はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

「チャージマン研!」AT-Xで11月より放映

2008-10-30 00:46:55 | チャージマン研!
 テレビアニメ「チャージマン研!」について、以前にこのエントリで「じっくりと語ってみたい」と書いたのだが、そのまま放置して一年が経ってしまった。
 今更ながら、この作品を取り上げてみたい。と言うのも、来月からCSのAT-Xで放映される事になったからだ。この作品について語るには、今が一番いいタイミングだと思う。



 と、言うわけで「チャージマン研!」について。
 この作品は、チープなアニメばかりを世に送り出してきた事で、ネタアニメ愛好家に知られているアニメ制作会社・ナックの作品だ。1974年4月~6月にかけて、10分の帯番組としてTBSの夕方枠で全65話が放映された。資料によっては放映時期を1973年7月~9月としているものもあるが、そちらは誤り。元々1973年7月から「マンガ大作戦」という枠が始まっていて、その枠で1974年4月より放映されたのが本作だった模様。

 基本的には、主人公・泉研がチャージマン研に「変装」(作中でこう言っており「変身」ではないらしい)して侵略者・ジュラル星人と戦うと言う、設定だけ聞けばよくあるヒーローものなのだが、本作は単なるヒーローアニメには留まらない。


 何がすごいかと言うと、まず「アニメ」なのに動きが少ない。本編の尺は5分20秒だが、その多くが止め絵とバンクシーンで構成されており、非常に予算が少なかったであろう事が伺える。よくナックのアニメは作画がチープだと言われるが、本作に限って言えば作画自体はしっかりしている。ただ、ろくに動かないのだ。
 そして、展開が読めそうで読めず視聴者の予想の斜め上を行くストーリー本筋と、その逆でワンパターンの極みとも言うべきジュラル星人との戦闘シーン(毎回、ジュラル星人はほとんど抵抗もなく研の武器・アルファガンですぐに殺される)との組み合わせが絶妙だ。

 基本的に「怪しいゲストキャラ」は、すべてジュラル星人かその手先で、尺の都合ですぐに正体はばれる。そして、ほとんどの奴は研に対して何の対策も立てておらず、正体を明かした途端に殺されてしまう。
 ほぼ毎回がこの繰り返しなのだが、出てくる敵は声のうわずった変な美少年や、ハイジャック犯を瞬殺する旅客機乗客、殺人ボクサーなど変な連中ばかり。美少年「星くん」や、別の回で不良少年に化けているジュラル星人は、本性を現す前の方が強いと言うのも笑える。

 さらに、ジュラル星人の地球人抹殺計画も、「病院の食事に工場廃液を混ぜて奇形児を生まれさせる」と言う全く洒落にならないものから、「大仏を操って暴れさせる」「子供達を毒きのこ中毒にする」「自殺志願者を取り囲んで、早く死ねと強要する」などのよくわからないものまで、様々な作戦が展開されている。「ジュラル星人が次は何をするのか」が、本作の大きな見どころの一つだ。
 「よく5分でこんなネタをやろうとするなあ」と思うような壮大な作戦があっさり研の活躍で解決してしまう一方で、「自殺志願者を取り囲む」のような、作戦とも言えないようなもので5分持たせる回もあるが、概してどの回も通常の30分アニメのフォーマットを10分番組に押し込めた感じなので、非常に密度は濃い。

 それに、「密度が濃い」事とは逆に、時間が短いくせにたびたび発生する妙な「間」も、本作の魅力の一つだ。
 ジュラル星人を問いつめていて不意に何秒間か沈黙したり、最後の30秒ほどずっと研達の笑い声が続いたりと、尺が短い割には時間が余ってしまうのか、変なところで本筋と関係なく、それまでの流れを断ち切る場面がよく入る。
 変な主人公が珍妙な作戦を行う怪しげな敵と戦っていて、それだけで十分に奇妙奇天烈なアニメなのに、それに加えてこの独特の「間」によって話のテンポがゆがめられて、観ていてトリップしそうになってしまう。
 実際、DVDで続けて本作を観ると、3話目くらいで頭がおかしくなりそうだ。来月からのAT-Xは30分枠・4話連続で放送されるので、半分で止めて残りは後で観るなど、視聴には十分な注意が必要だろう。


 ともかく、ここまで挙げてきた色々な要素が絡み合って、異様な世界の5分間が展開される「怪作」としか言いようのない作品、それが「チャージマン研!」だ。

 長々と文章で説明してきたが、本作の面白さを知ってもらうには、本編を観るのが一番だろう。AT-Xが観られる環境にある人には、ぜひ来月からの放送を観て欲しい。
 AT-Xが観られない人は、とりあえずレンタルDVDを1本借りる事をお勧めする。どの巻も外れ無しで、必ず楽しめる事は請け合いだ。店頭に本作を置いているレンタル店は非常に少ないと思われるが、ネットレンタルで借りる事が出来る。
 ネットレンタルも面倒くさいけどちょっと観てみたいと言う人は、近所のBOOK OFFを覗いてみるといい。「アニメの王国」シリーズの1巻として発売されたDVDが105円~500円くらいでよく売っている。私も、本作とのファーストコンタクトは「アニメの王国」版DVDで、これに収録されていた4話分に衝撃を受けて、ネットレンタルで正規版DVDを借りて全話を観てしまった。

 65話全てに見どころが満載だが、あえて印象的なエピソードを挙げるとすると、



 ・謎の美少年
 ・戦慄!悪魔の病院
 ・恐怖!精神病院
 ・頭の中にダイナマイト
 ・ハイジャックをやっつけろ
 ・殺人レコード 恐怖のメロディ
 ・闇夜に消えた大仏



 このあたりが特にすごい。
 「頭の中にダイナマイト」はサブタイトルに笑った上で、本編の情け容赦ないオチにさらに笑えるお得な一編。「恐怖!精神病院」は、昔の典型的な精神病患者の描写があり、AT-Xでも放映は難しいのではないだろうかと、今から心配だ。
 「闇夜に消えた大仏」は全く迫力のない大仏の声が最高。「殺人レコード 恐怖のメロディー」は、「アニメの王国」版の1本目に収録されていた話で、これを観たからこそ本作にはまったと言える、記念すべきエピソードだ。それだけに、話の狂いっぷりもすごい。


 と、書いていたらきりがないので、このくらいにしておこう。
 古いアニメはたくさんあるが、その中から本作を知って、そして観る事が出来てよかった。チープな作り故の笑いと言う点では昨日のエントリで触れた「パンダラブー」に近いものがある。どちらも、狙って作っていない故の狂気が素晴らしい。


 それにしても、CSとは言え今になってこの「チャージマン研!」が全国放送されるなんて、すごい事だ。昔からAT-Xはナック作品を多く放送しているが、まさか本作が来るとは夢にも思わなかった。
 ついでに書いておくと、同時期にやはりナック作品の「スーキャット」もAT-Xで放映される予定になっている。両作品とも、近年に全話DVD化が実現しており、それがCSでの放送にもつながったのだろう。

 ナック作品のDVDは杜撰な作りをよく指摘されるが、こんなマイナーアニメが容易に観られるようになったのだから、それだけでも功績は大としたい。「スーキャット」「チャージマン研!」「アストロガンガー」「まんが水戸黄門」と言ったDVD-BOXのラインナップを見ると、はたして利益が出ているのか心配になってしまう。何作もDVD-BOX化が続いているのだから、全く儲かっていない事はなさそうだが。