２０１１年１０月新ドラマ

不作といわれた2011年7月クールのドラマだが、
それらをまずは振り返ってみることにする。
今クール一番と思われたドラマは
フジ木10 『それでも、生きてゆく』だ。

重い内容のためか視聴率は低調（9/1までの平均9.16％）だが、
瑛太、満島ひかり、大竹しのぶ、風間俊介らの好演が光る。
他愛のない会話を積み重ねながら
大きなうねりで物語は進行、
坂元裕二の脚本はなかなかのものである。
『東京ラブストーリー』『Mother』などの実績はだてではない？
テレ朝木９『また陽は昇る』は
警察学校教官役の佐藤浩市の安定した存在感と、
三浦春馬によるやんちゃな好演が良かった。
威厳を示すためなのか、佐藤浩市の上司役を演じた
真矢みきの不自然なセリフには笑えた。
フジ月９ 『全開ガール』は錦戸亮の表情に乏しい
ダルい演技に嫌気がさした。新垣結衣はいいものを
持っているだけにもったいないドラマとなってしまった。
TBS日９ 『華和家の4姉妹』は、
本筋がそこそこ面白かっただけに
随所に見られた周囲のオーバーなリアクションは
無いほうが良かった。
最近 TBS ドラマに往々にして見られる
度を越したおふざけにはうんざりの感がある。
日テレ水10の『ブルドクター』、
江角マキコの無表情棒読みセリフと、
石原さとみの濃厚演技が好対照で、そのアンバランスがつらかった。
このドラマで稲垣吾郎は偏屈な人間を好演（それとも地？）、
今後もこの路線で十分食っていけそうだ。
テレ朝金曜ナイトドラマ 『ジウ～警視庁特殊犯捜査係』では
多部未華子が完全に黒木メイサの引き立て役だったのが悔しい～。
ただ黒木のアクションはなかなか様になっていた。

TBS 金10とフジ日9の “イケメン” もの2作は全く不調。
あの内容では世の中の中高年はまず見ないだろう。
『絶対零度～特殊犯罪潜入捜査～』、
『チームバチスタ3～アリアドネの弾丸～』 、
『ドン・キホーテ』の3作品はかすりもしていない。
なにはともあれ、今クールで
いにしえのお化け番組 『渡鬼』 がついに終了でひとまず安堵。
これを機に新しいテレビドラマの時代が到来することに
期待したい。

され、それでは10月クールのドラマを一通りチェックしてみることにしよう。

フジ月９　10/17～　『私が恋愛できない理由』　香里奈、吉高由里子、大島優子（AKB48）、稲森いずみ、萩原聖人、勝村政信、中村竜、加賀美セイラ、中尾明慶、倉科カナ、田中圭
山崎宇子、坂口理子によるオリジナル脚本。「独身女性の70％に恋人がいない」とかで、昨今は20代、30代の女性にとって『恋愛超氷河期』って、それホント？そんな厳しい現実を描いた独身女性たちの恋愛ドラマが今回の月９。主役はイベント照明会社の男性ばかりの職場で女性扱いされない環境から恋愛から遠ざかっている女性・藤井恵美を演じる香里奈。恵美の高校の後輩で勝気でプライドの高いキャバクラ嬢・小倉咲を吉高由里子。同じ高校のさらに後輩、まじめすぎて恋愛に臆病な派遣社員・半沢真子をAKB48の大島優子。この3人の同居生活を中心に『恋愛できない女性たち』の苦悩が描かれる。『もっとも異色なラブストーリー』ということだが、恋愛できない女性たちに美女ぞろいのこのメンバーでは説得力に欠けるかも？ただ他のキャストも豪華なため、前主演作・日テレ1-3月期『美咲ナンバーワン』ではこけてしまった香里奈だが秋クールでリベンジなるか？

テレ東月10　テレ東、このドラマ枠廃止。

フジ火９　10/18～　『謎解きはディナーのあとで』　櫻井翔（嵐）、北川景子
原作は東川篤哉によるベストセラー「謎解きはディナーのあとで」。主演は嵐の櫻井翔。正体を隠して国立署の女性刑事として勤務する北川景子演じる麗子は実は大企業の一人娘、すなわち令嬢刑事。麗子が担当する難事件の詳細を、彼女に仕える執事である櫻井演じる影山はお嬢様のディナーの給仕中に聞かされることになる。影山は難なく事件を推理し謎を解き明かしてゆく。影山は毒舌を吐きながらも、お嬢様を守るべく陰ながらサポートする。謎解きもののドラマには違いないが、風変りなシチュエーションで解決するという点が斬新か。このところ人気に陰りの見える嵐だが、フジ連続ドラマ初主演となる櫻井が新たな一面を見せてくれることになるだろうか？

