晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

穴虫考(137) 火葬-9 12/24

2014-12-24 | 地名・山名考

2014.12.24(水)     「中世の葬送・墓制」を読み直す-3

 尋尊が東福寺に立ち寄り兼良の葬火所穴等拝見したという一文を紹介したが、『大乗院社寺雑事記』には兼良の石塔建立つまり造墓は死後11年の後とある。(P170)
 石塔の造立が「御墓なども立て参らせたく候」とあるように、墓を立てると認識されている点である。(P171)
 つまり尋尊が東福寺に立ち寄った際には、石塔は建っていなかった。それでは如何なる状態のものであったのか、遺骨を埋葬し何か目印を置いていたか、あるいは遺骨は他の所に保管し、墓の予定地のみがあったのか。いずれにしてもこれを穴と言うには無理がありそうな気がする。やはり火葬場に穿たれた穴の方が自然である。
 
 庶民の葬送に関し、兵庫県の大覚寺に尼崎墓所の掟が伝えられている。P173にその文が載せられているが、簡略して紹介してみよう。
  
 (一条) 火屋 荒墻 四方幕 引馬 龕 百疋 収骨者五〇文。  (1,000文、収骨5%)
 (二条) 火屋 荒墻 幕 龕      参百文 収骨者二十文。 (300文、収骨7.5%)
 (三条) あらかき こし        十疋  収骨者十文。  (100文、収骨10%) 
 (四条) 定輿 桶に入れ土葬      五十文。
 (五条) 筵に入れ 無縁取り捨て    十文。少愛者十文。
 (六条)以下省略
  ※( )は火葬費用に対する収骨費用の割合 10文=1疋、100疋=1貫
  この掟の日付が天文元年十一月となっているので1532年となり、賢宝の葬送『観智院法印御房中陰記 応永五年』(1398年)とは年代も地域も離れているので単純に比較は出来ないかもしれない。ただ賢宝葬送にあって、掟に無いのは穴賃であり、その逆は収骨者である。
 そもそも収骨者とは何かということになるが、本来収骨とは見内が行うものだから、収骨するための手数料と考えるべきだろうか。あるいは収骨の作業を誰かにさせるための費用かということになる。
 収骨者という費用は火葬に関わる費用とは明らかに独立している。また、穴賃は他の費用が〇〇代となっているのにこれだけが賃となっている。また、見積額が変動した場合も僧に係わる費用同様穴賃は固定している。つまり穴賃=収骨者(費用)なのではないだろうか。
 賢宝の葬送は庶民の葬送とは違い、四貫八〇〇文もかかっている。僧の布施、藁履代、穴賃を引けば三貫一〇〇文となり、穴賃の割合は3.2%となる。上記収骨者の割合の傾向と似ているのは偶然だろうか。
 さて、収骨と穴がどう関連するかということになるが、もし火葬場の下に穿たれた浅い穴のことをいうのであれば答えは単純である。収骨はその穴から為されるからである。
 この火葬場の浅い穴は何のために穿たれているのか考えたとき、空気を取り入れて火力を上げるためということを以前に書いた。しかし空気を取り入れるだけの理由なら穴はもっと深くてもいいはずだ。例え浅くても中に深い溝を掘れば空気はより取り入れやすいと考えられる。しかし張り出し部はあっても溝のようなものは無く発掘される火葬跡の土坑の深さは20~30cmが一般的で底面は平である。(ただしこれは書物で見た写真や図面だけであって、他の例もあるかもしれない。)
 これは空気取り入れの効果と共に火葬後の収骨の便を考えた形状なのではないか。
 これらの理由から穴賃とは収骨に関わる費用で、尋尊が東福寺に立ち寄って見たという葬火所穴等というのは火葬場の浅い穴のことではないだろうか。建物などはその都度普請していたと思われるので、平らな地面に穴だけがあったのかもしれない。
 
 ここまで想像を膨らませてきたが、実はとんでもない勘違いをしているのかもしれない。しかし”穴”が一体何であるかは穴虫=穴蒸し説の重要なキーでもあるのではっきりさせなければならない。そこで思い切って水藤 真教授に尋ねることにした。発行所の吉川弘文館に相談すると、「回答が得られるか否かはわからないが取り次いであげましょう」ということだった。少し時間がかかるが、文章をしたためているところである。おわり

 【作業日誌 12/24】カビ絶滅作戦、残り6窓
 
 【今日のじょん】川に行くと久々に鴨の姿を見た。猟期が始まって撃たれてしまったのかと思っていたら、隠れていたようだ。一時は鵜と鷺だけになっていたのに。
じょんは遠くの鳥には反応しない。

ススキにピントが合ってぼけてしまった、右のは鵜。じょんは知らん顔。 
  

コメント
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