晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

うらにしな季節 12/9

2014-12-09 | 地名・山名考

2014.12.9(火)曇り、雨

 うらにしという言葉を初めて知ったのは、澤潔さんの「丹後半島の旅」であったと思う。初冬の暗い雲からみぞれが降り、雪になったり雨になったり、風といえば真冬のように吹き荒ぶわけではないのだが、北西から時折芯まで冷えそうに吹いてくる。身体が冬に慣れていないためだろう、真冬より寒く感じる。
 とまあ、こんな感じをうらにしというのだろう。澤さんも水上先生もうらにしが好きだという。こういう感覚は普通ではありえない、誰だって暖かくて天気の良いところがいいに決まっている。瀬戸内や湘南など憧れるのは当然なんだけど、なぜか暗くて寒い日本海側の地域が好きになる感覚というのも存在するのだ。
 こういった感覚は年齢のせいもあるが、人生における苦労や不幸に関係することもあるのだろう。
 わたしだって若い時分は白浜や神戸に憧れた。それがいろんな事があって、歳も重ねて暗くて寒い日本海側のうらにしが好きになってくるのだ。明るくて健康的で前向きでアクテブ、眩しいようなところは好きになれない、というより辛く感じるのだ。
 うらにしという言葉はわたしの国語辞典には載っていない、全国方言辞典にも民俗学辞典にも載っていない。澤さんや水上先生の文章からこのようなものかと思っているのだが、丹波の言葉ではないような気がする。若狭生まれの水上先生も知らなかったようだ。
 「寺泊」の中の「短い旅ー峰山」という短編に、タクシーの運転手にうら西(この短編ではこう書かれている)のことを聞くのである。
 運転手に急に峰山へゆくというと、向うはうら西だ、といった。
 「うら西って何かいね」
 「丹後は、うら西の季節ですよ。このごろはめったに晴れた日はありません。西の方から、吹く雨風ですわな」

 うらにしというのは丹後の言葉なのかもしれない。但馬辺りでも使われているようだが、海で漁をするものにとって重要な風を表す言葉なのかもしれない。
 気象学的にいうと西高東低の冬型になる始まり、吹き出しと言われる不安定な天気のことではないだろうか。
 浦に吹く西風と言ってしまえばおもしろくも何ともないのだが、うらは「うら寂しい」とか「うら枯れる」といった何となく淋しく悲しい感じを言っているのではないか。にしというのも単に西風を言うのではなく、暗く冷たい雨風をいうものと解したい。
 我が家ではうらにしを日常的に使っている。「今日はうらにしやなあ」「うらにしな天気になってきたなあ」「うらにしじょんやなあ」
 本日は恒例のうみんぴあのワンコインリゾートの日である。リゾートとうらにしは合わない言葉なのだが、うらにしな天気の日に暖かい建物の中でリゾート気分を味わうのもまた一興である。

暗い空、隠れて見えない青葉山、かみさんの姿を見ればうらにし度がわかる。

向こうに見えるのがプール、今日は調子よく2Kmを43分で泳げた。


 

コメント
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