フジ（関西テレビ）火10　10/11～　『HUNTER』　米倉涼子、桐谷美玲、川島鈴遥、戸田恵子、山口紗弥加、原幹恵、齊藤めぐみ、佐伯大地、小泉孝太郎、谷原章介、堀内敬子、柄本明
難事件解決のために付けられる報奨金をバウンティ（bounty）という。そしてその報奨金を狙う人たちはバウンティ・ハンターと呼ばれる。このドラマはバウンティ・ハンターとなった女たちの物語。平凡な生活を送っていた女性たちが『刺激』と『小遣い』欲しさに犯人探しを始める。主人公は米倉涼子演ずるアラサ―のキャビンアテンダント・井坂黎。仕事上のトラブルでクビとなったあげく、妹の巨額の借金の連帯保証人に仕立て上げられ、その妹・茜（山口紗弥加）は失踪。もうバウンティ・ハンターとして生きてゆくしか道はない？妹の残した小料理屋“春夏秋”に集まる女たちとともに100万円の報奨金がかかる指名手配犯探しを開始する。これに協力する落ちこぼれ刑事・権藤猛を谷原章介が演ずる。女たちには、堀内敬子、戸田恵子、桐谷美玲、川島鈴遥の面々。面白いのやら、つまらないのやら、予測のつかないストーリーである。

テレ朝水９　10/19～　 『相棒（10）』　水谷豊、及川光博
特にコメントはありません。

日テレ水10　10/12～　『家政婦のミタ』　松嶋菜々子
ドラマタイトルは『家政婦は見た』、ではなく『家政婦の三田』（笑）。しかも『家政婦は見た』はテレ朝の『土曜ワイド劇場』のシリーズ。で、こちらは日テレ。突然の事故で母親を失った父子5人家族の阿須田家のもとに派遣されてきた家政婦・三田（松嶋）。無感情でロボットのような態度だが、完璧に家事をこなす有能な家政婦だった。バラバラになりかけた家族が三田の驚くべき行動により救われるという。一瞬。『メアリー・ポピンズ』のようなストーリーが思い起こされるが、三田がまさか魔法使いというわけではないだろう。もはや恋愛物のヒロイン役がむずかしくなった松嶋が新境地を切り開くドラマとなるかどうか？

TBS木９　10/27～　『ランナウェイ～愛する君を守るために 』　市原隼人、福田沙紀、塚本高史、菅田将暉、石野真子、渡哲也
『渡鬼』の後釜となるこの枠を TBS は『木曜ドラマ9（ナイン）』としてテコ入れ。その大役を任されたのは、熱血漢・市原クン。冤罪で刑務所に入っていた4人の若者が脱獄を図る。4人がそれぞれの目的を抱き思いを晴らすため、北九州から1,000km離れた東京を目指す。『勇気』と『希望』を持って最後まであきらめず支え合いながら苦難に立ち向かってゆく、そんな今の日本へのメッセージがこめられているんだとか。『がんばろう、日本！』

テレ朝木９　10/27～　『DOCTORS～最後の名医』　沢村一樹、高嶋政伸、比嘉愛未、黒川智花、滝沢沙織、敦士、伊藤蘭、野際陽子
ようやくこの枠決定。沢村一樹がちょいワルオヤジの天才外科医を演じる。使命を忘れたスタッフばかりで経営難に陥った総合病院に赴任してきたスゴ腕の外科医・相良浩介（沢村）がこの落ちぶれた病院に鋭くメスを入れる。抵抗を見せる従来のスタッフに対して相良は巧妙かつ非情に対抗する。ストーリーはよくあるパターンだが、脚本は『龍馬伝』『救命病棟24時』『HERO』の福田靖。ちょっと期待できるかも。

