はなバルーンblog

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ゲゲゲの鬼太郎[第1作] 感想(2)

2007-01-18 23:10:58 | 水木しげる
・第3話「妖怪城」
(脚本/若井基成、演出/白根徳重、作画監督/落合道正)

 鬼太郎の一人称が「俺」で、かなり違和感があった。製作1話の「夜叉」では、ちゃんと「ぼく」と言っているだけに不思議だ。「妖怪城」の原作でも一人称は「ぼく」なのだが、私が参照したのは中央公論社の愛蔵版なので、もしかしたら初出や昔の単行本では「俺」なのかもしれない。
 いずれにせよ、このような不統一は、総監督を立てない東映動画ならではの現象だろう。

 本話では、原作では出番の無かった目玉親父も登場しているが、鬼太郎の本体共々たいした活躍はなく、チャンチャンコに脅迫されて妖怪城を封印するねずみ男の方が、よほど役に立っているように見えてしまう。
 ちょっと驚いたのは、山彦じいさんの孫娘をおとりにする作戦が、鬼太郎からの提案だった事。鬼太郎は、あくまで妖怪の一員として人間に味方しており、2作目以降と比べると、鬼太郎の持つ妖怪としての不気味さが強調されている。



・第4話「吸血鬼ラ・セーヌ」
(脚本/雪室俊一、演出/高見義雄、作画監督/高橋信也)

 ラ・セーヌが原作以上に情けなく描かれていて笑えた。
 冒頭で、アニメオリジナルの場面としてフランスで暗躍するラ・セーヌが描かれており、そこだけだと手強い相手のように見えるだけに、日本に来てからは、原作通りにマシンガンで鬼太郎を倒そうとする姿が笑える。妖怪のくせに、妖術で戦おうと思わないのだろうか。
 話の展開は、ラ・セーヌを追いつめるのが鬼太郎の「手」から「ゲタ」に変更されている以外は、ほぼ原作通り。「山小屋に閉じこめて焼き殺す」と言う極めて現実的な倒し方も、ほぼそのまま。

 この話を実際に観て、この後一切リメイクされていない理由が何となくわかった。第3作以降でリメイクするとなるとバトル要素を入れる事になるが、こんな情けない奴がまともに自分で鬼太郎と戦うところが想像できない。それに、吸血鬼はエリートやピーなど他にもたくさんいるので、わざわざラ・セーヌまで出す必要もなかったのだろう。



・第12話「妖怪ぬらりひょん」
(脚本/安藤豊弘、演出/西沢信孝、作画監督/高橋信也)

 原作通り、しょぼくれた爺さんのぬらりひょんが、堪能できる。
 個人的には、第3作の「妖怪総大将」と言う設定は、あまり好きではない。第4作では、しょぼくれた外見に戻って安心していたのだが、妖怪王シリーズでまた変な格好になってしまった。
 それはともかく、ぬらりひょんも人間と偽って人間界に暮らして悪事を働いており、せこさはラ・セーヌとあまり変わらないが、もともとしょぼくれた爺さんであるせいか、特に情けなくは感じない。一応、自力で鬼太郎を倒そうとしている分、ラ・セーヌよりは妖怪らしい。

 本話でも、第4話同様に「リモコン手」の設定は使われず、鬼太郎の手を握ったぬらりひょんの手に、鬼太郎の手形が残ってぬらりひょんを操る展開にアレンジされている。そのため、鬼太郎がいつの間にかコンクリート詰めから脱出しており、少々無理を感じてしまった。



・第27話「おどろおどろ」
(脚本/鈴樹三千夫、演出/白根徳重、作画監督/落合道正)

 鬼太郎の乗ったラジコン飛行機が三日も飛び続けていたので、無茶だなあと思っていたら、原作通りにホウキ元素で飛んでいたようだ。本話では、原作にはない妖怪化する前の博士が登場しているが、かなりハンサムな顔で、おどろおどろとのギャップが激しかった。

 一番気になったのはラストシーンで、父親(おどろおどろ)が倒されて正太郎が悲しんでいる場面なのに、思いっきり明るい曲がBGMとして流れており、曲が完全に浮いていた。もう少し場面に合った選曲は出来なかったのだろうか。



・第58話「おぼろぐるま」(ビデオ版未収録)
(脚本/辻 真先、演出/勝間田具治、作画監督/落合道正)

 漫画家「水木しげる」登場回。前編にわたって水木しげるの視点から描かれており、その意味で番外編的存在であり、また何となく最終回のような雰囲気も漂っていた。
 現実の世界に鬼太郎達が現れて、怪気象の終わりと共に去っていく。妖怪達や鬼太郎が現実に存在したのか、それとも別の世界へ足を踏み込んでしまったのか、水木しげるが考察する場面は、異次元を思わせるイメージで描かれており、インパクトがある。
 なお、名前がまずかったのか、それとも単なる尺の都合か、高僧チンポ氏の出番は無し。ちょっと期待していたので、残念だった。しかし、異色編であり、かつ目玉親父の活躍が見られる貴重なエピソードだ。「なりは小さくても、一流の妖怪じゃ」のセリフは、印象深い。



・第63話「なまはげ」
(脚本/辻 真先、演出/西沢信孝、作画監督/岡田敏晴)

 第1作では2本存在する、鬼太郎以外の水木作品をアレンジしたエピソードの内の1本。
 本話の原作は未読なのだが、DVD-BOXブックレットによると、青年(アニメ版では東大助)の顔がなまはげ化するところがオチになっているようなので、アニメ中盤以降の展開はオリジナルだろう。なまはげを「面使い」の妖怪とした設定は秀逸で、鬼太郎との戦いも違和感なく描かれている。
 また、人間ゲストの東大助がユニークなキャラだ。彼のような妖怪を認めない現実主義者は後のシリーズでも登場するが、大抵は「私が間違っていた。やはり妖怪はいたのか」と考えを改めている。それに対して、東大助は、あくまで最後まで自説を曲げていない点で、一線を画している。一見、考えを改めて、去っていく鬼太郎に手を振っているように見えるのも、実はハプニングであり、鬼太郎が勘違いしてしまうところも面白い。