タイトル----至人は己なし。第1648号 25.06.30(日)
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至人は己れなし。『荘子』
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至人、すなわち修養等を通じて本当にできた人間には、自分というものがない。天地間の自然と同化してしまい、、自分の欲で動くということがないからである。
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私が教えを請うてきた平井政明先生、竹下一雄先生らはまさしく「至人」でした。自分の欲で動くということがありませんでした。それは20数年の長きに亘り、仕え観察してきたから言えるのです。特に平井先生は、他人の喜びごとがあると「よかった」「よかった」を何時も連発し、心の底から喜んでくださる先生でした。
そして荘内南洲会前理事長・小野寺時雄先生も同様だと認識しています。
今朝の学問館で442回になりました。今朝は『言志録』『論語』等々を学修しました。
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昨日の空手道修行は述べ34人でした。夕刻、指導の途中で門下生に聞いてみました。
指導を厳しくした方がいいか、どうかと。言うことを聞かないと顔をパッチンするよ、ともいいました。
ところが全員、厳しくした方がいいと挙手してくれました。
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理由を次のように話しました。あなた方は今から、50年、60年と生きていかなければなりません。その間、出来れば病気をしない身体をつってください。そのためには前向きな考えを持つ人間になることです。
名前を呼ばれたら、ハッキリとした声で「ハイ」と応えてください。お父さん、お母さんにもです。はっきりした返事が出来る人と出来ない人とでは、長い人生で大きな差がでて参ります。そして勉強が出来ないお友達がいても、決して見下げてはなりません。人は大事にしなければなりません。
二日前、NHKでプロフェッショナルの報道がありました。石細工をするお爺さんも紹介されました。この方は学校時代、勉強は全くできなかったそうです。ところが60年後、日本を代表する芸術家になりました。
人間の一生なんて学校の成績だけでは決まらないのです。要は、一生を通じて、決めたことを諦めずに、死ぬまで頑張り通せる人間が成功するし、そういう人が長生きもするのです。これは天の、宇宙の真理なのです。
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あなた方は文武両道の修行をしているから、必ず偉くなり、人の上に立つ人間になる筈です。そういう事態にも対応できるよう、今から訓練をするのです。
人間学としての「文武両道」を通じて、人生に挑戦してください、と。
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子どもたちは「善」の心を持っていますので話せばわかるのです。そして『南洲翁遺訓』を大声で堂々と発表しました。
特別支援学級で勉強をしている優李君が14回目の稽古になりました。最初来た時は、頓狂な声を発し、道場内を走り回っていましたが、昨日はじっと正座をし、一見しただけではわからない、人間へと成長しました。
自閉症の子どもたちを私みたいに、文武両道で治癒するところは世界中にないそうです。天は無用・不要なものを人々に与えてはいないのです。その人の魂に、良心に訴えて行けば、全快とはいかなくても、回復して行くのです。
現に15年間指導してきた青年は空手道も上達してきているのです。ただ、この子どもたちへの対応は私でないと出来ないと自負しています。如何なることがあっても、指導を休まないという命がけの哲学がないとダメなのです。
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今日のブログの題でもある人間のお手本は、お会いしたことはありませんが、『修身教授録』の著者、森信三先生と高弟の寺田一清先生だと思います。私はこのお二人の先生を「人間国宝」と呼んでいます。
昨日の学問館で学んだ『幻の講話』「血の問題」にも大変感動しました。この中で森信三先生が、「わたくしにとって忘れ難いのは、中国の宋代の哲学者の書いた書物の中に、「真の学問というものは、自分の生れついた気質を変えることだ」というコトバがありますが、わたくしは三十代の半ばごろ、まだ京都大学で哲学科の大学院にいたころでしたが、このコトバに出逢って、全くのけぞるほどに驚いたのであります。」とあります。
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私どもの空手道場は「伸び行く人間学の会・日本空手道少林流円心会」であります。
これからも、森信三先生、寺田一清先生のお教に違背することなく、生涯を通じ目的達成のため邁進・精進していく所存です。ご本人はもとより、ご父兄の絶大なるご支援、ご声援を庶希うものであります。その先頭に立って会長・宗師範の私は頑張ります。
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人生は二度となきもの生を得て
下坐行ともに学び続ける 4679 博庵語録
苦労せよ学べよ生きた喜びを
味わいたくば問学ともに 4680 博庵語録
志文治あるもの業はじめ
武備ある者は能く成るを守る 4681 『言志録』173
宋代の学者の書いた書が曰く
真の学問気質変ゆこと 4682 『幻の講話』2-64
人間の形成問題血と先師
逆境という試練あるかで 4683 『幻の講話』2-61
人格の根本転換行うが
真の学問論理沙汰なし 4684 前掲書 2-65
人間の美質発揮は苦と難を
通し厳しき鍛錬が要 4685 『幻の講話』2-66
実秀は黒田の飾らぬ真率の
人となりにも深く感動 4686 『臥牛 菅実秀』
満腔の誠意傾け西郷の
指導従う態度ひかれる 4687 前掲書
これほどの信頼を享く西郷の
計り知れない厚さと広さ 4688 前掲書
実秀は黒田に荘内苦衷述ぶ
藩の運命苦闘を理解 4689 『臥牛 菅実秀』