フジ木10　10/13～　『蜜の味～A Taste Honey～』　菅野美穂、榮倉奈々、ARATA
脚本は大石静。菅野美穂と榮倉奈々のダブル主演で二人の女と一人の男の三角関係を描く。男性役は今売り出し中の ARATA。田舎から上京してきた医大生・森本直子を榮倉が、大病院の娘で美貌と知性を兼ね備えた30代の女医・原田彩を菅野が演ずる。自分に絶対の自信を持ち完璧な女性として生きてきたはずの彩は、ARATA 演ずる一人の男性・池澤雅人をめぐって、直子の出現により嫉妬心から次第に自分を見失ってゆく。直子は叔父にあたる父親の弟・雅人に小さいころから憧れていた。雅人を男性として想うようになった直子は雅人と同じ医大に挑戦し合格する。しかし雅人にはすべてにおいて直子より勝っている彩という恋人がいた。雅人への気持ちを諦めようとしていた矢先、ある出来事をきっかけに抜き差しならない三角関係に進展する。三角関係に叔父への恋が絡むという内容にはちょっと？であるが、展開によっては面白いドラマとなるかも。

TBS 金10　10/21～　『専業主婦探偵～私はシャドウ～』　深田恭子、藤木直人、桐谷健太、古田新太、芦名星、遠藤憲一、石田ゆり子、小日向文世
原作は粕谷紀子著『私はシャドウ』
夫の裏切りにも気付かないドジで不器用な主婦・浅葱芹菜（深田）はひょんなことから探偵稼業に足を突っ込むことに…。夫・浅葱武文（藤木）の身に降りかかる問題の解決に乗り出す。愛する夫のために奮闘し、本当の幸せや喜びを知ることで強い女へと変わってゆくという物語。実生活で28才になる深田が主婦役で新境地を開くことができるのか？そして藤木はまたまた何年たっても同じ髪型で登場するのか？そのあたりが見どころか。

テレ朝木11：15（金曜ナイトドラマ）　10/21～　『11人もいる』　神木隆之介、光浦靖子、加藤清史郎、星野源（SAKEROCK）、有村架純、金井美樹、平岡拓真、赤石那奈、福島北斗、福島海斗、皆川猿時、小松和重、野村麻純、広末涼子、田辺誠一
宮藤官九郎脚本のホームドラマ。神木隆之介が主役。8人の子供たちの一番上の子、一男を神木が演じる。父・実（田辺聖一）と母・恵（光浦靖子）の両親を加えて10人家族、のはずだったが、これに加えて11人目は幽霊だった。一番下の子・才悟（加藤清史郎）を除く子供たちの母親は亡き先妻メグミ。元ストリッパーというこの幽霊を広末涼子が演じる。ただし幽霊のメグミが見えるのは才悟だけ。才悟を利用して家族に関わろうとするメグミ。一方様々な家族の問題に対して長男・一男が奔走する。宮藤官九郎の不思議なドラマワールドが展開されるのか？

日テレ土９　10/22～　 『妖怪人間ベム』　亀梨和也（KAT-TUN）、杏、鈴木福、北村一輝
このところジャニーズのメンバーを使った過去の名作アニメの実写化が盛んだが、中高年にも楽しめるようにという配慮か。今回は、当時『早く人間になりたい』が流行語にもなった1968年（なんと43年前！）のアニメ『妖怪人間ベム』の実写版である。当時のアニメではタイトルからのイメージと違って主役はベムではなく子供妖怪のベロだった。今回は主演がベム役の亀梨和也、そしてこわ～いオバサン妖怪ベラを（あまり変装して出なくても通用する？）杏、ベロを、『マルモのおきて』 の笹倉友樹役で大健闘の鈴木福が演ずる。また北村一輝が原作には登場しなかった刑事役で出演。2010年4月の 『怪物くん』 も全く期待していなかったがそれなりに楽しめたし、今回も案外面白い作品となる可能性があるが、主役が低視聴率男の亀ちゃんなのでちょっと心配だ。

NHK日８　継続中　大河ドラマ　『江 ～姫たちの戦国～』　上野樹里、宮沢りえ、水川あさみ、瀬戸康史、向井理、ミムラ、染谷将太、阪本奨悟、斎藤工、鈴木保奈美、岸谷五朗、鈴木砂羽、北村有起哉、袴田吉彦、萩原聖人、和泉元彌、時任三郎、豊川悦司、柴俊夫、大地康雄、市村正親、大竹しのぶ、石坂浩二、奈良岡朋子、北大路欣也
史上最悪大河ドラマもいよいよ終盤。今まで抱いていた江や秀忠のイメージが根底から覆され、テレビの前で違うだろっ！とつぶやきながらも見続ける。ただ、ただ苦痛なのだが…。45分間をこんなに長く感じたことはこれまでになかったことである。

