MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

メスが顔を救う

2011-03-05 18:14:46 | 健康・病気

もしあなたの顔の半分だけが
徐々に小さくなり醜く変形していったとしたら…
おそらく誰とも会いたくないとの思いから
家から一歩も外に出なくなってしまうことだろう。
しかしそんな難病にかかっても
必死に頑張って生きてゆこうとする人がいる。

2月25日付 CNN.com

Surgery saves girl's face from rare disorder 形成外科手術がまれな疾患から少女の顔を救う
By Amanda Gardner

Parryrombergsyndrome

Christine Honeycutt は5才の時、奇妙なことに顔面の半分の成長の成長が止まったようだった

 Christine Honeycutt の額の真中の線は最初はほとんど目立たなかった。それは上から下までちょうど半インチほどのわずかな灰色のしみのようだった。
 「それは、子供たちによくあるように、戸口の柱にぶつけたように見えました」と、Christine の母親 Vicki は言う。しかし、この5才の子はそんなことは決してないと言い切った。
 さらにVicki が近づいて見ると、娘の首の左側に小さな痣、あるいは母斑のように見えるものがあるのに気がついた。それもまた何でもないように思われたが、その痣は 2週間ほど経っても消えなかったので Vicki は Christine を医師のもとに連れて行った。
 「それはただの皮膚の染みですよ」と、その小児科医は言い、Vicki にクリームを処方した。「日光に当たらないようにしてそれを塗りなさい」。しかし、クリームは効果がなかった。また、5ヶ月経っても、灰色の線はそのままだった。そして今、それは Christine の額の中ほどまで広がっていた。
 Honeycutt 夫妻は2番目の医師を受診した。今回は南カリフォルニアだったが、そこはこの家族が最近ノースカロライナ州 Charlette から引っ越してきた場所である。そしてそこでも同じ助言を受けた。Vicki は安心はしなかったが、ひどく心配してもいなかった。Christine はそれ以外は全く健康だったし、新しい学校で幼稚園生活を楽しく過ごしているように見えたからである。
 その後1年生となった Christine は不思議なほど体重が増え始め、ある夜自宅にて意識を失いけいれんするほどの激しい発作があった。彼女を治療したER の医師は、その発作は彼女が出していた華氏102度(約38.9度)の発熱によって引き起こされたと推定したが、Vicki はそんなに単純なものではないように感じていた。

A surprising diagnosis 驚くべき診断

 この発作から2、3ヶ月も経たないうちに Christine の額の線は眉毛の高さまで下りてきて、影というよりへこみのように見えるようになった。それには他の人たちも気づくようになった。Christine の教師の一人は彼女に額についたインクを拭くようにいった。「できません。ずっとそこにあるんです」と彼女は答えた。
 その他にもやっかいな症状が認められた:Christine の額の一方は正常だったが、他方は『肉付きがよかった』、そう Vicki は思い出す。そして耳が片方に比べて不釣合いに見えた。非対称性が彼女の顔面全体に広がっているように見えたのである。
 「彼女の顔の片側は赤ちゃんのようでした」と Vicki はいう。「顔面の一側は成長しているようだったが、反対側は成長が止まっているように見えたのです」
 結局のところそれがまさに起こっていたこと、だったのである。
 最初に Christine の顔に線が現れてから2年半が経った 2008 年、顔面変形を専門にしている遺伝学者がついに彼女を Parry-Romberg(パリ―・ロンベルグ)症候群と診断した。これは、およそ100万人に1人に発病するきわめてまれな自己免疫疾患である。Christine の免疫系が彼女自身に向けられ、それによって彼女の顔面の半分は正常に発達するものの反対側の半分がゆっくりだが確実に退化しているのである。
 Parry-Romberg 症候群、別名進行性顔面片側萎縮症は1800年代前半に初めて発見された。通常小児期に発症し時間とともに増悪する。少女に起こる頻度が高いようである。(Christine は遺伝学者によって診断されたが、本疾患に遺伝性はないようである)患者顔面の一側に起こる顕著な萎縮に加え、けいれん発作や他の神経学的症状も引き起こされる。
 Christine の額にみられた窪んだ線、これは顔面片側萎縮の患者の約4分の1に認められるが、フランス語の表現で coup de sabre と呼ばれる。これは『サーベルによる傷口』と訳され、剣の戦いで切り傷を受けた人に残る傷跡を想起させるものである。
 Chiristine が診断を受けた後、Vicki は自宅に戻り、インターネットで Parry-Romberg について調べた。彼女が目にしたものは慰めとはならなかった。「恐ろしい写真がありました」と、彼女は言う。「(患者の顔の)半分は正常だが、片側がほとんどガイコツだったのです」

