エッ！エッ！エッ！の世界

　電話がかかる。相当お歳の男性の声で、ゆっくり発音している様子。

「もしもし、ひろ子さん？すえもりじゃがのー。元気かいのー。」
「どちらの末盛さんですか？何処におかけですか？」
「としゅー（歳を）取ったら、わしまで忘れるんかいのー！７０にはなったんかいのー。」
「はい。７０になりました。でご用件は何でしょうか？」
「すえもり　しのぶよ。山本　くにちゃんの電話がわからんけん知りたいのよ。」

いくら考えてもそのような知人はいない。相手は、私を知っているようだから、
この状態からスムースに撤退しなければいけない。
私の知っている山本邦子さんの電話番号を、電話帳で調べて、何とかごまかそう。

「ご無礼しました。お元気そうですね。お互いに元気で長生きをしましょうね。」
とか何とか言って電話を切った。しかしいくら考えてもその人を知らない。
認知症は、現在の事は忘れているが、昔のことは覚えているとのことである。
ブーコさんの場合は、昔の事をすっかり忘れている。
その昔、この人と浮気でもしたのであろうか？
浮気でもしたのなら、名前や声ぐらいは覚えているであろうに！
どなたかとブーコさんを、間違っているのではないだろうか？

”歳は取りたくないなー。”が今日の実感！