TBS 日９　10/16～　 『南極大陸～神の領域に挑んだ男と犬の物語～』　木村拓哉（SMAP）、綾瀬はるか、堺雅人、山本裕典、吉沢悠、岡田義徳、志賀廣太郎、川村陽介、ドロンズ石本、芦田愛菜、木村多江、寺島進、緒形直人、柴田恭兵、香川照之　
『南極越冬隊 タロジロの真実」／北村泰一が原案。
原案は北村泰一の『南極越冬隊 タロジロの真実』。1983年公開の高倉健主演の『南極物語』とは題材こそ同じだが関連はない。TBS開局60周年記念ドラマとして金と時間をかけた大作。とはいえ、キムタクを起用したTBSのこれまでのドラマ、決して出来が良かったとは言えないのが気がかり。さて、本ドラマ、時代は昭和30年代。当時の日本は敗戦からの復興が進んではいたものの、国際競争力的には先進諸国からまだまだ遅れをとっていた。そんな時、国際的な南極観測計画が立ち上げられたが、弱小国ながら手を上げた日本が割り当てられた観測地・昭和基地は南極の中でも気象条件の極めて苛酷な場所だった。木村拓哉が演ずるのはそんな厳しい観測地での越冬を目指す第一次南極越冬隊の副隊長で地質学者の倉持岳志である。隊長役は柴田恭平、隊のメンバーには堺雅人、山本裕典、寺島進、緒方直人、香川照之など錚々たるキャスティング。また日本から彼らを見守るのは、倉持の亡くなった妻の妹、高岡美雪で、綾瀬はるかが演じる。彼女は倉持に想いを寄せる。そして、任務に命をかける隊員たちの強力な味方となるのが19頭の樺太犬である。そのうち15頭の犬たちは事情により昭和基地に置き去りにされ絶望視されていたが一年後タロ、ジロの兄弟犬が生存しているところを発見された。本ドラマが重きを置くのは、人間ドラマか、はたまた犬たちなのか。東日本大震災からの復興を意識したドラマ作りになると予測される。さすがにキムタクの『ぶっちゃけ…』なセリフは禁句となろう。なお主題歌は中島みゆき『荒野より』。

フジ日９　10/23～　『僕とスターの99日』　西島秀俊、キム・テヒ　
西島秀俊と韓流スターのキム・テヒのW主演。冴えないアラフォー独身男性と世界的美人スターが織りなすラブ・コメディー。西島が演じるのは警備会社でアルバイトをしている40前の独身男・並木航平。優しく甘いルックスながら、人が良く周囲に振り回されてばかり。天文学を目指し『星を見つけたい』という熱い夢はあるが、一歩踏み出す勇気がなく冴えない日々を送っていた。そんなとき、キム・テヒ演じる韓国の美人女優 ハン・ユナの来日期間中、警備を担当することになる。彼女は派手な外観とは異なり、実は超庶民派で孤独を感じていた。ハン・ユナの99日という契約期間の間に、最初は反発し合いながらも徐々に二人の間の距離は縮まってゆく。様々な障害やトラブルを乗り越えいつしか二人の関係は…。二人の間で言葉はなかなか通じ合わない設定のようだがキム・テヒも片言の日本語を駆使すると見られる。いかにもベタなストーリーで、いかに美人のキム・テヒを持ってきても裏のキム・タクと渡り合えるかは甚だ疑問である。

テレ朝日10　10/6～　『俺の空　刑事編』　庄野崎謙、国仲涼子、永井大
本宮ひろ志の人気コミック『俺の空 刑事編』の実写ドラマ化。主人公となる新人刑事・安田一平役は全国一般公募によりオーディションを行い『芸能経験ゼロの』庄野崎謙が選ばれた。財閥・安田グループ総帥の御曹司・安田一平が警察学校を出て、警視庁・京橋警察署の刑事となり、巨悪に立ち向かう。捜査のために財力にものを言わせて思い切った行動に出る。ライバルであり協力者でもある武尊コンツェルンの御曹司・武尊善行を永井大が演ずる。主演の庄野崎は未知数であり、コケないことを祈るばかりである。

TBS が気合を入れたキムタクドラマがどれくらいの
視聴率を取れるか興味深い。
これでこけるようなら俳優としてのキムタクの将来は暗い。
日曜９時は女性はTBSに、男性はフジに流れるものと
予測される。
個人的には菅野・榮倉のフジ木10に期待したいが、
全体的には依然として謎解きや推理ドラマが主流の様相で
画期的な変化は期待できそうにない。