A bleak prognosis  暗い見通し

 Parry-Romberg 症候群には治療法はない。有効性が証明された治療もないが、免疫系を抑制する薬剤が一定の症例で有効であったことが示されている。
 Christine の診断から2年後、Honeycutt 夫妻は多くの専門医に当たったが、彼らのいずれも家族に対して治療法がないだけでなく、この病気の進行が止まるまでは彼女の顔を再建することはできない、それには数年かかると説明した。そのころには深部の顔面骨にも影響が及んでいるかもしれなかった。
 「これはショックでした」と、Vicki は言う。「彼女は自分の顔が壊れていきながら思春期を過ごすことになる上に、そうなってから再建術を受けるですって?」それは Vicki にとって最善とは思えなかった。Christine は今や11才、全く健康で普通の子供であったとしても動揺の見られる人生の一時期にさしかかっていたのである。
 そこで、Vicki はインターネットの検索で偶然名前を見つけた形成外科医 John Siebert 氏に連絡をとった。Madison にある University of Wisconsin Schoool of Medicine and Public Health の外科学教授である Silbert 氏は顕微鏡手術を専門としており、過去20年間に顔面非対称患者約400例に対して手術を行っていた。そのうち140例が Parry-Romberg だった。
 彼は Christine の写真を見て2010年11月に手術することになった。Honeycutt 夫妻は Wisconsin まで赴く計画を立てた。

"Like building a teddy bear" 『テディベアを作るように』

 手術は約7時間かかった。Siebert 氏と彼のチームは、Christine の左の腕の深部から採取した血流が維持されるよう血管を備えた組織を、耳の前側の切開部より顔面の深部に埋め込む移植手術を行った。
 「それはテディベアを作る作業に似ています」と、Siebert 氏は言う。「皮膚や毛皮はまともです。私が行うことは、自然な外観や形を作り出すために詰め物をすることなのです」さらに、「これら手術の目標は移植された組織を『整え』、ずっと前からそこにあったかのように、巧妙にかつ時間をかけて患者の反対側の顔の健康な組織と調和させることです」と言う。
 「移植された組織は彼女が成熟するともに Christine と同じように成長する見込みだと、Siebert 氏は言う。しかし、どうしてそうなるのか彼には説明できない。移植された組織と血管は障害されている側の顔面に正常の血流を再開させ、さらなる萎縮を阻止するよう異なる組織の細胞間で互いに応答し合うようになるのではないかと、彼は言う。
 Parry-Romberg の専門家の中には、こういった手技が、実際に本疾患の経過を戻し、深部の骨や筋肉に対する障害を阻止することに疑問を抱く人たちもいる。しかし、疾患が進行し続けたなら恐らく必要となるであろう再手術を行わなければならなくなったことはほとんどないと、Siebert 氏は言う。

Back to school  復学

 Christine はこの夏、顎の修正のための簡単な手術を受ける予定になっており、また、その後も5~6ヶ月ごとに Siebert 氏の診察室に通わなければならない。
 彼女には上腕の下から肩にのびる傷痕、頸部には切開痕が残り、術後3ヶ月が経つが、彼女の顔はまだ少し腫れている。しかし、彼女は復学の予定であり、正常に戻りつつあることを実感し始めている。
 彼女は言う「前より今の鼻が好きです」

残酷な病気である。
顔面の半分がどんどん萎縮し変形してゆくとは…
しかも少女の発症が多いとはひどすぎる。
進行性顔面片側萎縮症(パリー-ロンベルク症候群)とは、
原因不明に顔面の半側の皮下脂肪の減少から始まり、
筋肉、骨へと萎縮が緩徐に進行する。
進行の速いケースでは患側眼の失明も起るようである。
原因不明だが、自律神経の変性に起因する栄養障害や
本編にあるように自己免疫疾患の関与などが
考えられている。
治療法としては、進行が止まるのを待って、
筋肉や骨の移植手術を含めた形成手術が行われるのが
一般的のようである。
以前当ブログ(ただの顔、されど顔、やはり顔)でも触れた
脳死者からの顔面移植も将来このような患者に対して
行われるようになるのかも知れない。
しかし何より大切なのは、
周囲の人たちからの精神的サポートであることは
間違いなさそうである。

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吃音を乗り越える

2011-03-03 22:15:16 | 映画

第83回アカデミー賞は、『英国王のスピーチ』が
作品、脚本、監督、主演男優の4部門を受賞した。
2月28日付 vogue.com(ウェブ魚拓)
ご承知のようにこの作品は、英国エリザベス女王の父、
ジョージ6世の、自身の吃音症との戦いを描いたものである。
シンプルな好作であるとの評判で、
この映画で吃音症の実状を知ることができるという。

2月25日付 New York Times 電子版

In Film, Stuttering Symptoms Reflect Current Research 映画の中で、吃音症の諸症状が最新の研究を映し出す

By Pam Belluck
 オスカーにノミネートされた映画 “ The King’s Speech(英国王のスピーチ)” 、国王ジョージ6世は4才の時に吃音症が始まり、以後生涯それに苦しまされることになる。しかし、彼は、文字音を速く繰り返す典型的な吃音者 Porky Pig(ワーナーアニメ「ルーニーテューンズ」のメインキャラクターだった吃音症のブタ)のように話すわけではない。この王は話し始めの音を得るのに苦労し、発語が中断されてしまうのだった。

George

1937年即位後の英国王ジョージ6世、隣はエリザベス王妃

 彼の吃音は兄と対峙したり、大衆に向けて演説したりするようなストレスの多い状況で増悪する。娘たちと遊んでいる時や口ずさんだり、罵り言葉を差し挟む時、あるいは、彼の耳元に鳴り響く音楽が自分自身の声を聞こえなくさせている時には、うまく話せるのである。
 これらは複雑な症状であるが、自身が吃音障害を持つ映画の脚本家(デヴィッド・サイドラー)によって考え出されたこれらの細部は実際の吃音症の多くの特徴を正確に映し出していると専門家は言う。
 そういった複雑さの中に、しばしば人に精神的な打撃を及ぼしてしまうこの疾患の原因への手がかりがあると指摘するのは、よりすぐれた治療法の発見を期待し吃音症の根底にあるものを解明しようとしている研究者たちである。
 吃音症の根底にある原因が、言語の障害であるとか、不安やトラウマなどの心理学的な問題であるといった昔からの誤った概念を拭い去りながら、実際には吃音症は発語の障害であると研究者らは言う。すなわち言葉を発するために私たちの脳や身体が適切な筋肉を動かそうとする一連の過程における障害である。
 「吃音を持つ人は流暢な発語をするのが運動機能的に難しくなっています」と、University of Toronto の発語・言語の病理学者 Luc De Nil 氏は言う。「彼らは単語や構文を構築することに困難はないのですが、処理の過程で違っているのかもしれません。発語には非常に迅速な順序付けと時間的調節を要するきわめて高度で繊細な運動能力が求められるのですが、彼らは運動の効率的な協調が困難となっているのです」
 「発語には言語だけでなく、聴覚、計画立案、情動、呼吸、さらには顎・舌・頸部の運動に関与する脳の領域が関係している。Purdue University の吃音症の専門家 Anne Smith 氏は、「吃音症においては、筋肉である兵士たちを統制する脳内の司令官が、それら兵士たちに適正な合図を伝えていないため、兵士たちはただ混乱し、走り回っているのです」と言う。
 小児の約5%に見られる吃音症は通常2~6才で始まる。吃音症の約50%の人に家族歴があるが、どういう人が本症を発症するのかについては今のところ予測不能である。
 科学者たちによると、この疾患の最も興味深い特徴の一つに、多くの人で会話がより複雑になってくるころに本症が突然発症するが、それまで何らその徴候が子供に見られていないことがあるという。
 意思疎通障害や言語の発達遅延が、赤ちゃんの片言や発達曲線から予測できるのに対し、「実際、吃音症が出現した日の前に本症を示唆する材料を見つけることができていません」と、University of Maryland の専門家 Nan Ratner 氏は言う。「すべてが順調に見えていたのが、突然順調でなくなるのです」
 本症が遅れて起こるという事実から、子育ての誤りが吃音症を引き起こしてしまうという俗説が生まれた、と彼女は言う。
 彼女によると、吃音症は通常、子供の最初にしゃべるような言葉では始まらず、また、“ doggie bark(ワンちゃんが吠える)” など2単語の発声でも見られることはないが、「言語の文法、前置詞、助動詞、さらには伝達文を組み立てるときに省略するようなちょっとした言葉などを用い始めたときに認められるようになります」という。
