オバマ政権誕生で、米軍のイラクからの撤退が首尾よく
実現されるのか。
今年に入り、イラクにおける米兵の死者数は減少しているものの
イラク戦争による通算の米軍の犠牲者数は既に 4,200 人を突破、
負傷者数も3万人を越えている(アフガン戦争の死者は 624 人)。
イラク戦争における米軍の犠牲者数(12月4日現在)
死者数を取り上げれば、
ベトナム戦争の 47,000 人の10分の1以下だが、
負傷兵の受傷のタイプも変化しており、
その後遺症に苦しむ人たちも多いようである。
Brain-injured troops face unclear long-term risks
長引くリスクに直面する脳損傷兵士イラクやアフガニスタンで脳損傷を被った何千人もの兵士たちの多くは、うつ病やアルツハイマー病類似の認知症などの長引く健康問題の危険にさらされている。
しかし、その危険性がどのくらい高いかを予測することは不可能である、と研究者たちは言う。負傷兵の約22%に脳損傷がある、と Institute of Medicine 米国医学研究所はみている。
そして、同所はこれらの患者がその後数年をどのように過ごすかを研究する厳密な対策を強く訴えており、救済のチャンスが見過ごされているわけではない。報告を要求した復員軍人援護局と国防総省はすでに、勧告された手立てのいくつかを講じているところだ。
しかし、火曜日に出された報告ではその緊急性を強調している。「爆風によってひき起こされる脳損傷について、その科学的知識にどれほど大きな穴があるかは実際のところ十分に把握されていなかったと思います」と、この報告をした研究チームのリーダーである University of California, San Francisco の George Rutherford 博士は言う。
外傷性脳損傷、TBI、はイラク戦争の特徴的な受傷様式である。
大部分は頭部の貫通創によって生じたものではなく、爆発の圧波によって引き起こされた頭蓋内に潜む損傷である。
それは、軽度の脳震盪から重症の損傷まで幅広い。
そして、症状がすぐにあらわれないこともあるので軍も気にかけていない場合がある。「もし脳のある特定の部位に銃弾を受けていたら、ことの重大さを告げられるでしょう」と、Rutherford 氏は言う。
「しかし、爆風による脳震盪では、もしこれを6回やられたら、1回やられた場合に比べ悪い結果が6倍起こりやすくなるのでしょうか?と聞くことさえないでしょう」帰還した兵士たちには、頭痛、めまい、記憶障害、混乱、短気、不眠、およびうつを訴えている。
TBI被害の兵士の大部分は治療で回復すると軍は言っている。「残念な結果が回避される軽症のTBIの人が明らかに大多数です」と Rutherford 氏は認めた。
しかし彼の委員会は多くの一般の受傷に対する長期間の研究を調査し、以下を指摘した。
①中等症から重症のTBIは、アルツハイマー病類似の認知症、パーキンソン病様症状、けいれん、社会的生活機能上の問題や失業に関連している。
②TBI全体では、うつ、攻撃的行動、めまいや健忘のような脳震盪後の症状に関連している。
③もし軽症のTBIでも意識消失を引き起こしていたなら、遅発性に起こる記憶、運動、およびけいれんに関わる障害の危険性は除外できない。
この報告は、爆風を受けたすべての兵士には、たとえ軽い程度であってもTBIをスクリーニングすること、また、すべての兵士に配備前後で脳機能テストを受けさせることを勧告している。
実際、軍はすでにそれらの対策を実行し始めている。また、脳以外の受傷兵士と比較することにより、転帰を改善あるいは悪化させる長期にわたる危険因子や要因を特定するため、厳密な研究と、復員軍人援護局主導のTBI患者の登録を行うよう、同報告は国防省に要求している。
復員軍人援護局は、これらの勧告を考慮する方針であり、これらのかなり遅れて出る障害が、この退役軍人の軍事業務に関連があるとみなされるかどうかの決定には60日の猶予を持っていると述べている。
TBIは戦傷に限らず、転落、スポーツ、交通事故などで頭部を打撲し
生ずる広義の脳損傷の意味で用いられる。
脳の検査で、出血や脳の挫傷が明らかに認められない場合もある。
手足の麻痺、失語、記憶障害、知能低下など明らかな脳機能障害を
呈する場合もあるが、性格変化やうつなどの精神的な障害が後遺し、
患者の社会復帰の障壁となる。
しかし、戦闘時の爆風の威力は我々の想像の及ばない衝撃を
脳にもたらすのであろう。
米海軍ではセンサー付ヘルメットを開発し、
爆発による外傷性脳損傷のデータ収集をめざしているという。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2543060/3560979
そのようなヘルメットが必要ない世界をめざすことが
一番大切だと思うのだが…