タイトル----礼節いろはことば 「と」。第580号 22.09.06(月)
「と」 徳と学 稲穂のごとく 実れかし----徳あれば以て興り易く---『十八史略』
人間の一生で一番大切なことは、「徳と学」が人々の間に根付き栄えることであると思います。
『十八史略』は、〈徳あれば以て興り易く、徳なければ以て亡び易し〉と訓えています。「人々に徳があり勤勉であれば国は栄えるし、徳がなければ亡びやすい」ということでしょう。また、『老子』は、〈怨みに報ゆるに徳を以てす〉と訓えています。「怨みに対しては、徳をもって報いるようにすれば、怨みを与えた人も、これに感化されておとなしくなる」というのです。
「徳と学」というこの言葉を懇談するたびに口にしていたのが、私の詩吟道の師匠であった竹下一雄氏でした。大酒のみで漢籍が好きで、西郷南洲翁が大好きでした。
南洲精神と『南洲翁遺訓』を刊行した荘内精神は同次元だと力説し、人の世に大切なのは「徳と学」であると目に涙して語り、日本国を純粋に愛した人でした。頭脳明晰にして、一点の曇りもない清廉潔白な指導者でした。
徳義を備えた品性豊かな社会を創らなければならないというのが、持論でした。「生死何ぞ疑わん天の付与なるを」と、南洲翁の漢詩を口ずさみつつ、旅立ちました。