 実際、文法の複雑さがこの障害に一枚かんでいるようである。Smith 博士は、意味の誤り(『お父さんはコーヒーに馬を入れる』などの文法的誤りが差し込まれている漫画を見ている子供たちの脳波をモニターした。吃音者の脳は正常に話す人の脳と同じように意味の誤りには反応したが、文法的誤りへの反応ははるかに低かったと、彼女は言う。
 理由は不明だが、吃音は男子で2倍なりやすく、成人になるまで吃音が続く頻度も男子が4倍に及ぶ。治療の有無にかかわらず子供の約75%で最終的に吃音は消失するが、どういう人が回復するかは予測できない。これまでのところ、印象的な効果を示す薬物はなく、あるいは吃音以上に深刻な副症状をもたらしているが、本疾患は非常に複雑であるため単独の薬物がすべての吃音を治癒せしめることは考えにくいと専門家は言う。
 それでも、科学者たちは答えを見つけようとしている。De Nil 博士は小児期に吃音が始まった人の脳の画像と、脳卒中のあとに吃音が始まった人の脳の画像を調べることで、言語性運動制御と発語に必要な運動の協調に関係する領域に過剰な活動があるのを発見した。
 吃音者は、非吃音者が保持している“無意識的発語パターン”を構築していないため、それらの脳の領域が過剰に活動しているのかもしれないと Smith 博士は言う。「それは、たった今購入し快調に走るだろうと信用できるメルセデスを運転することと、あまり快調に走らない40年もののトヨタを運転することとの違いのようなものです」(おいおいっ!←MrKコメント)
 De Nil 博士はさらに、自分自身の話を聞くことに関係する脳の領域の活動性が低いことを見出した。この理由は不明だが、この映画にもあるように、吃音者は自分の話す吃音を無視すれば容易に話せるという事実を反映しているのかもしれないと、Ratner 博士は言う。
 また吃音者は、連続性に関係するある種の非言語活動にも運動性の難点を持っていることを科学者らは見出している。たとえばDe Nil 博士は、吃音者がキーボード上で数字の連続を打ち出すのに苦労することを発見している。一方 Smith 博士は吃音の子供では音楽が終わった後に拍子をとり続けるのが難しいことを明らかにしている。
 言語や発語に関わるその他の問題を抱える子供は吃音症小児の約3分の1を占めるに過ぎないが、標準的検査で吃音者は正常範囲内の成績ではあったが平均的に彼らの点数は非吃音者よりも低い傾向にあることを Ratner 博士は明らかにした。
 全吃音者の約半数に遺伝子が関与していることはほぼ確実である。National Institute on Deafness and Other Communication Disorders の研究者 Dennis Drayna 氏は、パキスタン人の家系などで吃音症に関連していると見られる遺伝子変異を発見している。しかし、他の家系には吃音症に関連する別の変異が存在している可能性があると彼らは言う。
 環境因子もまた一因となっている可能性がある。Ratner 博士によれば、トラウマやストレスは吃音症を引き起こすのではなく増悪させると考えられ、逆に吃音によってそういった状況を増悪させるような不安が生じている可能性がある。
 インディアナ州 Sest Lafayette に住む Kelly Love(45才)はそのことをよくわかっている。彼女は自身の吃音を抑えるために懸命に働いてきた:彼女の父親と祖母、現在9才になる双子の息子と娘もこの疾患だった。2人の子供は Smith 博士の研究に参加しており、息子の方は特に興奮したときなどいまだに吃音が続いている。
 「吃音障害のある人について、それがあまりに私たちの許容範囲を超えるとき、彼らは聡明でない、語彙力がないなど多くの誤解が生じます」と Love さんは言う。彼女はまだこの映画 “ The King's Speech ” を見ていないという。
 「一人でそれを見に行くのがよいでしょう。たぶんつらくなると思いますので」と、彼女は言う。

『吃音』ではピンと来ない。
むしろ『どもり』の方が症状をよく伝える感じがあるが、
後者は差別用語と一般に考えられており、
マスメディアや教育現場で用いられることはない。
これまで吃音症の人では語彙力や知能が低いとか
心理的要因との関わりが深い、などの偏見があったことから、
『どもり』『どもる』といった言葉に差別の意味合いが
含まれるようになったのであろう。
実際吃音症の人に向かって、そういった言葉を使えば、
当人はいたく傷つくに違いない。
それでは『吃音』なら問題ない、というわけでもなく、
一番に求められるのは、周囲の人たちの理解と、
寛容な暖かい見守りではないかと思われる。

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