズムに流れている時注意しなければならないと思う。政治は民度を反映し、読者がメディアを育てるという言葉は一般法則としては正しい。とは言うものの日本のメディアの自己成長を望みたい。■

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする